いい子になります
「 今回は判決を下すのは、お前たちには荷が重いかも知れん 」
「 神様、今回はお子さんですよね 短い生涯を閉じようとする何か訳ありみたいですね… 」
「 女神よ、オレは苦手だ。ガキはお前に任せる 」
「 死神さん、以前あなたが判決を下した、外道さん覚えていますか? 」
「 忘れるわけねぇーだろ、あのサイコヤローを地獄に送った奴だろ? 」
「 そうです、あの案件に少し似てます 」
「 えーっと、今度は… 天子大輝4歳…、何だよ!ガキと言っても、まだ言葉を覚えてるかどうかの、赤子じゃねぇか! 」
「 あのサイコヤローと全然違うじゃないか! 」
「 死神さん、今の現世、この歳で短い生涯を閉じる理由は、分かりますか? 」
「 0歳から5歳の死因は、自殺はまず有り得ないな 日本という国は紛争で亡くなることもない 」
「 大体、産まれ持った病気か、不慮の事故か・・・・」
「 ?! ・・・・ま・・まさか! 」
「 そうです 現世では最近増えてきているのです 」
「 神様の言うとおり、今回は難しそうだな 」
「 神様、死神さん、今度は私女神にお任せください 」
「 お腹がすいたよ・・・」
「 暗いよ・・・ 」
「 寒いよ・・ 」
「 ここはどこなの? 」
いつ雪が降るか 分からない季節のことだった。
ここは薄汚れた物置き
4歳になったばかりの大暉くんは
ここは何処なんて、分かることは無い。
大暉くんはここから出たことがない。
なぜなら、物心ついた時から一人でここにいるからである。
ここの部屋にあるのは、
ガラクタと 小さな小窓。
幼稚園時で使う、古ぼけた言葉の教科書。
そして、紙と鉛筆。
小窓からわずかに 漏れる外の明かりを頼りに、
毎日 紙に書いて 言葉を勉強していた。
そして、外が暗くなる頃、母親が食事を持ってくる。
牛乳と菓子パン一個
そして、
「 大暉!また、オシッコ漏らしたわね! 」
「 なんて悪い子だろうね! 」
「 バケツにするって教えたでしょ!何度言ったらわかるの 」
母親は決まって怒鳴る、蹴る、殴る。
「 痛いよ・・・ママ・・次はいい子にするから 許して・・ 」
決まってこの時間、
何かと無理難題を言い、
母親のストレスの発散するように、
日常的に虐待していた。
食事は1日一回の菓子パンだけ。
4歳児の平均体重は15〜17キロと言われるが、
大暉くんは10キロ以下まで、痩せていた。
身体はアザだらけ。
大暉くんはすっかり衰弱しきった体で、
鉛筆を片手に、言葉の勉強をしていた。
何を書いているんだろう?
夏は熱中症にならなかったのだろうか?
冬は風邪ひかなかったのだろうか?
大暉くんはどんな気持ちなのだろう?
母親を憎んでいるのか?
誰かに助けて欲しいのか?
普通の子供さんだったら、
力尽きているはず。
外も出たこともない
他の人は見たことがない
幼すぎる大暉くん
大人の理解をとっくに超えていた。
やがて、毎日決まった時間に母親が来てたが、
一日置き、1週間に一回と、やがて来なくなった。
寒い季節も去り、外は暖かくなるときのこと
「 ママ・・眠いよ・・・眠いよ・・ 」
「 逢いたいよ・・・・・ 」
「 ママ・・・ごめんなさい・・・いい子になれなくて・・・ 」
そして、
鉛筆を握ったまま、大暉くんは深い眠りについた
「 ・・・・ 」
「 ?! 」
「 神界へようこそ、貴方が天子大輝くんですね 」
「 あれ?ここはどこなの?おねーさんは誰? 」
「 私は 女神です 」
「 めがみ? 神様なの? 」
「 ママは? ママはじゃないの? 」
「 大輝くん、母親から散々痛い目にあっても会いたいのですか? 」
「 ボクが悪いことがしたから、怒られたんだもん 」
「 ママに会えないの? 」
「 貴方は、4歳まで何一つ罪を犯しておりません 」
「 つまり、悪いことなんてやっていません 」
「 おねーさん!神様なんでしょ? 」
「 絵本で見たことあるんだよ、いつも神様はボク達のことを見てるって 」
「 ボクが悪いことしてないんだったら、ママのところへ連れてってよ 」
「 大輝くんは母親のところに行ったところで、残念ながらいいことありません 」
「 天国行きの判決を言い渡します 」
「 いやだ!! どんなにつらくても、ママがいない天国なんて地獄と一緒だ 」
大輝くんが望む、散々虐待された母親のそばにいたいみたいだ。
少し困った女神は、天国を下そうとしている。
確かに、女神の言っている通り、仮に続生・大輝くんがこのまま生き続け母親と一緒にしても、また虐待されるのは火を見るより明らかだ。
女神は、大輝くんにどんな判決を下す?