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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!

転生聖女の王都取材 私はミリア・ランドール

作者: お冨

 シリーズ番外編です。

 こんにちは、私はミリア・ランドール。ここデルスパニア王国の聖女です。


 私には元日本人だった前世の記憶があります。それが私が聖女になった理由だったりします。

 何しろ、神託は神代古語というもので書かれていて、それが日本語だったんです。なんというご都合主義。ここはゲームか小説の世界なんでしょうか。


 一応、転生者は公認の存在です。貴族学園に通っているマーク兄様が、一般教養の授業で出てきたって言ってました。

 ただし、授業内容は転生者詐欺に引っかからないための知識が中心だとか。

 胡散臭い自称転生者がうじゃうじゃいて、少数の本物の方は迷惑しているそうです。前世の占い師か霊能力者みたいな感じですね。


 普段、私は漫画を描いてます。内容は学習漫画が中心。前世の知識を織り交ぜて、庶民に役立つ政府の広報を手伝っています。

 転生チートとしてはショボいですけど、私は身の丈というものを知っています。前世で同人作家やっててプロにはなれなかったけど、これでも夏コミに一度だけ参加したことが有るんですよ。


 国王陛下には神代の芸術として絶賛していただいてます。今のところ漫画を描いているのは私一人、当然私が第一人者です。自慢にはなりませんけど。

 

 だからね。漫画の取材について来ようとしないで下さい、王太子殿下。

 いくら平民の服を着ていたって、良いところのボンボンだとバレバレです。私の平凡顔が不釣り合い極まりないじゃないですか。


「ひどいなぁ。聖女様のお供なら、立派な王族の公務だよ。それに私が同行すれば、もれなく護衛が付いて来るからお得だよ」

 爽やかな笑顔をしても、残念王子に変わりないですよ。私はまだ十三歳です。成人済みの良い大人がちょっかい掛けないで下さい。

 そもそも殿下には公爵令嬢って言うれっきとした婚約者がいらっしゃるじゃないですか。私はザマァなんてご免こうむります。


「結構です。今日はライナーさんがご一緒してくださいますから。護衛も王家から差し向けていただいている近衛騎士の皆様で充分。王太子殿下の護衛まで合流したら過剰戦力過ぎます」

 言うだけ言って、ライナーさんの腕に抱き着きました。


 ライナーさんはマーク兄様のクラスメイトです。学生寮も同室で、とっても仲良しです。その縁で、私のアシスタントのアルバイトを引き受けてくれました。

 漫画のための取材なんだから、立派にアシスタントのお仕事です。殿下のおっしゃる王族の公務もどきとは訳が違います。


「ライナー」


 王太子殿下がライナーさんを呼び捨てにしました。ライナーさんは平民だから、それで正解です。


「はい、何でしょう、殿下」

 私を片腕にくっつけたまま、さらりと返事できるライナーさん。メンタル強強(つよつよ)です。辺境開拓地出身の苦学生、雑草魂は伊達じゃありません。


 漫画だったら、ここで二人の視線がバチバチと火花を散らすところなんですが。


 分かってます。王太子殿下は、『史上初めて公認された聖女』にこだわっているだけです。ロリコンという訳ではありません。

 ライナーさんにとって私は、親友の妹で割のいいバイト先、それ以上でもそれ以下でもありません。


 結局その日は、スケッチブック片手に背景の資料集作りに集中しときました。

 後ろからついてくるのは、王太子殿下じゃありません。ええ、ありませんとも。お忍びの貴族のボンボンです。

 手をつないで歩いているのは、彼氏じゃなくて保護者です。


 良いもん、良いもん。年頃になったら、とびっきりの彼氏作るんだから。




 王都の城壁は、マジで見上げる高さでした。大リーグのスタジアムの観客席並みです。

 重厚な石造りで、内側には同じ石材の階段が付いてます。上に登って見下ろした城下町は、区画整理された綺麗な街並みでした。

 きちんと都市計画したんですね。この辺が中世っぽくないというか、ゲームの世界疑惑が強まります。


 王都の中心部にある貴族街は、これぞビバリーヒルズという(おもむき)の高級住宅街。

 ほとんどが伯爵家の所有で、ゆったりした庭と三階建て以上の豪邸が並びます。高級乗用車の代わりに家紋入りの馬車が並んでいるのは御愛嬌。


 そのまた奥には、侯爵家と公爵家のお屋敷街があります。

 中を覗かせない高い塀が延々と続いて、所々に門番付きの豪華な正門が有るんですけど。

 はっきり言って迷路です。建物が先に在って、その間を縫うように曲がりくねった道が続いてます。隣の屋敷の壁に突き当たって、右に左に、あるいは斜めにそれるのがデフォ。


 なんだか、前世の大企業の本社工場を思い出しました。敷地内に緑地を義務付けられた大規模工場です。

 北海道の製紙工場、車で走っても走っても塀が途切れなかったっけ。あれも、敷地にそって道が曲がっていたなぁ。


 戦時には砦になる筈のお屋敷街を抜けた先が王都の、いえ、この国の中心である王城です。

 例えて言うとベルサイユ宮殿、または紫禁城。複数の建物の集合体で、立法府であり行政府でもあります。

 一般人は立ち入り禁止。今日は許可をもらって来ていますが、建物の外側からスケッチするだけです。

 まだ学園にも通っていない小娘が、うろちょろして良い場所ではありません。


「貴女さえ望むなら、いつでも王宮に迎えますよ。準備は整っていますから、安心しておいでください」


「お断りします。王家の皆様のお住まいになど、恐れ多い事ですわ」


 王城でさえ場違いなのに、王宮なんて(もっ)ての(ほか)です。洒落にならないことをおっしゃらないで下さい、王太子殿下。



 生まれた時はミリア・ツオーネ男爵令嬢だったのに、現在はミリア・ランドール伯爵令嬢になってしまった私ですが、乙女ゲームを始めるつもりは全くありませんので悪しからず。


 マーク兄様のクラスメイトに、ヘンテコな関西弁もどきをしゃべる大商会の跡取り息子とか、脳筋一直線の伯爵令息にその取り巻きのモブ男爵令息がいるそうですけど。


 私関係ないないですよね、マーク兄様。










 今年最後の更新です。来年から、連載作品の新章に入るので、切り良く短編で纏めました。


 よろしければ、シリーズ本編、マーク兄様の学園編、その他を読んでいただけると嬉しいです。


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。


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[一言] 幕間として面白かったです。
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