剣闘奴隷編 3日目
今日の更新はここまでです。
不定期更新していきますが、今後も最後まで読んでもらえると幸いです。
何時間経ったのだろうか、気が付くと俺は眠っていたようで鉄格子から空を見上げると外が明るくなっていた。
色白の男、短髪の男もまだ眠っているようだ。
そして、不意に馬車が止まる。
どうやら休憩なしでこの馬車の目的地に到着したようだった。
人の生活音が聞こえる、ファンタジー系によくある街に到着して門でなにやら話しているのだろうか。
まだ日も明るくなったばかりで少し空に二つの月が見えている。
この空を、二つある月を見ると自分が“地球”にいないという事を突き付けられる。ただ二つの月がどうも綺麗だなと思う気持ちもあるのが不思議だ。
そう、現実逃避しつつも数分もするとまた馬車が動き出す。
残念ながら鉄格子から街並みは見えなかったが、人々の生活音を聞けただけでも心に少し余裕ができた。
その後俺ら三人は特に話すこともなく馬車から降り厳つい男に先導されて何やら大きな建物へと連れられた。
男くさい、汗のにおいがする建物では、凶悪そうな男達が俺らを見ている。
「今回はいつもより少ないな・・・。まあいいか。」
ひと際腹の出ている男は、キラキラした指輪を見ていた。
俺らの血を垂らしたであろう用紙を厳つい男から受け取り、確認もせず適当に血を付けサインを書いた。
「これでお前らの所有権は俺になった。俺は剣闘士達の取り纏めをしている者だ。まあ、名前は覚えなくていい。俺もお前らの顔も名前も興味もない。
おいっ、あいつを呼んで来い、こいつらにここのルールを教えてやれっ!」
荒々しく自己紹介を受け、ここがコロシアムという物騒な場所という事だけは分った。
「まあ、精々長生き出来るといいな。」
俺らを先導していた厳つい男が捨てゼリフにそう言い、立ち去って行った。
未だに良くわからない状況と現実を呑み込めないでいると、「おい」と呼ばれた男がやって来た。
「はい、お呼びでしょうか。」
手を揉んでやってきたのは、小柄でやせ型の男だった。
ただ、どう見ても日本人のようだったのでそこは少し安心した。
「今回の新人だ、キツネお前がここのルールを教えてやれ!」
「わかりました。」
ヘラヘラとしながら深々とお辞儀をするキツネと呼ばれた男。
視線を俺ら奴隷の主から外し無表情でこちらを振り返る。
「付いてこい新人。」
先ほどの態度とは打って変わり俺らに対しては高圧的な態度だ。
どこに行ってもこういう奴はいるんだなと辟易した。
「おい、お前ら俺が今日からお前らの指導をする。同じことを二度も言わせないようにきちんと覚えろよ。」
「ちなみに他に人がいない場合はキツネと俺を呼ぶんじゃないぞ。ちっ、“ミワさん”と呼べ。」
そう、先輩風をふかすミワさん。
奥へと歩いていく、寝床、食堂、訓練場などの設備の場所とルールを教わる。
基本的には他の奴隷達と同じように行動すれば良いのだが、決められた場所で過ごし、食事も決められた席で取るようにと念を押された。
ついでに俺ら“流れ人”についても少しだが説明してくれた。
とりあえず、“この地域では”嫌われている。異世界から流れてきたという事でこの世界にいるヒューマンと言われる人間族かつこの地域ではかなり忌み嫌われているらしい。
確かにさっきから結構鋭い視線を感じる。
召喚されたあの地下室よりも攻撃的な視線だ・・・。
日が少し傾き始めたころ今日の夕食の時刻となった事で、キツネことミワさんと食堂へ向かう。
俺ら“流れ人”は、他の剣闘士とは違う机で食事をする。
食べるものは同じだが、視線が痛い。
このコロシアム内でも嫌われているという事か・・・。俺ら転生同期三人、ミワさんで食べていると、遅れて3人ほどやって来た。
厳つい丸刈り頭、長髪でキザったらしい男、そして前髪を垂らして表情が良くわからない男の三人
「お前ら新人か?」
厳つい丸刈り頭が山盛りに料理が盛ってある皿を乱暴に机に置きながら聞いてきた。
「そうよ、今回は少し人数が少ないが俺がしっか、」
「キツネ、お前には聞いてねえよ。」
ミワさんの説明を遮るようにドスの聞いた声で丸刈りの一人が言う。
「はい、そうです。」
俺らはコクリと頷きながら答える。
「そうか・・・、なら飯はしっかり食っとけ。洗礼を受けきったら名前聞いてやる。」
そう、つぶやくと皆沈黙のまま食事を再開した。
翌日。
その「洗礼」とやらが早速開催されるのだった。
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