12:前哨基地突入。
「くそったれめ!」
俺は昨日まではレイトの奴らが攻めてきたとき用に戦力拡大の命令を出して今日までには150両の無人戦車DT-62の生産を命令していつでも攻勢をかけられるようにしていた。だが今朝の奇襲によってざっと20両はやられてしまった。突貫で生産したから爆発の衝撃に弱かったらしい。
だがそれでも130両は確実に動く状態だし敵味方識別システムは機能しているはずだ。我が国は国土が狭くここぐらいしか攻められるところはない。相手の情報はおおかた把握しているつもりだった。
そう、つもりだったのだ。
相手はこちらの戦車を餌としか思ってないように思える。しかも各個撃破どころか動かなくなるまで撃ってきやがる!
俺はこの基地が崩壊寸前なのを察した。そう、逃げるべきだ…。
だがそれを敵は許さないらしい。
大量の瑠弾が降ってきたのだ。
殺意溢れる瑠弾は工場に穴をあけ、通信システムのアンテナのみを破壊しトンネルの屋根を破壊した。
逃げ場はないらしい。
できればやられたくなかった。だが戦争を始めたのも、まわりに手を出したのも我が国だ。
降伏しかないらしい。
この日バラザードの前哨基地は白旗を挙げた。
捕虜としてとらえた敵の指揮官は実に素直だ。小型機で真っ先に戦闘地域から回収して事情聴取をしているのに全て嘘をつかない。
だが素直すぎてこっちが戸惑うほどだ。VS-3の奇襲攻撃の事。無人戦車についての事。地底トンネルは本当にバラザードに続いてるのかについての事。全情報は指揮官の口からでた。敵国ならばこんなにべらべら喋らないはずなのになぜこの男は喋るんだ…。むしろ気味が悪いと思ってきたところだ。
ルーク「その情報は本当か?」
「本当以外ない。」
ルーク「むしろ疑うぞ。」
「本当だぞ。」
さっきからこんなやり取りがずっと続いてる。
前線に展開していた部隊は基地の設備とトンネル内の調査をするために前哨基地跡に近づいていた。敵車両は片っ端から破壊し基地の生産設備となる工場も1発の砲弾で黙った。
情報回収車両であるM113装甲車には小型アンテナを取り付けている。必要に応じてジャミングしてデータの回収を行うつもりでもあるし回収した媒体を格納して運ぶのには丁度いいサイズだ。問題は工場にある作りかけの車両だ。ジャミングした影響で砲塔だけでも戦えるレベルだ。データの回収をしているなかで5つほど興味深い物もあった。
1:バラザードには秘匿兵器が存在すること。
2:海軍基地の存在があること。
3:対戦車用の着脱式歩兵装備が存在すること。
4:島国であるがゆえ独特の地形を持つこと。
5:奇襲による迎撃で敵を一方的に撃破してくること。
そう、奴らは攻めよりも守りが強い。だが今までの様子から見て兵は少ない印象を受ける。そして歩兵装備が充実している。レイトの歩兵装備は個人が自由に装備を構成できる利点があるが弾薬の共用化が進んでない。訓練中の兵はケースレス弾を使うG11を使うやつが多かったりする。その分バラザードは弾薬共通化が進んでる。主に使っている弾種が7.92mm弾という独自規格の口径だ。
データの回収を一通りした結果圧倒的に戦略不足だ…。ならばどうするか。
そうだ。
軍隊の再構成だ。
俺は今後のことについて司令と話し合いたいと思った。