苦手な物
《舞台》
某県某所の某高校の教室の一室。
《登場人物》
白鳥白花━━17才の女子高生(2年生)。中肉中背。ロングヘアー。通称“白ちゃん”、“シロ”。
大黒屋黒子━━17才の女子高生(2年生)。中肉中背。ショートヘアー。通称“黒ちゃん”、“クロ”。
青竜院青美━━16才の女子高生(1年生)。小柄。おさげ。通称“青ちゃん”、“アオ”。
この“よしなしごと部”というのが何をする部なのかはわからないが、暇な生徒が暇な時間に、部室に来て他の暇な生徒と“よしなしごと”を語り合ったり行ったりする部なのである。
某月某日のある日、“よしなしごと部”でのこと。
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「ねえ、クロみゃん」と白鳥白花は、大黒や黒子にはなしかけた。
「なに? 白ちゃん」
「クロちゃんって苦手な物とかある?」
「それは、あるけど。わざわざ自分からその話を振るっていうことは、何かシロ嫌いな物について語りたいんでしょ」
「まあ、そうなんだけどさ」
「いいや、聞きましょ自分ちゃんの嫌いな物について」
「それじゃあ、私は“歩きスマホ”をしている人が嫌いなの」
「あー、している人結構いるね」
「いや、違うから」
「何が?」
「本人達は周りに注意して、華麗なステップワークで歩きスマホしているつもりでも。周りの人たちは怖くて距離を少し空けてるのよ」
「あー、そうかもね」
「下を向いて歩いている人にぶつかるにしても、その人はなんだか視線の先が読めるじゃない」
「うん」
「でも歩きスマホの場合は向こうから、やって来るときに視線が読み辛くて、距離を置いちゃうんだよね」
「そうだねー」
「それにしても、あれだけ結構な人たちが歩きスマホしながら何をしるのやら」
「それは、LINEとかじゃない」
「私もそこら辺だと思うんだけど、わざわざあんな危ない真似をしなくてもとは思う」
「そうだね」
「それじゃあ、クロちゃんは改めて苦手な物ってある?」
「私か、うーん。“某動画サイト”のCM が苦手だね」
「うん」
「例えばさ、2分くらいの動画を開いてみると、いきなり強制的興味のないCMを見せられて、それが終わったと思ったらまた次のCMがはじまって、今度はそれをスキップしないといけないということが、たまにあるんだよね」
「あー、あるね」
「それと、すぐに通報されて消されてしまうような海賊動画にも、2時間映画だとして、10分おきくらいにそんなCMでとれくらいの収益化が出るのか不思議だわ。何も投稿主様を某動画サイトに現れた義賊で私も、『こんなに貴重な同額見させていただきありがとうございます。でもよろしければもう少しCMはお控えに……』みたいな卑屈なことを言うつもりもないんだけどね」
「そうだねー。それでアオちゃんは、苦手な物とかある」白鳥白花は青竜院青美に話かけた。
「わたしですか、わたしは夜に駅前とか人の多い所で歩道内で自転車を運転している人が苦手です」
「わかるわ、それ」白花。
「うん」黒子。
「最近はバッテリー自転車が普及してきたせいもあって、どこから自伝が来るかわからないからこわいよね」
「そうだね。上り坂を歩いていたはずなのにいつのまにか後ろからバッテリー自転車が追い越して行ったりすると驚く」
「そうだね。やっぱりさっきの歩きスマホみたいに、自分だけは事故を起こさない、なぜなら今まで起こしたことがないからだとかいう謎の自信を持ってるのかね」
━━キーンコーン。カーンコーン。
「あ、下校のチャイムが鳴った」白花。
「そんじゃ、帰りましょうかね」黒子。
「そうですね」青美。