表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

たらこのホラー小説作品集

悪霊に遭遇したけど先輩が怖がる度に乳揺れしまくるのでそれどころじゃない

 俺が所属しているミステリー研究会。

 普段から何やってるかよく分からない部活だが一つだけいいことがある。


 それは美人で巨乳の先輩がいることだ。


 黒髪ロングでおしとやかな見た目とは裏腹に、好奇心旺盛で色んなことに興味を持つ。

 市内にある廃墟に幽霊が出るとのうわさを聞きつけて、さっそく俺を誘ってくれた。


 先輩と一緒にどこかへ行くのは嫌じゃないので、誘ってもらって嬉しい。

 でも……二人っきりで廃墟に行くとなると、ちょっと不安だ。


 俺は身長も低く体躯も小柄なので、もしもの時に先輩を守れるかどうか。

 それだけが気がかりだった。



 ◆



「マモルくん、大丈夫?」


 先輩が心配そうに尋ねてくる。


 色々と用意したら大荷物になってしまった。

 荷物が大量に入ったカバンを背負っているので、俺は少し歩くだけで息が切れてしまう。


「だっ……大丈夫ですよ」

「あんまり無理しちゃだめだよ?」

「はい、ありがとうございます」


 返事をして俺はペットボトルの水を喉へと流し込む。


 七月上旬。

 梅雨のじとっとした空気がまだ残っている。

 太陽の光を浴びながら大荷物でのお出かけはちょっと無理があった。

 ジャージの下は汗でびしょびしょ。


 目的の廃屋は市街地から離れた小高い丘の上にある。

 丘には木々が生い茂っており、道は雑草と落ち葉で埋め尽くされていた。

 路面の舗装はひび割れており凸凹の状態。

 重い荷物を背負っているので、歩くだけで疲労感が溜まる。


 だけど……。


「うん? どうしたの?」


 不思議そうに首をかしげる先輩。

 俺の視線は吸い寄せられるように彼女の胸元へ。


 体操服を着た先輩の胸は汗でしっとりと湿っていて、うっすらとスポーツブラが透けて見える。


「あっ、これ見られても恥ずかしくないやつだから。

 大丈夫だよ」


 なにが大丈夫かさっぱり分からないが、先輩はそう言ってニコリとほほ笑む。

 やっぱりカワイイ。



 ◆



 目的地の廃墟へ到着。

 荒れ果てた庭の中に小さな平屋建ての家。


 昭和を思わせる古いデザイン。

 窓には木材が打ち付けられており、完全に封鎖されている。

 玄関にも鍵がかかっているだろうから、中に入るのは難しそうだ。


「どうします? 裏口でも探しますか?」

「そうしよっか」


 俺と先輩は建物の裏手へ。

 少し前に降った雨が乾ききっておらず、足元がぬかるむ。

 歩くたびに靴が泥の中に沈んでねっちょりとした感覚が足裏に伝わってきた。


「ううん……ここもダメみたいだねぇ」


 勝手口の扉にも板が打ち付けられていた。


「えっと……写真だけ取って帰ります?」

「一応、玄関も見て行こうか」


 元来た道を戻って玄関へ。

 さすがにここも開かないだろうと思ったら……。


「あっ、あいてる」

「……え?」


 鉄製の扉を手前に引くと、あっさりと開いてしまった。

 他は厳重に封鎖されているのに……なんで?


 不思議に思いつつも廃墟の中へ入って行く。

 中はほぼ真っ暗だったので、懐中電灯で照らして中の様子を伺う。


 内部は意外と綺麗。

 物は散乱しておらず、家具なども見当たらない。

 どうやら以前に住んでいた家主は全ての荷物を処分してから出て行ったらしい。

 廃墟って言うより……ただの空き家だ。


 勝手に入ったら怒られそうだけど……。


「ちょっと先に行って様子を見て来てよ」

「え? 先輩は?」

「私は後から行くから」


 そう言ってにっこりとほほ笑む先輩を前に、俺は従うしかなかった。


 上履きに履き替えて内部を探索。

 和室と洋室が一部屋ずつ。

 風呂場にトイレ、台所。

 物置のような小さな部屋もあったが、何も置いてなかった。


 完全にもぬけの殻。

 見るべきものは何もない。


「ふぅん……意外と綺麗だねぇ」


 和室の中を見渡しながら先輩が言う。


「幽霊も出そうにないですね。

 帰りますか?」

「そうしよっか」


 スマホで各部屋の写真を撮って簡単に記録を付けておく。

 一応活動記録は残しておこうと思った。

 完全に不法侵入になるので、公式の記録にはできないけど……。


 用が済んだので帰ろうとすると、玄関の鍵がかかっていることに気づいた。

 先輩が閉めたのかな?


「あの……先輩、鍵が……」

「うん、私が閉めたの」

「え? なんで?」

「だって、誰かが入って来たら怖いでしょ?」

「いや、廃墟なんだから人が来るはず――



 ――どんっ!



 玄関の扉が大きな音を立ててきしんだ。


 え?

 ……なんで?



 どんっ! どんっ! どんっ!



 次々と扉をたたく音が聞こえる。

 誰かが外から叩いているのか?


 それとも……。


「先輩! 大丈夫です! 安心してください!

 これはきっと何かの――


 俺は先輩を不安にさせまいと声をかけた。

 だが彼女は……。



 どんっ! 「ひっ!」 ぼいんっ!



 扉の音が鳴ると、先輩は怖がって身体をびくっとさせる。

 するとそのはずみで、たわわなおっぱいが上下に揺れるのだ。


 どきっ!

 彼女のそんな姿をみて思わず胸が高鳴る。


 可愛すぎてヤバイんだが?



 どんっ! 「ひゃぁ!」 ぼいんっ!


 どんっ! 「ひょぇ!」 ぼいんっ!


 どんっ! 「きゃぁ!」 ぼいんっ!



 扉が叩かれるたびに揺れるおっぱい。

 それはもうぶるん、ぶるんと揺れまくる。


 あまりの光景に俺は冷静さを保つのがやっとだった。

 食い入るように見つめてしまい、胸の高鳴りが抑えられない。


 ふと下の方を見ると下腹部が膨張していることに気づく。

 やばい……こんなものが先輩に見つかったら……!


「どうしよう! どうしよう!」

「大丈夫ですから落ち着いて! せんぱ……むぐっ」


 冷静さを失った先輩は俺へと抱き着き、たわわなおっぱいを全力で押し付けてくる。

 顔が彼女の胸に埋もれる状態になり、下腹部は痛みを感じるくらいぎちぎちに膨らんでしまった。


 相変わらず謎の存在は扉を叩き続けている。

 もはや怖がっている余裕などない。


 俺は思い切って扉を蹴り飛ばす。


「さっきからうるせええええええボケが!」


 一喝すると扉の向こうにいる謎の存在は大人しくなった。

 これで先輩も落ち着いて――


「はわわわっ……どうしよう、どうしよう!

 私たち呪い殺されちゃうよぉ」


 生まれたての小鹿のように足をガクガクさせながら、震える手を俺へ伸ばす先輩。

 目からは大粒の涙がポロポロと零れ落ちている。


 ……そんなに怖かったのか。


 いや、確かに怖かった。

 俺も一人で来ていたら同じ状態になっていたと思う。


 でも……先輩と一緒にいたら煩悩に頭の中を占領されるので、恐怖でドキドキするだけの余裕がないのだ。

 なんと単純な思考回路をしているのだろうか、俺は。


「先輩、とにかく落ち着いて下さい。

 ちょっと奥へ行って休みましょうか」

「うっ……うん」


 俺は先輩を連れて和室へと向かった。

 持ってきたタオルで軽く畳をぬぐい、清潔にした場所に先輩を座らせる。


「大丈夫ですか?

 水でも飲みます?」

「ううん、平気。ありがとね」

「きっと自然現象かなにかだと思うんで。

 落ち着いたら外に出ましょうか」

「うん……そうだ……ね……って、あれ!」


 急に顔を青ざめさせる先輩。

 彼女が震える手で窓を指さした方には、窓枠を覆う木の板の隙間から覗く二つの大きな目。ぎょろりと俺たちを凝視している。


 真っ暗な部屋の中で、血走った瞳だけがぼんやりと浮かんでいるように見えた。

 明らかに人間ではない人外の気配をまとっている。


「ひぃぃぃぃ!」


 煩悩まみれの俺でもさすがにビビッてしまい、情けない悲鳴を上げてしまう。


 先輩は大丈夫か?

 さっきからずっと静かにしてるけど――


「もう……だめ」

「え? 先輩?!」


 あまりの恐怖に耐えきれなくなったのか、先輩は白目を剥いて倒れてしまった。

 慌てて彼女の身体を受け止めた俺だが、華奢な体躯では支えきれず一緒に倒れてしまう。


「いてて……せんぱ……げっ!」


 上半身を起こした俺は驚愕する。

 先輩の顔が俺の股間の上に乗っているのだ!


 しかも、俺は両足を伸ばしたまましりもちをついてしまい、立ち上がろうとしても身動きすらできない。

 カバンが柱と俺の身体の間に挟まって一ミリも余裕のあるスペースがなく、先輩の顔をどかそうにも俺の貧弱な腕力では難しい。


 かくして、俺の股間に先輩が顔を埋めたまま動かなくなるという、異様なシチュエーションが完成した。

 明らかにナニをアレしているように見える。


 板の隙間から覗く両目は相変わらず俺たちを凝視しているが、もう全く怖くない。

 それどころか恥ずかしいとさえ思う。


 心臓はバクバクと高鳴っているが、性的劣情を催しているだけなのは明らかだ。


「うーん……ねこちゃぁん」ぐりぐり


 夢の中で猫吸いでもしているのか、先輩は俺の股間の上で顔をぐりぐりし始めた。

 だからヤバいって! マジで!

 俺のナニは猫じゃねぇー----!


 このままでは俺のナニからアレがコレして……そんなことになったらマジでヤバい!

 ズボン越しとはいえ先輩の顔に……。


「うわあああああああああああ!

 悪霊退散! 悪霊退散!

 どーまん! せーまん!

 さいんこさいんたんじぇんと!」


 俺はとにかく耐えようと必死だった。

 意味の分からない言葉を叫びながら、ここにいない誰かに救いを求めて祈り続ける。


「てめぇ……見てないで助けろや!」


 興奮状態の俺は手に持っていた懐中電灯を目玉に向かって放り投げる。

 窓ガラスが割れてあたりに破片が散らばるが、こんなことで悪霊が退散するはずがない。


 と思ったら……あっさりと目玉は消失。

 どこかへ行ってしまった。


「逃げるなあああああああ!」


 もはや悪霊とかどうでもよかった。

 この状況から脱せるのであれば、悪霊の手すら借りたいくらいだった。


「助けて……頼む……誰か! もう限界っ……あっ」


 床を転がる懐中電灯の光が、部屋のふすまをかすかに照らした。

 するとわずかに開いた隙間から細い指が覗いている。


 あれは……悪霊!


「そこにいるんだろ⁉

 助けてくれよ!

 先輩の身体を動かしてくれ!」


 俺はふすまの中にいるであろう悪霊に呼びかける。

 とにかく必死だった。


 しかし……反応はない。


「無視するなよおおおおお!

 おいいいいいいいいい!

 早くしないと大変なことに……あっ」


 先輩の身体が大きくローリングする。

 寝返りをうったのだ。


 先輩の顔が離れた瞬間、俺の股間は限界を迎えた。

 全身が痙攣するような快楽に見舞われ、急速に熱がさめていく。

 一連の生理現象が終わる頃には、すっかり賢者になった俺と妙な匂いだけが残されていた。


 ギリギリ……セーフ。

 先輩を汚さずに済んだ……ぞ。


 なんとか危機を回避した俺は、先輩の頭の下にタオルを敷いて床に寝かせ、ようやく立ち上がることができた。

 あともう少し寝返りするのが早かったら我慢できたんだけどな……。


 そう言えば……悪霊はどうなったんだ?


 ふすまの方を見ると、白く細い指は先ほどと全く同じ場所にいる。

 色々と限界だった俺は悪霊のことなどすっかり怖くなくなり、むしろ押し入れの内側に何が隠されているのか興味が沸くくらいだった。


 ふすまを開いて悪霊の姿を拝んでやるとするか。

 ビビらせようとしたって無駄だぞ。


 俺はふすまに手をかけ、勢いよく開く。

 果たしてそこにいたのは、幽霊でも物の怪でも妖怪の類でもなく――




「……え?」




 押し入れの中には両手両足を縛られた小学生高学年くらいの女の子がいた。

 しかもまだ息がある。



 ◆



 それから大変だった。

 警察と救急を呼んで、女の子を解放して。


 女の子は呼びかけにも応じてすぐに意識を取り戻した。

 先輩がいつまでもぐっすり眠っていて、かえってそっちの方が気がかりであった。


 しばらくして救急隊と警察が到着。

 俺と先輩は事情を話してその日のうちに帰宅できたが、後日出頭することに。


 親からは子供だけで危険な場所へ行くなと、きつく釘を刺される。


 安心してくれ。

 頼まれたってもう二度と行かない。



 ◆



「いやぁ、災難だったねぇ」


 事情聴取を終え、警察の前で先輩と落ち合う。


「はい……本当に酷い目にあいました」

「ずっと私を守ってくれてたんだってね。

 ありがとね、マモル君♪」

「いや……」


 守っていたというよりも……汚さないように必死だったというか。

 結果的に彼女を守ることができたので、よしとするか。


「犯人、早く捕まるといいねぇ」

「本当ですねぇ」


 俺は先輩の言葉に深く頷く。


 女の子は知らない男に拉致され、あの廃屋へ連れて来られたそうだ。

 それ以上、詳しい話は何も聞いていないが、乱暴目的だったんじゃないかって思う。


 幸いにも後遺症の残るような怪我はしていないらしい。


「最初から幽霊なんていなかったってことか。

 がっかりすると同時に、すごく怖く感じるよ」

「そうですね……」


 玄関の扉を叩いて隙間から様子を伺っていたのは、十中八九、誘拐犯だと思う。


 最初は幽霊だと本気で信じて疑わなかった。俺たちを凝視するあの目玉が人間のものとはとても思えなかった。

 暗闇の中に浮かぶ血走った眼玉が脳裏に焼き付いている。


 幽霊だと思うとそれほど怖くなかったのに、あれが生きた人間だと分かった途端に血の気が引いた。

 最初から気づいていたら先輩と一緒に怖がってたんじゃないかなぁ。


 まだ逮捕されていないので、確かなことは分からないが……多分だけど犯人は女の子を殺すつもりだったんじゃないだろうか。

 たまたま俺たちが助けたからよかったけど、もし少しでも廃墟に到着するタイミングが遅かったら……俺たちが見つけたのは生きた少女ではなく、惨殺死体になっていたかもしれない。


 あるいは俺たちも事件に巻き込まれていた可能性も否定できない。

 もし先輩が気まぐれで玄関の鍵を閉めていなかったら――


 最悪な光景が思い浮かんだので、頭を振って打ち消す。

 女の子も先輩も俺自身も無事だったんだから、それでいいじゃないか。


「帰ろっか」

「そうですね……うちまで送っていきますよ」

「ホントに?」

「はい、それが俺の役目なんで」


 俺は先輩の手を取って歩き始める。

 手をつなぎながら並んで歩くなんて、まるでデートみたい。


 でも……先輩の手はずっと震えていた。

 彼女の手から伝わるぬくもりは、まるで蝋燭に灯る火のようにか細い。


 人の命は儚い。

 命の火は簡単に吹き消せてしまう。


 悪意を持った人間の手によって。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです! 厳重に封鎖されているのに玄関が空いていて霊に誘われているような怖さと、意味ありげにマモルくんを先に行かせて鍵を掛けた先輩に、もしかしてマモルくんを……? というサスペン…
[一言] 面白いです!…こわ…
[一言] 怖い話風にまとめてるけど、寝ているパイセンで 「バレエ用語ですり足・追いかける」(隠語)した事実は変えられぬぞ・・・!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ