裁かれる外道人
ここは某拘置所。
そこに一人の男がが収監されていた。
男の名は、死刑囚 「 外道 要磨 」
男は殺人、暴行、窃盗と、数多くの罪を犯し、
もちろん 反省の色などなく2か月前、死刑の判決を下された。
大体の死刑囚は、いつ執行されるのか、
何とも言えない死のプレッシャーが襲いかかると言われる。
比較的、刑務所と違って死刑囚が収監される拘置所は、
三畳ほどの独房、生活の自由がきく所ではあるが、
ほとんどの囚人は何もせず、ただ入り乱れるのが自然と言われる。
だが、今回の主人公 外道は、
拘置所では冷静で何もせず、正座で執行されるのを待っている。
そして、月曜日 午前10時のこと、遠くから足音が聞こえた。
「 コツ・・・・・コツ・・・・コツ・・ 」
この足音はだんだん大きくなる。
囚人にとって、この音が計り知れない恐怖に包まれる。
そう、看守の足音だ。
「 コツ・・コツ・・コツ・ ピタッ 」
外道の独房の前では言い放った。
「 外道 要磨、出房だ 煙草を吸わしてやろう 」
言い放ったのは看守。
看守の後ろには警備隊二名。
??
煙草?
そう、死刑執行の宣告だ。
他の囚人に動揺を防ぐため、執行と言わないといわれる。
でも、何年もいる囚人は意外にもよく知っている。
外道はその時も冷静で黙ったまま、
看守たちに連れてかれ、独居房を後にした。
エレベータで地下まで乗せられたあと、
初めに連れてかれたところは、教誨室。
ここには奥には祭壇と、テーブルと椅子が二つと、小奇麗な部屋だった。
そこには居たのは所長と教誨師、
精神を安定させるためいつも接していたから、顔はよく知っている。
そこで初めて、所長の口から死刑執行を宣告される。
その時、宣告を受けた囚人は、腰を抜かし立てなくなる者、
暴れ出し抵抗する者と様々と言われる。
そこでも、外道は冷静に、祭壇のお供え物を食べていた。
煙草を吸うことも許される。
そして、教誨師は
「 祭壇に祈りをささげてくささげてください 」
言われるがま、外道は両手を合わせ、祭壇に祈った。
そして、所長から、
「 最後に言いたいことはありますか? 」
外道は静かに、顔を横に振った。
そして、別室で数名の看守に囲まれ、
体の前で手錠をかけられ、アイマスクをかけられる。
視界を奪はれた外道。
さっきまで冷静沈着だったのが一変、
「 やめてくれー!! 殺さないでくれ !!」
狂ったように叫び暴れだした。
すべて見えなくなった外道は、
初めて死の恐怖を実感したんだろう。
数名の看守に取り押され、強引に四方の踏み板に乗せられる。
そして、両足を縛られ、最後に外道の首にロープを掛けられる。
「 殺さないでくれ!!!助けてくれ!! 」
カーテンに仕切られた執行室、外道の声だけが響き渡った。
数名の看守が別室に行き、一人になり体の自由を奪われた外道、
死のカウントダウンが始まる。
いつ四方の踏み板が開くのか、分からない恐怖が電光石火に頭によぎる。
別室にいる三人の看守が死のボタンを押すスタンバイが出来た。
あとは看守の責任者の合図を待つのみ。
「 死にたくねー!! 助けてくれ!! 」
そして、看守の責任者は静かに三人の看守に合図を告げ、
三つのボタンのうち、四方の踏み板が開くのは一つのボタンだけ。
一斉に三つのボタンを押された。
踏み板が開いた瞬間、外道の声は静まり返った。
最後まで、外道要磨は、反省の言葉を口にすることはなかった。
「 死神さん、今日の裁かれ人はかなり罪深い人間が来るみたいですよ 」
「 ああ、久しぶりに地獄を案内できる奴が、来るみたいだな 」
ここは死を迎えようとする生きモノすべて、この神界に来ることになる。
そこに、奥から一人の男がやってくる。
「 オーイ、ここは何処だよ!誰か居るのか? 」
「 フッ!早速来たなな、今度の裁かれ人はは生きが良さそうだな 」
「 今日は、オレが案内しよう 」
「 待ってください 死神さん、ここは私に任せてください 」
「 おっ、珍しいな女神が先にでるなんてよ 」
男は大声で叫ぶ
「 オーイ!! オレは死んだのか? 」
「 ようこそ神界へ、お待ちしておりました 」
「 貴方が裁かれ人、外道 要磨さんですね 」
「 おおおっ!綺麗なネーチャンじゃん 」
「 オレの名前まで知ってるなんて、ここは天国か? 」
「 残念ですが、ここは天国ではありません 」
「 地獄か続生か、そして転生行きか、貴方はここで裁かれるんです 」
「 ぞくせいとか、てんせいか知らんが、何で天国がねえーんだよ 」
「 貴方は、現世でかなりの罪を犯しているの知っています 」
「 今回も天国行きは、まず無いでしょう 」
「 お前さんは現世で数多くの大罪を犯し、死刑でここに来ているな 」
「 なんだ?くそジジィ!いきなり出てきやがって、偉そうに 」
死神が持っている杖で、妖しい光を裁かれ人 外道に放った。
「 ギャヤァァァーーー!! 」
「 口を慎めよ、外道悪魔・・いや、外道要磨とやらよ 」
「 そう、ワシは偉そうじゃない、一番偉い神様だ 」
裁かれ人 外道は
「 アチアチ・・、神様だと? ふざけんな馬鹿野郎! 」
「 まあよい、下界人は信じられないのも無理はない 」
「 これから、嫌でも神々の存在を知ることになる 」
女神は珍しく怖そうな表情で、問いかける。
「 貴方は、下界で殺人罪、強制わいせつ罪、窃盗罪の罪で死刑を言い渡されていますね 」
「 しかも、働きもせず、数多くの計画性のない窃盗を犯し、見つかり次第、人を悪戯に殺し、相手が女性だとあくどい暴行し殺人を犯しています 」
ふてぶてしい態度で、外道は笑いながら、
「 そうだよ、死刑になりオレは罪は償ったじゃねえか、地獄なんて行くことなんてねぇーんだよ」」
「 貴方が死刑になっても、被害者の心は永遠に傷は癒えることはありません 」
「 ここで、更なる厳しい裁きを受けることになります 」
全くの反省の色もない 神にたてつく裁かれ人、外道は何を望むのか。
神様、死神、女神、三人の心は完全に「地獄」の判決以外頭になかった。
そして、神様は言う。
「 お前さんは、下界で三つの大罪で、死刑を下されているか、他に余罪はなかったのか? 」
「 答え方次第で、判決を下そう 」
「 余罪なんて、あるわけないじゃん 」
「 ふふふっ、神を舐めたらいかんよ、余罪を正直に答えたら、地獄行きを見送ろうと考えていたんじゃがな 」
死神は
「 この外道は罪が多すぎて覚えていないだろ、まあ言えたところで天国行きなんて有り得ないけどな 」
「 いいじゃろう、お前さんの本当の罪状を言ってやろう 」
「 裁かれ人 外道要磨 51歳 」
「 0歳から10歳まで、 微罪 2件、小罪 2件、中罪 4件 」
「 10歳から20歳まで、 微罪 16件、小罪 38件、中罪 89件、大罪 2件 」
「 20歳から30歳まで 微罪 30件、小罪 45件、中罪 71件 大罪 5件 」
「 30歳から40歳まで、 微罪 102件 小罪 43件 中罪 73件 大罪 4件 」
「 40歳から51歳まで、 微罪 120件 小罪 53件、中罪 90件 大罪 4件 」
「 合計 微罪 260件、小罪 181件、中罪 327件、大罪 15件 」
すると、外道は神様に声を荒げた
「 おいおい、待てよ!適当な数字言ってじゃねーぞ!コラ! 」
「 適当かどうか、それぞれの罪状の詳細を教えてやる 」
「 大罪 15件の詳細は 14歳の時に弱い者をいじめ、自殺に追い込む 16歳に強制わいせつ罪で捕まり、25歳で結婚し子供が生まれ、幼児虐待で逮捕、その後奥さんである女性も殺人・・」
「 わかったよ!!そこまで知っていたとはな、さすが神だな 」
死神は
「 神様は半分も読んでないぜ、それにしても、こんなに余罪があるとは鬼畜以外何者でもねえな 」
「 下界では隠し通した罪でも、ここじゃ通用しないってことだよ 」
「 ちょっと待てよ、さっき言ってた、天国と地獄以外にも、てんせいとか、ぞくせいって、いったいなんだよ 」
「 続生・・つまり生きることを許されることだが、お前さんは生き続けることはまずない 」
「 自然死と、下界で裁かれた死刑は 神のチカラを持ったとしても生きることはできない 」
「 神の爺さんよう、人間が、生き返ることなんて出来るのか? 」
「 そうじゃない、生きモノすべては死を直面した時、気を失っている状態になる 」
「 その時下界の時間はゆっくり流れ、この間 生きモノも魂はここ神界に来ることになるんじゃ 」
「 人間の他、生きモノすべてここに来るのか・・、ゴキブリもここで裁かれるの想像すると、気味が悪いな 」
「 それじゃ、オレは今気を失っているんだったら、生きているということじゃないか! 」
「 さっきも言ったじゃろ?下界で死刑を裁かれた人間は生き続けることは不可能じゃ 」
「 ここ最近の日本の制度は、死を確認されるまで死刑執行される 」
「 おいおい、神とか名乗ってる割には何にも知らねえんだな 」
「 看守が死を確認するのは二回、それでも生きていたら、戸籍、名前も変えてい無罪放免されるんだよ 」
「 それじゃ聞くが、日本のここ50年、死刑囚が無罪放免になった人間はいるのか? 」
「 ・・・・ 」
「 お前さんの聞いたのは表向きの話じゃ、下界の時間であと5分で死ぬことになる 」
「 ということは、地獄行きか、さっき正直に余罪を認めれば、転生だけじゃ 」
「 神の爺さん!せめて、転生というやつにしてくれよ! 」
「 お前さんの選択の余地はない 」
「 強制労働なんて、やりたくねぇよ 」
「 安心せい、今の地獄は強制労働もなければ、看守もいない 何もしなくていいんじゃ 」
「 よかった、オレは働いたことなんてあまりないからな 」
そして、神様はあっさりと判決を下す
「 裁かれ人、外道要磨よ、お前さんを地獄行きをいいわたす 」
「 死神、女神よ、いつもどおり 地獄に案内してくれ 」
こうして裁かれ人 外道は地獄行きが確定した。
地獄行きは他と違い、地獄の案内人死神と、女神、二人の神が地獄に導かれる。
天国の案内人、女神がなぜ地獄を?
そして、待ち受ける地獄とは?