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31/38

31.自分に酔いしれ自分が美だと思い込むその性根に惹かれるのは一部ですわ。

 そう、私が、心から好きな白の勇者アイリスに気持ちを伝え、アイリスの想いも受け取り相思相愛とわかりこれから共にいられると思った途端、アイリスの仲間である剣士カインに立ち塞がれる。ナディアの思い人である剣士カインはマリベルとアイリスの間に入り、アイリスを連れて去る行動にナディアの心が焼け付くように痛く、その矛先はカインで無くアイリスに向かっていた。

 ナディアからしたらアイリスの思い人が、剣士カインと思っていたようで先の戦いで私とアイリスの動きを思い出して貰ったらわかってくれた。

 言ってて恥ずかしい、心臓の鼓動がバクバクよ。顔も熱くなって……。そ、そりゃぁキ……キスをしたんだもの。

 

 だから、私とナディアはお互いの気持ちをぶつけ話し合して、さらに絆が強まって意気投合。ですが、相手は目の前で消えていなくなり意気消沈。

 北にむかう街道にでると、そこまで乗せて貰っていた騎士団の馬車から降りる。

 王都に戻るものと思っていましたが、ナディアの提案で北に進むことにしましたわ。

 

「王都に向かっても白の勇者アイリス様の――――勇者達の動向に対し箝口令がひかれるかも」

「なんで?」

「魔将シワンマガイの戦い。たぶん、王や貴族が見ているとおもう、そこで冒険者であるマリベルの活躍を目にしてたら……ね」

 

 わかったかのような口調でナディアは言うが、私はさっぱり。そんな顔をしているとナディアは息を思いっきり吐き出す。

 

「王国……貴族と教会は表向きは協同共和。裏ではバチバチにいがみ合っている」

「あの時、あの父が怒っていたから……まさかと思っていたけどそうなの……ね」

 

 私が冒険者になるために兄フォクスに脅した件。うまくいったのは、教会がらみだったっていうことね。

 

「魔将との戦いには貴族排出の勇者でなくては対応できない。貴族の地位は絶対っていう考えみたい」

「今思えば……貴族は国民をまもる意識があるけど、魔物で無く魔障に関わる存在だけって感じですわ」

「教会が運営する冒険者組合。そこに在籍する冒険者は平民か、元貴族で平民になった者だけ」

「つまり、同じ民を守る義務は無いけど、冒険者になった以上、人々を守る為に魔物や魔障に立ち向かうと」

「そうね。元々貴族しか得られない恩恵(ギフト)に変わるのを作ったのは教会。さっきの魔導具……」

 

 ナディアの言葉尻で、悲しい出来事を思い出してしまう私とナディア。

 

「……」

「……」

 

 風が吹く音、地面を踏み込む足音が耳に入ってくる。私とナディアの空気が淀み沈黙が続く。

 時には、通り過ぎる馬車の駆ける音。

 だけど、私たちは無言で足を進めていたわ。アイリスが悲しい顔で私と目が合っていた、その姿が消え去るあの出来事……。

 少しの間無言だったが、ナディアが何を思ったのか冒険者組合について話だす。

 

「冒険者組合って教会が管理しているのよ」

 

 その言葉に私は「ええ、知っているわ」と知り顔で答えてしまった。だけど、ナディアが一瞬言葉を詰まらせるも再び話を進める。

 

「冒険者組合ができた経緯は?」

「それは、知らない」

 

 全く知らなかったわ。今思うといつの間にかというか、私が生まれる前から有った気がしてならない。その悩んでいる私を気にする素振りも無く話を進めてくるわ。

 

「そのかなりむかし、魔の障気が国内全土に広がって各地に大量に魔障の溜が発生してたらしい――――」

 

 ナディアの口から語られるたのは、『王族貴族の騎士団だけでは魔障を沈静化できなかた。当時の勇者でも手一杯で王族が教会にたすけを求めた』と言う内容に続き『教会は魔障の発生について調査した時から、王族貴族は教会との隔たりができた』とも言う。

 

 「でも、これもあれも全部聞いた話だし、結構昔の話だってお兄ちゃ……兄から聞いたんだよ」

 

 言い返さなくても良いし言い換える時照れなくてもいいんですわ。それ以外にもこの先の街の話をしていると私たちの横を疾駆する馬車が砂埃を撒き散らし私たちの視界を塞ぐ。

 咳き込む私とナディア。徐々に視界が広がると先ほどの馬車が止まっている。その馬車は、平民がよく使う馬車とは違い装飾され馬も毛並みが良く貴族が乗車する形。

 赤の勇者グレンが用意した馬車に似ているわ。もしかして……?

 御者がおりて階段を用意、扉が開くと降りてくるのは手で顔を隠しながら地に足を付けると、その手で青い髪を掻き分け、さらにその手を前にだし涼やかな表情で決めてくるのは青の勇者ソラだ。

 なに、このナルシスト。いまの一連の流れ格好いいと思っているのですか?私は引き気味ですわ。

 そっとナディアをうかがうと、当のナディアの表情が険しく嫌悪感に満たされている。

 

 「レディの横を通ったので失礼と思ったが、まさか君たち平民(ぼうけんしゃ)だったとは」

 

 最初の一言がその言葉ですか――――あやまりもせずに、しなくても良いのですけれど、それなら止まらないで欲しいですわ。

 

 「ふん、そうですわ。魔将を追い詰めトドメを勇者に譲った冒険者ですわ」

 「……」

 

 わたしの言葉に詰まる青の勇者ソラは目元がピクリと動き、馬車の小窓をみては大きく腕を振り回し再び私たちに手を伸ばす。

 

 「だが、魔将を倒し魔障を沈めた勇者である。君たちの勤労に評して、先の街まで俺の馬車に乗せてやるぞ」

 

 左口角を上げ真っ白な歯を見せる青の勇者ソラは、笑みを見せながら聞いてくる。

 未だに嫌悪感に悩まされているナディアの口からはため息。

 

 「徒歩と馬車……。カイン様なら嬉しいんだけど……アイツは性的に無理。だけど徒歩と馬車……」

 「足が棒のようになってしまいますわ」

 「はぁ、少しだけ我慢すれば慣れるかも。マリベルここは」

 「ナディア我慢ですわ。白の勇者一行がどこに行ったか聞けるチャンスでもありますわよ」

 「そうだな。――――そうだな」

 

 自分に言い聞かせるナディアもまた、白の勇者アイリスの仲間である剣士カインに思いを寄せる者。ここは我慢ですわよナディア……。

 中へと手引きしようとする青の勇者ソラの手を無視し私とナディアは馬車に乗り込むと、青の勇者ソラは差し出した手を握り替えし髪を掻き分け軽やかな足で馬車に乗ってくる。

 青の勇者ソラと仲間の対面に座る私とナディアは、走る馬車の小窓から外の景色を眺めている。

 だけど青の勇者ソラの仲間に冷たい視線向けられても私たちは気にしませんわ。

 無言の圧を駆けられるマリベル達を乗せた馬車は北の土地ホクカムライを目指す。

マリベルは白の勇者アイリスと添え遂げる事が出来るのか?


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