9:大型輸送機ビーバー
レイトから約300km離れた上空6000m地点。
レイト製6発大型輸送機ビーバーが1500km離れたランディングポイントに向かって飛行している。敵機がいない静かな空を轟音を唸らせて飛んでいるこの大型機は急いで離陸をしたために機内は慌ただしかった。
機長であるダリウス・バーン機長は各銃座と格納部ハッチ、翼内点検通路を通って各エンジンを点検している。今は副機長であるオットー・リアス副機長に操縦を任せている。
ダリウス「各銃座、格納部ハッチ、エンジン共に異常なし。オットー、少し右に流されているぞ。進路修正頼む。」
オット―「了解。ところで今回の任務って何ですか?」
ダリウス「聞いてないのかよ!今回は指定ポイントに着陸後、鹵獲車両と捕虜、原住民の積み込みだ。」
オット―「そうだったんですか。でも久しぶりですよね、こうやって飛ばすのも」
最後にビーバー輸送機が飛行したのは約10年前、敵の残存勢力殲滅後に味方部隊を回収する任務の時だ。その時は護衛の味方戦闘機30機と4機ものビーバーが着陸、回収をおこなった。今回の任務も素早さと正確さが重要な任務である。
銃座についている搭乗員も緊迫した状態で見張りを続けている。いくら敵機が居ない安全地域といえど、機体下部からの飛翔体には耐えられないのである。でもここには対空砲は存在しないしましてや敵兵すらいない。
レイトから1020km離れた地点。
そろそろ高度を落として着陸態勢に移行しようとした時にそれは起こった。
ダリウス「17時方向レーダーに敵反応あり!時速520kmで向かってきている。各銃座は射撃用意!3km以内に入ったら自由射撃開始!」
塗装がされてない銀色のエンテ翼の機体が近づいてくる。
まるでスウェーデンのサーブ21みたいな機体は機首に機銃を4門取り付けているようだ。
各銃座は今か今かと待ち構えるが3km以内に入ってこないエンテ翼の機体はこちらの様子をうかがってるだけのようだ。
高度3000m地点にまで降下しているビーバーといまだ付いてくるエンテ翼は緊迫した状態が続いている。
ダリウス「ええい!まだ付いてくるのか!」
オット―「そのようですね…」
不意にエンテ翼が旋回を開始し始めた。こちらに向かってくるのだろうか?
だがエンテ翼は右旋回をして離れていった。どうやら偵察をしていたようだ…。でも偵察をしてくるってことは後で強襲してくる場合もある。
ランディングポイントまで残り200km
高度2000mまで降下し時速を560km/hから450km/hにまで落とし、着陸態勢に移行した。
このような大型機は着陸距離が長く、姿勢制御も難しい。
ダリウス「オットー、機体が右に3度流されてるぞ。修正してくれ。」
オットー「了解。でも今回流されることが多いですね。」
ダリウス「そうだな…少し風が強いのか?」
オット―「ランディングポイントまであと150km」
ダリウス「高度を1000mまで降下、時速を450km/hから350km/hまで落とせ。」
オットー「了解」
オットー「ランディングポイントまであと100km」
ダリウス「フラップ展開、レベル2まで展開。」
オット―「了解」
主翼の大きなフラップが展開されて、輸送機の機首が少しだけ持ち上がる。
オット―「ランディングポイントまであと50km」
ダリウス「アプローチ開始。フラップをレベル4まで展開。ランディングギア展開。」
オット―「了解。」
さらに機首が持ち上がり、機首の1組と主翼についている2組のランディングギアが展開される。
オットー「信号弾確認。こちらに気が付いたようです。」
ダリウス「指示灯の点灯を確認。これより着陸態勢に入る。」
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宮道視点
ランディングポイントにまで住民と捕虜を連れていき、着陸指示灯を設置する。発電機を持ってきていないためRE-74から電源を引っ張ることにした。
おそらく飛んでくる方向に偵察用双眼鏡でのぞき込み、待機する。機体の形状が分からないためアリアやアイラにも見てもらっている。
アリア「来たぞ!あれだ。」
俺は素早く信号弾を発射し、RE-74のエンジンを始動した。
暗闇の中、感覚でおいていった着陸指示灯はランディングポイントを正確に照らしてくれた。
まるでクジラみたいな機体にも見える大型輸送機はアメリカのB29やソビエトのTu-95を足して2で割って大型化したような見た目だった。
6発のエンジンを轟かせ、着陸したビーバーは正確にランディングポイントで静止した。
ダリウス「機長のダリウス・バーンだ。よろしく。こちらは副機長のオットー・リアスだ。」
オットー「機長!勝手に紹介しないでくださいよ!あ、副機長のオットーです。よろしく。」
お互いに会うのは初めてなのでこちらも挨拶を済ませる。
ダリウス「ところで宮道殿。今回運ぶものはこのデカブツと敵兵と原住民だけですか?」
宮道「ああ、そうだ。だが近いうちにまたいろいろと運んできてもらうかもしれない。」
ダリウス「降下作戦でもするんですかい?」
宮道「まだわからないけどな。」
ビーバーNo.1の格納庫の牽引用ワイヤーをIS-3に取り付けて一気に巻き上げる。
こいつの重量が50t近くあるのだが載せた状態で飛べるのかが問題だ。
ビーバーNo.2には敵兵を格納庫の近くの収容室に入れ、原住民はビーバーNo.3の客室に誘導する。
オット―「前の人を押さずに慌てずゆっくりと歩いて行ってください!絶対に押してはいけませんよ!」
No.1からNo.3までの機体がエンジンを起動させた。
ダリウス「No.1テイクオフを確認。No.2テイクオフを確認。俺らもいくぞ。」
オット―「了解。エンジン始動。各銃座異常確認せよ。フラップレベル3まで展開。…V1……V2…ギアアップ。各計器正常。」
ダリウス「エンジン出力70%を維持。全速飛行はできる限り避けるように。」
暗闇に消えていくビーバーを見送り、俺らは前線基地に向かった。