1、糾弾の場
「で、処分はしないと」
極めて平坦な声を作って尋ねる。
聞かれた方は「その通りです」と応える。
こちらも平坦で、どちらかというと相手見下す調子が感じられた。
地下迷宮に潜る探索者。
その互助会である探索者協会(探索者ギルド)。
ギルドと省略して呼ばれるこの機関の一室での事だ。
問題があると訴えた者と、対応するギルド担当者。
そして、訴えられてる探索者達が集まってる。
問題は重要だった。
訴えの内容は、迷宮内での裏切り行為。
襲ってきた強力な怪物から逃げるために、訴えた者を囮にして逃げたというものだ。
それから数ヶ月、なんとか生きて帰ってきた者はこの事をギルドに訴えた。
しかし、その対応は酷いものだった。
事実確認が不可能に近いこと。
囮にされた者の評判がもともと低かったこと。
さらには、そんな者を同行させてたという事で、囮に使った探索者達は情け深い者達だと評判が高かったこと。
おかげで、そんな者達が仲間を見捨てるわけがない、まして囮に使うなどと、という勝手な憶測がたっている。
また、そんな探索者達がそれなりにレベルが高いというのもある。
ギルドからすれば貴重な戦力だ。
下手に喪失するわけにはいかない。
こういった事情が絡んでるので、囮にされた者の発言は退けられている。
高レベル探索者をかばってるのがよく分かる。