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ファイトクラブ ーフーガとリオン


「お前が言いたいことはわかった、つまりはダークミラーワールドに行けばいいって話だ。それで何でこんな所に用があるんだ」


リオンの体に触れることが出来ず自分以外の人間にその姿が認識できないという事実からリオンの言うことを信じることにしたフーガはリオンに言われるがままにファイトクラブと呼ばれる施設に来ていた。


「ここは一般的にファイトクラブと呼ばれる施設だ。ここではスターダストと呼ばれるスポーツの観戦もしくは対戦を行うことが出来る、スターダストとは新しく発見された人間の身体能力の一つであるオーバーソウルを利用して行う競技のことだ、まあ一度やってみればわかる」


「そのスターダストとかいうスポーツがダークミラーワールドに何の関係がある」


「さっきも少し話したが新しく発見された人間の身体能力の一つオーバーソウルをマスターしていないとダークミラーワールドに入ることが出来ない、一度オーバーソウルがどんなものか見せよう、そこの裏路地に入ってくれ」


リオンが指差す方向には人気のなさそうな路地があった、フーガとリオンは路地へ移動した。


「人に見られたらまずいのか」


「別に悪いことじゃないが少し目立つ、フーガも全速力で走っている人間が近くに居たら目を向けるだろ、それと同じだ」


「なるほどね、それでオーバーソウルってのがどんなものなのか見せてくれるんだろ」


「ああ、しかしフーガの体でだ。私のこの霊体化してしまった体では出来なかったからな」


「俺の体でか、そんなことできるのか」


「普通はできない、しかしフーガが寝ている時に色々試していたんだが、私の思念粒子がフーガの体に作用することがわかった、恐らく問題無いだろう」


「俺が寝てるときに何してんだよ」


「まあそういうな、あの時は自身のことを知るので精いっぱいだったんだ、それじゃあ行くぞ」


リオンは集中し眼光が鋭くなる、その鋭さにフーガも緊張する。しばらくするとフーガの体が光り出し、輝きを放つと激しい光は消え、消して間もない電球のようにぼんやりと光を放ちながら元の色に戻った。光が消えるまで手を見つめていたフーガは何が起こっているのかリオンに聞くために目を上げるがそこにリオンの姿はなかった。


(はっ、あいつ、どこにいった)そう思ったフーガは声を出して「おい、リオンどこに行った」と呼び掛けた。


(ここだ私はここにいる)


頭の中から声が聞こえてきた。それはリオンの声だった。


(お前、俺の中にいるのか)


(ああ、そのようだ視界も体も自身の物のように操れる)


フーガの体が勝手に動く。フーガは自身の体が意図していない動きをし困惑した。


(これがオーバーソウルだ、そうだな、一度思い切りジャンプしてみろオーバーソウルの凄さがわかる)


(ああ、わかったよ、ていうかこれ気持ちわりいな自分の体が自分の身体じゃないみてえだ)


フーガは足を屈曲し思い切り飛んだ。


凄まじい加速度で建物を越え空中に飛び出した。


「おわっすげぇなんだこれ」フーガはあまりの驚きに声を上げる。


(これがオーバーソウルによって底上げされた身体能力の力だ、もっとまじめにやればさらに素早くさらに高く飛ぶこともできる)


「それでどうするんだこの後」


(そんなことは決まっているだろう、落ちるだけだ)


「馬鹿、死ぬだろ、うぁぁあああああ」フーガは叫びながら落下していく。

そして衝撃音と共に地面に叩きつけられた。


目をつむっていたフーガは恐る恐る目を開け地面にめり込んだ手足を筋力で掘り起こす。そしてゆっくりと立ち上がり自身の体に異常がないか確認した。


「信じられねえ、あんな高さから落ちたのに傷一つ付いちゃいねえ、どうなってんだ」


(それはな…)


フーガの体が光り出す。先ほど程の閃光を発しているわけではなかったが輝く砂粒が弾けるように散っていった。またしばらくすると光は収まり、目の前にリオンが現れる。


(それはな、オーバーソウル状態の体を傷付けることが出来るのは同じオーバーソウルが施されたものだけだからだ、さあ、簡単な説明も終わったことだしファイトクラブに行くぞ、オーバーソウルを用いた戦闘がどういったものなのか一度見てほしい)


フーガはにやにやと笑った。

「面白そうじゃねえか」


二人は路地を出て、ファイトクラブに向かった。


――――――――


「いらっしゃい、あら、僕一人?」

ファイトクラブに入ると受付のお姉さんが話しかけてきた、フーガの姿を見て子供と勘違いをする。


子供扱いされることに面をくらい「ああ、そうだ」と子供らしくない口調でフーガは答える。


(フーガ、ああ、そうだという口調を子供は使わないぞ、もう少し愛嬌を持って話したらどうだ今は子供なんだろ)とリオンはにやつく。


(うるせえな、おれは24だ)


フーガの言葉遣いに苦笑するお姉さんは「ここは初めて?」とフーガに問いかける。


フーガは子供らしく振る舞うのを鼻から諦めてしまったのかおおよそ子供らしくない口調で「ああ、何もかもまるっきり初めてだ」と答えた。お姉さんもそこまで気にしていないのか特に指摘することもなく会話は進んだ。


「ここはスターダストが出来る施設よ、見学だけも出来るわ、見学だけならタダだけど対戦するなら子供一人500フェルツよ」


「500フェルツ、フェルツ、フェルツ!?」フーガは聴き慣れない単位を復唱する。


(リオン、フェルツって金のことか?いくらだ)


(500フェルツは500フェルツだ)


(金なんか持ってないぞ、いるなら先に言っといてくれよ)


(私も表から入ったのは初めてでお金が必要だったとは知らなかった)


(このボンボンが、だったらどうするんだよ)


「どうしたの、ミクルさん」受付の後ろ、ソファに座っていた少年が受付のお姉さんに話しかけた。


「あら、ユズルくん、今ね、ユズルくんと同い年くらいの男の子が来てるんだけどここ初めてみたいで入場料が必要なことを知らなかったみたいなの」


「あの子?」ユズルと呼ばれる少年はこちらに目を向けた、受付のお姉さんはそうよと答えた。


「ここ、初めてなんでしょ?今日だけサービスしてあげなよ」


「えー!?、まあユズルくんが言うならいっか!」


「君!今日だけだよ、ユズルくんに感謝しなさいよ」とお姉さん、改めミクルさんは無料で中に入ることを許可してくれた。


「おっしゃ、サンキューな」とフーガはミクルさんにお礼を言い受付を過ぎ、ユズルの元へ向かった。


「さっきはサンキュー助かった、俺はフーガっていうんだ、宜しくな、ユズルって呼べばいいか」


「うん、僕の名前はユズル・ナルセ、宜しくね、今日は誰かと対戦しに来たの?」


「ああ、そうだ、自分がどのくらい強いのか試したくてな」


「そっか良かったら、僕と対戦する?」


「え?ちょっと待ってくれ」フーガとしてはオーバーソウルで戦うことがどういったものになるのか知りたかっただけだったので正直誰でもよかったが、リオンが子供相手でも問題がないのかが気になった。


(リオン、大丈夫か、子供が相手でも試合になるのか)


(問題ない、力加減をする)


(わかった、ケガさせんじゃねえぞ)


(意外と優しいんだな)


(優しくない人間に、人間は務まらねえんだよ)


(意味が分からない)リオンはフフッと微笑えんだ。


「いいぜ、やろう、ユズルは強いのか」


「僕?ぼくは…まあまあ…かな、フーガ、君は強いの」


「俺は…そうだな、戦うのは初めてだが多分強いぜ、覚悟しろよ」


「初めて戦うのに強いの?」ユズルは吹き出したように小さく笑う。

「フーガ、面白いね、あっちにフィールドがあるから行こうか」


ユズルに連れられてフーガとリオンは奥にあった通路を通りフィールドへ向かった。


――――


受付近くの広間では受付のお姉さんミクルと先ほど入ってきた常連のダルルが話をしていた。


「おいおい、ミクルちゃん、あの坊主何もんだ、ユズル先生に対戦を申し込むなんて」


「今日初めて来た子よ、ユズル君のことを知らないのよ、じゃないと対戦を申し込むなんてこと出来ないわよ、あとダルルさん、ユズル先生なんて呼ぶとまたユズル君に嫌がられますよ」


「そんなこと言われてもね、私はユズル君に指導して貰ってるんだ。先生って呼ぶのが礼儀だよ、そういえば、ユズル先生今年もプロ選抜参加しなかったんだって、どうしてなんだい、プロになる実力はもう十分にあるんだろう?」


「さあ、僕にはまだ早いよって言ってたわ、私は全然そんなこと無いと思うんだけどね」


「実力のある人間は早く表舞台に出て世間を盛り上げてほしいもんだけどね、どれちょっと見に行ってみようかな」


――――――――――――


「ここだよ」ユズルはフーガをフィールドに案内した。


そこは体育館のように広く頑丈そうな作りで床には中心の線と線で対称に描かれた半径1メートル程の円があった。また、観客席もあり対戦を聞きつけたギャラリーが何人かいた。


「じゃあ始めようか!時間は十五分、ハンデはそうだな遠距離、爆裂禁止ってところかな」とユズルはフーガに問いかけた。


「ハンデ?ハンデ何ていらねえよ、俺とそんなに変わらないだろ」


「それもそうだね」とユズルは言い、頭を掻きながら顔が赤くなる。


「ユズル君相手にハンデ無しとはとんでもない坊主だな」

「ボコボコにされてもベソ掻くんじゃねえぞ」

と観客席にいたおじさんたちはヤジを入れ笑っている。


「うるせえな、静かに見てろっての」とフーガは観客席のおじさんたちに聞こえるよう言った。


「おうおう、怖い怖い、まぁ頑張れよボウズ」

「ありゃ、一瞬で蹴りが付くかもな」

「違いない」とおじさんたちは口々に言う。


「よっしゃ、さっそくやろうぜ、どっからでもかかってこい」とフーガはユズルにいい、ファイティングポーズをとった。すると後ろからリオンの笑い声と観客の笑い声が聞こえた。ユズルは困惑した表情をしている。


「坊主、ほんとにスターダスト知ってんのか、喧嘩じゃねえんだぞ」

「ユズル先生手加減してやってくれー、そいつ素人だ」

観客のおじさんは口々にフーガをからかった。


(あいつらなに笑ってんだ、リオンお前も、何かおかしいのか)フーガはリオンに心で話しかける。


(フーガ、いや違うんだそういえばスターダストのルールを何も伝えてなかったなと思ってな、ゲームの開始はお互いに床に描いてある円の中に入って、合図と同時に始めるんだ)


(そういうことは先に言えよ)フーガは少し耳が赤くなりファイティングポーズをやめる。


「こういうところで試合するのは初めて?フィールドで戦うときはお互い円からスタートするんだよ」


「ありがとよ、いや忘れてただけだ」フーガはユズルとは反対側の円に入り、じゃあ始めようぜと言った。そしてその後、心の中でじゃああとは任せたぜリオンと言った。


(ああ、わかった)そう答えるリオンの声が聞こえた。



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