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剣闘奴隷編 1日目

不定期更新ですが、最後まで読んでいただければ幸いです。

強い日差し

耳障りな騒音

「早く殺せ」「死ね」と汚い言葉が飛び交い、血と汗のにおいが鼻に突く。


ようやく握りなれた両刃の剣と皮のバックル

汗で剣と盾を握り直し、今日もコロシアムででは、「殺し合い」という名の「ショー」が始まる。



今日の俺の相手は、奴隷に成りたてのヒューマン。前の世界(・・・・)で言う人間だ。

年齢は30過ぎ程度か、俺と同じく片手剣と小盾を握っている。

どうやら、うだつが上がらない冒険者だったようで酒に飲まれていき、

腕も落ちて膨れた借金が返せなくなり、コロシアムの奴隷に落ちてきたようだ。


試合前に監守からそう教えてもらった。

まあ、ほんとかどうかは分からないが・・・。


「ふんっ、流れ人(・・・)風情が一丁前に俺を睨んでんじゃねえよっ!」

口も態度も威勢が良いようで、試合開始の鐘が鳴ると同時に突っ込んでくる。


うだつが上がらないとは言え元冒険者、迷いなく切り込んできた。

残念ながらどうやら情報は正しかったようだ。


俺は避けることができないので盾でガードする。


ガッ鈍い音と衝撃が腕に伝わってくる。

初撃をガードしただけでは、相手は攻撃を緩めることなく次々に俺に襲い掛かってくる。

蹴りなども合わせての攻撃で、今のところ俺は手も足も出せない。


剣での攻撃は盾で防ぐその度に腕に響く衝撃、蹴りや拳での攻撃は力を入れてただただ踏ん張る。

アドレナリンが更に出ているせいか痛みは感じない。

そしてその度に観客から聞こえる声が大きくなる。


もちろん皆が応援しているのは相手側(・・・)だ。


相手の動きを良く見て一心不乱に防御する。これが今俺できる範囲での戦い方だ。

武器以外での攻撃は致命傷になりにくい。なら、まずは武器での攻撃を防ぐ。

何度も耐えていると、相手の攻撃が緩んできた。


どうやら酒に溺れていたせいか運動不足になっているみたいだ。

そんな状態で勢いよく攻めてくるから、数分だけで大分体力が減ってきているようだ。

肩で息をして額には大粒の汗を流している。


「ふざけやがって、このクソがっ・・。ハァ、ハァ・・・。」

その程度の暴言はもうここに来てからは耳にタコができるほど聞いてきた。


剣を握り直し、今度は俺が相手に襲い掛かる。

盾を前に出して相手へと一気に接近する。


元冒険者は、剣を上げて振り下ろしてくる。

振り下ろされた剣を俺は、なんとか盾を上向きにして防ぐ。

ただ、相手の振り下ろしの威力を殺しきれず膝が一段と曲がる。


そして、肩に激痛と熱が走った。

どうやら盾で防ぎきれず肩に刃が食い込んだようだ。

相手はニヤリと俺を見下してくる。

アドレナリンのおかげか痛みよりも怒りがこみあげてくる。

傷を負ってでも作った相手の油断、動きが止まった隙に腹部目掛けて剣を突き出した。


ブスリと手に嫌な感触が伝わってくる。

傷んだ安っぽい皮製の鎧を突き破り、肉を切り裂く感触。

腹から剣に伝って血が俺の手に流れてくる。


「あ・・・、あぁ・・・。」

俺は剣を引き抜くと大量の血がコロシアムの土に流れ落ちた。

元冒険者は膝から倒れ、動かなくなる。


そして、試合終了の鐘が鳴り観客からの怒号と歓声が巻き起こる。

「勝者――!流れ人(ながれびと)――、リューヤー」

生き長らえた安堵感と人を殺めた罪悪感に包まれながら会場を後にする。


騒音を背に通路を歩き、治療を受けることなく体に水を被る。

既に血も止まっているようで、水をかけても手で触っても痛みは無かった。

傷の直りが早いがどうやら“流れ人”の特性らしい。


この世界に来た時の事を未だに鮮明に思い出しながら、小さな窓から見える二つの月を眺めながら眠りについた。


誤字脱字やコメント頂けると最高です。

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