はれる病
〈ソラーウイルス感染症〉
発症すると全身が腫れ、感染者はその後例外なく死ぬ奇病。感染力は非常に強く、根絶されるまでに多くの感染者、多くの死者が出た。発症すると腫れが少しずつ全身に広がっていく様子から、通称「腫れる病」と呼ばれた。当時は日本全体で豪雨をはじめとした災害が続き、多くの国民は神の怒りとして恐れた。(一部地域を除く)
「ここ、試験に出るかな」
「出るんじゃね」
隣の席の友人に小声で返す。現在でも、腫れる病という覚えやすい通称とともに一般常識として世間に浸透している。試験に出題されるのは想像に難くない。授業中でも気にせず話しかけてくる友人と、なんだかんだそんな友人との会話を続ける自分を傍らに、いつも通り時間は放課後へ向かっていった。
「…警察は、生物兵器所持の疑いで宗教団体の幹部3人を逮捕しました。押収された兵器は国立ウイルス研究所に移送され、厳重に…」
帰宅し、テレビをつけたときには、太陽は既に沈んでいた。聞き慣れない生物兵器という単語に少し驚く。ニュースによると、その宗教団体は数百年前に結成された太陽を崇める会というもので、名前の通り太陽を神と崇める一神教らしい。かなりの歴史を誇っていることに反し、初めてその名前を知った。
「…逮捕された幹部の1人、霞薙空夫は、菌は岩戸駅にばらまいたと供述しており、警察は調査を続けています。…」
生物兵器兵器がばらまかれたのは、岩戸駅。いつも登下校で使う駅だ。もしその兵器が危険なものだったらまずい。いつ撒かれたのか。自分がいない時間帯なら大丈夫なんだが…一応病院に行くか?いや、菌が危ないものかもわからないし、自分がいるときに撒かれていたら気づくはず。そのうえ症状も出ていない。病院に行くのはさすがに早い。とりあえずは様子見だ。虫刺されによるものなのか、いつの間にか腕にできていた腫れを掻く。疲れたのか、体がだるくなってきた。夕食までひと眠りするか。
「速報です。ついさきほど、国立ウイルス研究所が、太陽を崇める会による生物兵器事件で使われたウイルスが、根絶されたソラーウイルスに酷似していると発表しました。また、岩戸駅の利用者や周辺の住人が、相次いで全身の腫れを訴えていることがわかりました。生物兵器事件との因果関係は現在調査中です。…」
主人公は大丈夫なんでしょうか。




