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15 ランク上げに何故か赤の勇者がつきまとうけど、あなたに興味ないの……ですわ。

 宿の主人が無言ながら苦笑いし朝食を用意してくれる。

 それを頂いたあと恐る恐る宿の扉を開け外に出たが、勇者グレンと仲間の姿は無い。

 心置き無く私とナディアはその足で、冒険者組合へ向かう。

 依頼が貼られた壁に群がる冒険者達。

 その光景にナディアが呟く。


「少し遅かったようね」

「ええ、全く壁が見えない」


 壁の前に人の壁が、徐々に閑散し目的の壁が見えてくる。

 ナディアと共に壁に貼られた数少ない依頼に目を通す。

 殆ど、何かのお使いやら移動の護衛などしかなく、アイリスの居場所を知るのとランクアップを目的にしている私にとってはこの場から離れない依頼を探している。

 目を凝らしナディアの声。


「あった」

「どれ?」

「オークの討伐……ランクBの依頼」

「って言うことは」

「いけるっ! あの勇者達が取ってないなんて」

「ランクBの冒険者が、あの勇者以外この街に居ないってこと?」


 頷くナディアは、満面の笑みで依頼書を片手に受付に向かって行った。

 兎に角、先ずはランクアップよっ私。冒険者のランクを上げ組合に信頼を勝ち取り勇者の……アイリスの状況を知る。

 何時でも再確認なの目的を失ってはダメ。常に心の中で言い聞かせる。

 すると私を呼んでいるナディアの手招き。受付に私の冒険者登録証が必要だったらしく、依頼の受付完了。

 その足で、依頼内容に従って目的地へ向かうんだけど……。


「いったい、いつまで着いてくるんだろう」

「へっ、何が?」

「ナディア、気付いない?」

「もしかして、後ろの……」

「アレで隠れているつもりなのかね」


 魔障のゴブリン退治の時に向かった森の外れ、方向は少しズレるがその森にオークが出たとしかも少数の群れ。報告が上がったの馬車を護衛する冒険者とその馬車の持ち主。

 近くまで行く馬車も無く、途方に暮れている私とナディア。

 すると、よく分からない鼻歌をしながら近づいてくる赤の勇者グレンと仲間。


「困っているようだな」

「いえ、結構」

「おいっ! 何も言ってないのに断るなっ」

「宿から後を着いてきて、怪しい人とは話さないと親から言われて育ったの」

「それは、良い教育だ――――ってこの俺、どう見ても怪しいくはないっ」


 ここに来るまで、動きが怪しいすぎるでしょ。

 特に物陰に隠れているようで、隠しきれてないし時には姿見えていたし。更に言えば女3人、何故が顔は出てて私に視線が突き刺さる程見てたよね。なんで?


「まぁ、でも困っているだろ。 移動手段で」

「確かに困っている。 この際マリベルと2人(・・)で道中歩くしかなくて」

「おい、シエンの妹。 それは危険だぞぉっ!!」

「そうよっ、ナディア。 お姉ちゃんが着いて行ってあげる」

「シエン、貴女だけ抜け駆……みんなで行った方がいい。 そうよねエンレイ」

「うん、何があるかわからない。 それに私は一緒にいたい」


 この4人なにか違和感を感じる。特に女3人、言葉がおかしいような……私の勘違いかしら。


「赤の勇者グレンよっ。 何か良い方法ある?」

「ふん、マリベルの頼みなら。 俺の馬車を用意しよう」


 グレンが大きく手を振り上げた瞬間、後を通る馬車が止まり軽くウマが鳴く。


「どうだ! マリベル。この馬車に乗って、受けた依頼をしに行かないか?」


 自信満々に微笑むグレン。3人の仲間も頷いている。

 そして、更に喜ぶナディア。


「マリベル、行きましょ。 早いに越したことはない」

「そうだけど。 もしかしてあなた達も来るって事は無いよね?」

「はぁぁっ! 着いていくというか一緒に行くに決まっているだろ」

「えぇぇっ、なんで!?」

「当たり前だ。 この馬車はウチのだからなぁ」


 鼻を鳴らすグレンは、その調子で「俺が乗るからタダなんだ」と付け加えてくると、その後に――――。


「俺の仲間に――――いや俺の女になればタダで乗れるぞっ。 どうだ!」


 グレンのドヤってした顔をしている中、グレンの仲間3人は、甲高い声でグレンに文句を言っている。

 そりゃそうよ、仲間の3人からしたら赤の勇者グレンは、攻略対象の1人。そんな男が3人から出なく別の女に声を掛けているとなると心情的に宜しくないよね。

 でも、「マリベルはダメっ」「抜けがけはいけません」「それは私の言葉」と仲間3人からの声が何か微妙に違うというか、まぁこれは聞かなかったことにしよう。


「さぁ、どうだマリベル?」


 ニヤニヤするグレンが見える視界に、ナディアが仕草で『頷け』という合図をしてくる。

 絶対に赤の勇者グレンとなんて想像すらできない。

 顔が強ばってしまう私は、返事には困らない。


「一緒について行ってもいいわ」

「そうだろ、マリベル……お前にはそれしか選択肢は無いからなっ」

「ん?」

「この俺に嫁ぐ……それしか方法はない」


 突然何を言い出す、この男は!?

 依頼先へ徒歩で向かう私達に馬車を出すから一緒に行くって言う話から、何故嫁ぐ話に?

 というか、嫁ぐ話になるほど会話すらしてないし。普通、お見合いですら会話してお互いの事を知るよね? 私はコイツ……赤の勇者グレンの事、全く知らないし――――興味無いし。

 ズバッと断るのが後腐れないわ。


「はぁ、誰が? 私はナディアといち早く依頼を解決したいの。あなたとなんて一言も言わないし、こっちからゴメンだわ」

「なっ、こここここここの俺が、ゴメンだ……と……」

「そうよっ。 馬車はありがとう、だけど」

「この俺はなっ! この領地を治める伯爵の――――」


 赤の勇者グレンが、ものすごい剣幕で私に怒りを見せできたが、割って入ったエンレイがグレンを止める。


「マリベル達、馬車に乗って」


 エンレイの言葉に、ナディアと共に馬車に乗り込む。

 それにしてもねぇ、元々興味すら無いけど【人物図鑑】によると赤の勇者グレンは、この南の領地を治める領主の息子なのは説明で書いてあるのよ。

 本当にこんな勇者のことより閲覧できないアイリスの事を知りたいのよっ!!


 ――――あぁ、今どこで何をしているの……アイリス。


 しかし、貴族社会から離れた私だけど、貴族のツテがあれば早くアイリスを見つけられる。しかしそれには貴族から名指しの依頼が来るほどの実力と実績を持たないと……ね。

 怒りを収めた赤の勇者グレンと、エンレイ達が馬車に乗る。

 私と一瞬、目を合わせたがそっぽを向かれる。


「私、弱い人嫌いなのよっ」


 私の一言に赤の勇者グレンが、私と目を合わせ不敵な笑みを見せ睨んでくる。


「なら、次のオークとの戦いで俺の力を見せてやる」

「いや、そもそも……」

「エンレイ、フレア、シエン! やるぞっ!!」


 やる気が溢れる赤の勇者グレンとその3人。

 隣でナディアも「私も、やるっ!」と目を輝かやかせる。


 ――――はぁ、そう意味では無いのだけれど。まぁ、この赤の勇者グレンの機嫌が良くなってまぁ、いいか……。

読んでいただきありがとうございます。


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