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リコを幼稚園に送り出して駅に向かうと、里香とばったり会った。
「美咲! ちょっと時間ある? お茶していかない?」
今日の里香はどこかハイテンションだ…。何故か嫌な予感がする…。
「ちょっとさ…話したい事があって…」
運ばれてきた抹茶オレを飲みながら里香は話し始めた。
「里香はさ…その…好きな人とかいないの?」
「え?」
「気になる人とかさ?」
「そんなのいるわけないでしょ! 結婚してるのに。…まさか?」
「うん。」
「マジで? 誰なのよ?」
「…実は…」
里香の話によると、なんと相手は遥の夫なのだった!
「ダメでしょー! 友達の旦那なんて一番やっちゃダメでしょ!」
「私だってそう思ってるよ! だけどしょうがないじゃん」
遥の娘も里香のピアノ教室に通っていて、送り迎えを遥の旦那さんがすることが多く、最初は世間話程度だったのが、次第に遥の旦那さんの相談を聞くようになって、そういう関係になってしまったらしい。
遥の夫は同年代だが、見かけよりずっと若くてセンスもいいので、何も知らないと独身に見える。
遥と同じく一見人当たりもよくて爽やかだ。
幼稚園の他のお母さんたちにも秘かに人気があって、里香が惹かれるのも無理はないかも…。
だけどやっぱりどこか嘘くささを感じる…。
とにかく似た者夫婦だ。
里香が言うには、間違いを犯したのは一度だけらしい。
それにしても…それにしてもだよ!
「美咲は、正直…遥の事どう思ってる?」
「どう思ってるって…友達でしょ…」
「腹割って話せる?」
「…」
「でしょ。間違いを犯した私が言うのも悪いけど、正直前から遥には距離を感じてたんだ。こっちがぶっちゃけてんのに、あの人絶対本心言わないじゃん。てか逆にさとされるし。遥と話していると、すごくバカにされてるような気がしてたんだ。」
「確かに…。私も本当はそう思ってた。…にしても友達の旦那と浮気しちゃダメじゃない!」
「仕返しとかじゃないよ! 復讐してやりたいなんて思ってもないもん。ただ、遥の旦那の愚痴を聞いてたら、可哀そうだなって思ってきて…そこからだんだん気になっちゃって…向こうも同じ気持ちだって言ってきてさ…」
「愚痴って遥の事? 愚痴言うようなことないような感じだけどね。なんだか完璧そうだし…」
「それがさ!」
里香は前のめりになって話し始めた。