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もなか村の龍脈問題は?

あとがきに王様/御米田のYouTubeショートMVへのお知らせを掲載しました。


 夕方から参加したスピ系セミナーで、三重の赤い光の結界は二枚目まで壊れた。

 講義内容そのものは、俺たちが知りたかった、人間や土地のエネルギーの詳しい話で参考になったんだが、


 ……後半は彼らが販売する高額サプリの強烈な買え買え攻撃(クロージング)だった。

 主催者やスタッフたちから「どうですか、一箱? 三箱セットならさらにお得に!」とか圧をかけられるたびにパリンパリンと弾けて消えた。

 いやアミノ酸サプリが十万は無理だべ!? プロテインだって一缶一万以上は出したことねえのだが!?


 三時間のセミナーが終わって懇親会に誘われたが、俺たちは次の日も仕事があるからと必死で言い訳して逃げてきた。




 で、みどりさんの会社の社宅がある浅草まで戻ってきて、駅前のサイ◯リヤに辿り着いてぐったりしている。イマココ、だ。


「話は参考になったけどさ……」

「着けるだけで家の風水が整うネックレスとか、ないよね……」

「備長炭や竹炭を部屋に置くぐらいはやってもいいけどな……」


 厄落としというか邪気祓いというか。デカンタで頼んだフレッシュワインの白を一気飲みして、ようやく互いに息がつけた。


 俺も八十神も、勧誘や高額サプリやグッズのクロージングされまくりでげっそりだ。


「……パワースポット巡りに絞ろうぜ」

「同感。大変だったよね……」


 とりあえずスピ系セミナーで得た成果は、『パワースポットに行ったりパワーグッズを持てばエネルギーチャージできて、運も良くなるよ』だった。

 俺が八十神から教わったことと大差ない。


 まだ俺は夢見の術を続けていた。

 毎晩続けるほどの魔力は残念ながら俺にはなかったので、日常的に近場の自然のある場所やパワースポット巡りでチャージを続け、週末の休日前の夜や、特に気力が充実したときに限ってだが。


 サラダの小海老を突っついてると、ピザが来た。シンプルなマルゲリータピザだ。


 異世界から戻ってきた後、カズアキの遺品の日記は変化していた。

 ここみたいなファミレスにバイト帰りに寄って、ピザ一枚とサラダ、ドリンクバーで一時間ぐらい遅い夕飯を楽しんでいたんだと。


 ……あんまり友達らしき存在のことが書かれてなかったのが気がかりだが……

 アケロニア王国に生まれ変わって、親しい親戚の王様や、幼馴染みの竜殺しのべっぴんが側にいてくれるからいいじゃん、とは割り切れないもんだ。




「もなか村の龍脈問題も、そのまんまになってるしなあ。どうしたもんか」


 社宅への途中にある浅草寺で本堂にお参りして、ちょっとワイン飲みすぎたなと自販機で冷たい緑茶を買って一休みする。

 境内のベンチに腰掛けると、ちょうど目の前におみくじ処がある。もう夜の十時近いが、境内は24時間開いてるのだ。


 百円を入れて、くじ入れをガラガラ振る。出てきた数字のおみくじの結果を棚から選ぶと……


「小吉か。良いんだか悪いんだかよくわかんないな」


 観音みくじは古文と解説文、仕事や健康などジャンル別の結果が一言ずつの構成だ。

 あんまり良いと感じる内容ではなかったから、そのままおみくじは結んでさよならした。

 〝異世界に戻れるか?〟と念じてこの結果じゃなあ。大吉ぐらい出てくれないと。


「今夜もやるのかい? 夢見」

「当然。うちの子たちと再開できるまで、全力でやる」

「……そうか」


 何としてでもピナレラちゃんやユキりんたちと再会したい!


 と口では言ったものの、日本に戻ってきてから行った夢見の術では、一度も同じ時間軸のもなか村に戻れていなかった。


 ベンチの隣に腰掛けた八十神は、ミネラルウォーターで喉を潤してから、大きな本堂や五重塔など、ここから見える浅草寺の敷地をざっと眺めた。


「ここはすごいよね。ちゃんと力のある土地に宗教的建造物が建っている」

「やっぱり龍脈ってやつか?」

「仏教寺院というのもあるだろうね。日本に来た仏教は中国を経由してるから、ほら中国の風水とかああいう思想や技術を吸収した聖職者や技術者が構築してるわけで」


 確か浅草寺は、古い時代に龍が現れた伝説が発祥だったか。

 わりとファンタジーな土地だが、そういうのがパワースポットの源泉なんだろうな。




 それからそんなに長い時間じゃないが、浅草寺や土地の雰囲気の中に俺たちは浸った。

 酒の酩酊がじんわり沈静してきて、火照った身体も冷めてくる。


「……もなか村の龍脈問題、思ってたより根が深そうだよ。君が異世界に残った村長たちから受け取った報告書、丹念に読み込んでAI解析もしたけど……もう今となっては」

「そっか。俺もそんな気はしてた」


 元々、もなか村は東北のあの僻地のピンポイントだけめちゃくちゃ気の良かった場所だったようだ。

 何でか? 祠などを通じて異世界と繋がってたからだ。それが本来の土地の気、龍脈と繋がって相乗効果を発揮してたらしい。


 うちの親父や叔父さん、みどりさん一族みたいに、社会的に活躍したり資産を築いたりした人間が多い。あんなど田舎出身なのに。

 それに気づいた人間が昔からいて、龍脈を利用してきた誰か、あるいは団体がある。


 村長が寄越した報告書には、それが戦前から行われてて、墓地が龍脈の結節になってると書かれていた。

 確かに、もなか村ゆかりの縁者には政治家や財界人が結構いる。その中の誰かの一族だ。


 村長は候補に当たる人物や一族の名前をピックアップしてくれていたが、……こりゃ表に出したら俺、消されるんでね? みたいなリストだった。

 永田町の有名人とか、財閥関係者とかもいる。日本に帰化した外国人とかもだ。何なら古代に日本列島に渡ってきた渡来人情報まである。歴史マニアには堪らない話だが、こんな情報、俺にどうしろと?


 もなか村が本格的に過疎化したのは、ゴルフ場による湧水汚染が発生してからだ。

 それまでは、龍脈を利用されながらもまあまあ上手く回ってたんだろうけんども。


 湧水汚染後から、もなか村はギリギリを保ってた村の均衡が一気に崩れた。

 この頃から不調になった政財界の人間を調べれば、もっと詳しい事情が判明するかもだが、さすがにそんな怖いとこに手は伸ばせねえっぺ!


 俺は異世界のど田舎村で、村長からもなか村が中央の政治家と合意の上で、住人水増しや補助金支給の偽装工作をやってたことを知らされている。

 もしかしたら政治家の誰かから連絡を取って来るかもしれない。


 だが俺は知らぬ存ぜぬで通すことに決めている。実際、異世界転移前も彼らと連絡を取り合ってたのは村長だけだしな。


「もなか村の復興は……無理かあ」


 ベンチの背もたれに、だらっともたれかかった。

 目の前に東京スカイツリーが大きく聳え立っている。

 ゆっくりとライトアップされた光がネオンカラーに次々変わっていく。カズアキの勇者のセイバーみたいにカラフルだ。


 ウパルパ様はイエロー。聖女様は赤色の魔力だったなあと、その色にライトが変わるたびに思い出す。


「……夢見でさ。何千年も前のもなか村に飛んでみるのはどうだろう?」


 もなか村の龍脈のことに詳しい人や集団、絶対いるよな?


「そこは僕も興味あるけど。けど、エネルギーの無駄遣いできるほど余裕あるかい?」

「……ない」







挿絵(By みてみん)

※最近はAIを駆使して、作品イメージのアートイラストや楽曲MVで遊んでます。

音楽生成AIのSUNOが王様/御米田の神曲作ってくれた。

YouTubeチャンネル(ショート)で聴いてください〜


今月末~来月頭あたり、Apple Musicとか主な配信プラットフォームでもリリース予定


https://youtube.com/shorts/sNGghF_YK6w?si=oVFdjqy0LYDpzO1x


イラスト作って思ったけど、しみじみ良い男ではある……



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