表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/208

その頃、日本では~side元後輩1-1

 オレは鈴木オサム、二十四歳。去年この東京新橋の総合商社に入社した営業部の若手っス。

 いわゆる『ゆとり世代』とからかわれる世代だったり。


 俺にコーヒーを奢ってくれた八十神先輩はそのまま紙コップを持って企画部に戻って行った。

 そんな先輩を、周りの社員たちが遠巻きにヒソヒソ話してはチラチラ見ている。

 あの野郎は自意識過剰だから「僕が格好いいから見てるんだな」とでも思ってるんだろう。違うに決まってるだろ、ばーか。




 ゴールデンウィーク明け。オレが同じ営業部のユウキ先輩から退職すると聞かされたのは、先輩がもう退職手続きを済ませて有給消化で出社しなくなった次の日のことだった。

 周りに聞けば、何でも田舎のお祖母さんの介護を理由に急遽退職することになったと。


 いや待って。急すぎでしょ。かわいい後輩のオレにもなんも言わないでどういうこと?


 オレは適当な都合をつけて会社のビルを出て、のんびり歩きながら新橋から浜離宮へと歩いていった。ここは銀座ほど観光客がいないし、中が広いから意外とのんびりできる絶好のサボりスポットなのだ。

 ……これを教えてくれたのはユウキ先輩なんだけどね。


 途中、コンビニで冷たいお茶と昼飯用のサンドイッチを買い、園内のあずまやでユウキ先輩に電話を入れた。


 結論からいうと先輩、クソみたいな被害に遭っていて。

 しかもあの八十神先輩ってさあ。オレ、入社してすぐにできた彼女取られてるんスよね。まじもげろほんと頼むから死ね。


 ツナのサンドイッチをもそもそ食べながら、社内の同期や仲の良い連中で作ったメッセージアプリのグループに向けてメッセージを送信する。


『ユウキ先輩の退職について詳しい人、教えろください』


 すると数分経たずに集まるわ集まるわ。

 その中の一つには正直吹いた。


『御米田君の元カノから直接聞いたけど、別れたこととその後八十神君と付き合ったことは別々かも。穂波、プロポーズに渡されそうになった指輪のお店が嫌だって言ってたから』


「……なんスかそれ? 『もっと詳しく』と」


『なんかね、バカみたいな理由なんだけど。指輪が銀座の高級ブランドじゃなかったから嫌だったんだって』


 ユウキ先輩の元カノの友達からの報告だ。詳しく聞いてみると、どうも先輩の元カノは元々先輩との結婚をどうしようか悩んでいたと。

 そこに先輩がプロポーズ計画とそのために買った指輪のブランドが気に入らなくて別れたという話だった。

 八十神先輩はそんな元カノにつけ込んで、ついでにライバルのユウキ先輩への当てつけてその後付き合い始めたらしい。




 社内グループからのメッセージには、他にいくつか気になる報告もあった。


『コンペ審査員だったうちの上司が言ってたんだけど。御米田君、配布資料も持参しないで結局プレゼンしないまま八十神君圧勝で終わったらしいんだよね。あの御米田君がだよ?』


「どういうことスか? 表計算ソフトマニアで書類作り大好きなあのユウキ先輩が? 聞いてないよ」


 さっき本人に電話したときは、「コンペ企画を八十神に盗まれてコンペは負けた。その後彼女と別れて、彼女は八十神と付き合うと言っていた」としか聞いていない。

 ……って、しまった。企画を盗まれたってとこをもっと聞いておくべきだった!

 くそ、いつもの癖で軽く聞き流してたわ。あの人いつも説教長いからつい。


「情報、もっと集めてみるっスかね」


 などとのんびりしてたら、その後しばらくしてとんでもない事件が日本中を揺るがした。


 なんとユウキ先輩が帰京した東北の僻村〝もなか村〟が村役場を含め半分以上ごっそり村ごと消失してしまったんス。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作と同じ世界観の「聖女投稿」書籍化しました!

3rejgvgtg6xwk5vsljj3a8cu7uds_14dw_v9_1ag_1djj1.jpg
→→ アルファポリス版「聖女投稿」作品ページ(別窓)
(※出版社の規約により、なろう版削除、アルファポリスでのみ続編連載中です)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ