seit Ewigkeiten
約400字の短編小説です。
よろしくお願いいたします。
またいつもの朝だ。
けたたましく鳴く目覚まし時計を殴る。底無し沼から引き上げられているとさえ思える程の重さを引きずって、僕は覚醒した。
「今日も朝だ」
朝は嫌いだ。
同じことの繰り返しだから。
それでも一つ、好きになれた事がある。
「今日はどうしようかな」
昨日は左の薬指で、一番初めは右足の親指の爪だった。
今日もまた、傷一つなくなった体を見つめ、品定めをする。それが日課だった。
「よし、右目にしよう」
――ヘアピンに挟まった柔らかい水晶が、真っ白なシャツに熱い雫を落とす。唐突に訪れた暗黒に、しかし僕は強烈なまでの生を実感する。
どうせ朝はまた来るのだから。
もうこの赤だけが、たった一つの色になっていた。
永遠から這い出ても、二度寝する頃にはまた見慣れた僕に戻っている。
「明けない夜も」
カーテンの向こうの半分に朝陽が差し込み、半分を宵闇が覆う。
足りないものが分からないまま、僕はそっと、この今日をまた闇に閉ざした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。