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最高の青春を求めて  作者: アニ野祭 ナリハル
第1章 【儚き思い出とともに】
9/25

(9)その想いは儚く…

卒業式で主人公、大沢文人(おおさわふみと)はドジを踏むことになる。

その際に元カノの高山茜(たかやまあかね)と共に気になっていた小花夏蓮(おばなかれん)

そんな夏蓮と文人の間には、とある出来事があった。

茜の親友である長澤結香(ながさわゆか)叱責(しっせき)された、文人はその出来事を思い出し、新たな決心をすることとなる。

(茜より幸せになってみなか…でも俺に幸せなんて…)

 

 結香に言われて改めて考えだす文人。


(幸せ…幸せと言えばあの時はものすごく、幸せだったなぁ…)


 文人はある記憶を思い出す。


とある、ある日の放課後。


文人は、公園のベンチでうなだれていた。


 (茜…)


〈スタ、スタ、スタ〉


そんな文人の前に近づく微かな足音。


「大沢君?今日は1人?高山さんとは一緒じゃないの?」

 

 と声をかけてきたのは、文人が入学時から憧れていた学園屈指の美少女。


 小花夏蓮(おばなかれん)

 

「小花さん!?」


 とビックリして顔を上げる文人。


 「えっ?私そんなにビックリさせちゃった?急に声かけちゃってごめんなさい。」


 「いやいや!考え事してたから少し驚いただけ!全然大丈夫だからそんなに謝らないで」


 「少し横に座ってもいいですか?」


「えっ!?」


 と夏蓮の思いもやらなかった発言に再び驚きながらも、慌ててベンチの端により夏蓮の場所を空ける文人。


 「どうぞ、どうぞ」


「失礼します」


 照れ笑いを浮かべながら文人の横に座る夏蓮。


「えっと、小花さんが公園に来るとか珍しいよね?」


 と、話し下手(べた)な文人は必死に質問を考え夏蓮に聞いた。


「たまには、こういうところに来たいなぁって思って。

 私が公園で遊ぶとかって変かな?」


「全然変じゃないよ!むしろ小花さんが公園に来るって何か新鮮で凄くいいと思う!」


「それならよかった!あとね、大沢くんと1度話したいなぁって思ってたんだけど、なかなか話す機会がなくて…

で、部活が終わって帰る途中で、大沢くんが珍しく1人で居たのを見掛けたから話し掛けようって思って、話し掛けたんだけど迷惑じゃなかったかなぁ?」


「全然!迷惑じゃない!むしろ、小花さんから話し掛けてくれるなんて光栄だよ」


「そう言ってくれてよかった!でも、光栄ってのは言いすぎだよ。私はそんなに大した人間じゃないから」


「そんな事ないよ!演劇部での人気も凄いし学園で知らない人も居ないぐらいで、俺も憧れている人の一人だから」


「人気があるのか知らないけど、私の演じたいように演じたら周りが勝手に騒いでいるだけ。それより、大沢くんが私のこと憧れてるって本当!?」


 「もちろん!」

 

「大沢くんにそう言ってもらえるなんて嬉しいなぁ」


「逆に小花さんのことを憧れていない人間なんて居ないと思うよ」


 「そうかなぁ?私、みんなから応援されたりしてくれるのも嬉しいんだけど…

それよりも、私が想ってる人が私のことを応援してくれるのが一番かなって…

大沢くんってさ、私のこと…」


〈スタスタスタ〉


 と、二人が会話をしていると…

 小さな足音ともに、公園で遊んでいた一人の少女が近付いてきた。


「お兄ちゃん達、二人で何してるの?もしかして恋人?」


「そ、そんな恋人とかじゃないよ!少しお話ししてただけだよ」


 と、少女の唐突(とうとつ)な質問に慌てて返す文人。


 「めっちゃ焦ってるじゃん!怪しい~」


 文人の慌てた表情を見て少女は言う。


「文人くん!嘘をついても女の子には隠せないよ!」


 「えっ!?」


夏蓮が少女の発言に合わせようとし、突然文人の事を名前で呼んできたので驚く文人。


「やっぱり嘘なんだ~お兄ちゃんたち、お似合いだもん」


「お似合いって…俺と小花さんは恋人とかそういう関係じゃないから!」


「えっ~お兄ちゃんたち、恋人じゃないの?私の予想は外れたことないのに…

こんなにお似合いな二人なのに…」

 

 と今にも泣き出しそうな表情をする少女。


「えっ!?私たちって恋人じゃなかったの?文人君??」


 そんな少女を見るに見かねた夏蓮は少女の話しに合わせる事にした。


「えっ!?小花さん!??」


「文人君!私たち、付き合ってるよね!」


と言って文人の手を繋いで少女に見せる夏蓮。


 「お、小花さん!!??」


焦る文人に対して、話を合わせてと言わんばかりにウインクをする夏蓮。


 「お兄ちゃん~どうなの?お姉ちゃんと付き合ってるの?」


「そ、そうだよ!おれとおばなさんはつきあってるよー」

 

 と演技力のない文人はぎこちなく夏蓮に合わせる。

 

「やっぱり!私の目に(くる)いはなかったね!」

 

 と喜ぶ少女。


「そろそろ帰るわよ~!」

 

 と少し離れた所から少女のお母さんらしき人の声がした。


「ほら、向こうでお母さんが呼んでるよ」

 

 と夏蓮は少女に伝える。


「もう帰らなくちゃ!お兄ちゃん達!末永く幸せにね!!」


 と言い残し慌ただしく去っていく少女。


再び、二人きりになった文人たち。


「やっぱり、小花さんの演技力は凄いね~俺なんか全然だったけど何とか、やり過ごせてよかった」

 

 と笑いながら言う文人。


「ごめんね。突然名前で呼んだり手まで握ったりしちゃって…」


 申し訳なさそうに話す夏蓮。


「全然!女の子の前で夢は壊せないもんね」

 

「でも、やり過ぎたかも…こんなことしてたら、高山さんに怒られるかもね。ところで今日は大沢くんは、高山さんと一緒じゃないんだね?一人で居るって珍しいね」


 「うん…


 …今日さ、茜と別れたんだ。


 だから怒られる心配はないよ…」

 

 と声を絞り出すように言う文人。


「えっ…


 どうして…?


 あんなに仲良かったのに…」


 夏蓮は驚きを隠せない表情で答える。


「俺より一緒に居たい人が出来たみたい。仕方ないよ。」


 「それで大沢君は納得してるの?」


「あのままの状態でいるよりはこれで良かったと思ってる」


「そうか…

 

 だったら高山さんより一緒に居たいと思える人をみつけないとね!

 大沢君ならすぐに見つかるよ!」


 「うん…

 …でもなかなかそう簡単にはね…」


 「そうだよね…

 

 そんな簡単なものでもないよね…


 軽はずみなこと言ってごめんなさい。

 実は私もね…

 

 …好きな人が居るんだけどね、なかなかその人に想いを伝えられないの…」


「好きな人居るんだ!?

 小花さんの好きな人なら素敵な人なんだろうなぁ~」


 余裕を見せて返す文人であるが、憧れの存在である、夏蓮に好きな人がいると聞いて内心焦っていた。


「うん。とっても素敵な人…

 あまり話す機会がないからいつも教室で眺めてるの」


「教室!?ってことは同じクラスなんだ?」


 と、夏蓮の好きな人が誰なのか気になる文人は積極的に質問をしていく。


 「うん」


「そんな近くに好きな人が居るなら、思いきってその人に想いを伝えてみたら?」


その時の文人は、フラれた自分なんかに声を掛けてくれた、心の優しい夏蓮の想いが実って欲しいと心から思っていた。

 

 「そんなのムリムリ!

 私の好きな人は彼女が居たから…


 …伝えるなんて」

 

「でも、高校を卒業したら想いは伝えられなくなるよ…


 俺も、こうしておけば良かったなぁって思うときもあるし…

 

 その人に彼女が居たとしても、後悔しないように想いだけでも伝えたほうが良いって俺は思うよ!」


「やっぱり…

 

 そうだよね…

 

 …じゃあ」


 と立ち上がり文人の方を向く夏蓮。



 「大沢くん!!私と付き合って下さい!!!!」



突然、大きな声で言い放つ夏蓮。




 「えっ…!!!????」




 突然の告白に頭が真っ白になり、呆然と固まる文人。

固まるのも当然だ。

 学校の男子生徒全員が見とれてしまうルックスを持ち、文人も何度もこういう彼女と付き合いたいと思っていたが、縁もなく遠い存在だった理想の女の子。

小花夏蓮が茜と別れ話をしたばかりの自分に付き合って下さいと言っているのだから。



「‥‥‥」




 しばらく、沈黙の時が続く。



 そして…


「ま、また演技でもしてるの?もう女の子は見てないよ!」


 と焦りを隠そうとはぐらかしてしまう文人。


 「そ、そう!

 れ、れんしゅう!

 今のは好きな人に言うための練習!!」


 こちらも焦りながら言う夏蓮。

 この時の夏蓮は演劇部の演技とは程遠かった。


それを聞いた文人は、ようやく正気を取り戻す。


「そ、そっか!演劇部だから演技が上手すぎて、練習か本気なのか分からなくてドキッてした~」


「そ、そう!?何かごめんね。

 これなら好きな人に伝えるときも気持ちが伝わるよね!?」

 

 と、まだ若干焦りを隠しきれずに話す夏蓮。


 「絶対好きな人に伝わるよ!小花さんなら」


 (はぁ…まぁ俺な訳ないよな)

 

 自分に対してではなかった為に少し残念な気持ちになる文人。


すると…


 「わ、わたし、そろそろ帰らないと!」


慌ただしく立ち上がる夏蓮。


 「今日は一緒に話せて良かった!小花さんの恋が実るのを祈ってる!」

 

 そんな夏蓮に対してエールを送る文人。


 

 「…実らしたかったなぁ」


 文人の言葉を聞いた夏蓮は静かに呟いた。


「うん?」


 微かに聞こえた夏蓮の声に反応する文人。


 「ううん、何でもないよ!私も大沢くんと話せて、しかも一緒にお芝居も出来て楽しかった!!また機会があったら話そうね!」

 

 こう言葉を残し夏蓮は公園から去っていった。


その後は、お互い話し掛けていくような性格でもなく、話す機会もなかったために、夏蓮とは挨拶程度しか話せず、会話らしい会話はほとんど出来ずに卒業式を迎えていた。


夏蓮とそんなやり取りをした時の、記憶を思い出した文人は空き教室を出て歩きだす。


(あれ以来、小花さんとはちゃんと話せてないなぁ…


あの時は本当に幸せな時間だった…


告白があのまま俺に向けてだったら、今は違ってたのに…


いや…


 もしかして、あの告白は俺に向けてだったんじゃ…?


あんなに焦って帰ったし、あの時、茶化さずにちゃんと返事をしていれば…


 ってまさかね…

 

 なら、俺じゃないとしたら好きな人って誰だったんだろう?

同じクラスって言ってたけど…

 

 その人への恋は実ったのかなぁ?

てか、さっきはカッコ悪いところ見られたなぁ…)

 

 と悶々(もんもん)と考えながら正門付近まで来た所で足を止めた。


(もう高校生活も終わりか…


 もう一度…


 小花さんと話したいなぁ…)


正門付近まで辿り着き、正門を通れば文人の高校生活は幕を閉じる。

 そんな中で生まれた1つの後悔だった。


さらに…

 

 [もう卒業したんだし、これからは逃げないで何でもぶつかっていくように生きてみなよ。

それで、大沢も茜といるより幸せだと思える相手を作って、茜より幸せになって私たちを見返してみなよ!]


[大沢もこれで変わってみせてよね!!]


 と結香が発した言葉が、文人の頭の中を駆け巡る。


(長澤も言ってたよな…


 何でもぶつかっていくようにって。

あの時は本当に幸せだと思った。

茜といるより幸せを感じた気がしたし…。

俺は変わらないと…)


そして、文人は…


(もう一度、小花さんに会って話をしよう!

 話をして、あの時に誰が好きだったのか。

 その恋がどうなったのかを聞こう。

 そして、あの時、自分が感じた…

 小花さんと一緒に居て幸せだったということを伝えて、もし俺に告白をしてたなら、ちゃんとその返事をしよう!!)


 ようやく強い決心をする。


そんな文人が、卒業式終わりで帰宅途中の多くの生徒などで溢れかえっていた中から、とある女性を発見する。


「中城さん!」


文人は、滅多に出さない大声で叫び、大勢の人混みをかき分けながら雪菜のもとへ急いで向かう。


文人が大声で叫んだ相手とは…


 中城雪菜(ちゅうじょうせつな)


現在は大学に通うも、去年までは夏蓮の演劇部の先輩であった。

 その為か、夏蓮と一緒に居ることが多く、学年が違っていたが夏蓮の一番の親友でもあった。

さらに、雪菜も学年の中でトップクラスの美少女だった為に、二人の事を【学園の美人姉妹】と皆が呼んでいたほどだった。


おそらく今日は、親友の夏蓮の卒業式を見に来たに違いない。

 夏蓮もそんな雪菜の近くに居るのではないかと、文人は思いきって声をかけたのだ。


息を少し切らせながらも、人混みをかき分けようやく雪菜の姿が見えてきた。

周りには、演劇部の後輩であろう多くの女子生徒が居たが、その中でもひときわ目立ち、長い黒髪に名前のとおりの雪のような白い肌、さらに、色っぽい体つきの雪菜が立っていた。


(これは人混みの中でも見つけられるよな…)


 と文人は思いつつ、当然のように見とれていた。


「君って確か、夏蓮と同じクラスの…」


 雪菜が文人の姿に気づいた。


 「はぁ、はい!小花さんと…同じクラスの…大沢文人と言います…!」

 

 と息を切らしながらも勢いよく言う文人。

 そんな文人の姿を見て雪菜がこう言った。


 「そんなに急いでどうしたの?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ」


 息を整える文人。

 

「あの!小花さんを見掛けなかったですか?」


 と文人は問う。


「夏蓮ならついさっき、帰ったところだけど…」


「そうですか、じゃあまだ近くに居ますよね?

 呼び掛けてすいません!

 ありがとうございます!」


 と言って、慌てて追いかけようとする文人。


そんな文人を呼び止めるように雪菜が言った。


 「大沢君!夏蓮に用事があるなら私が伝えるよ」


「大丈夫です!高校生活が終わる前に直接もう一度、小花さんと話して伝えたいことがあるので!」


 と言い放つと文人はまた走りだした。


そんな文人の背中を見ながら雪菜はこう呟く。


 「大沢君…もう…」



 正門を出て夏蓮がいつも帰る方向に走って行く文人。

少し走り続けていると、首もと付近までの髪を揺らしながら歩き、スリムで細い手足をした、夏蓮らしき後ろ姿が見えてきた。

と、同時にもう1人、夏蓮の隣に人影が見えてくる。


文人は足を止めた…。



 「どうして、二人が一緒に…」



そう(つぶや)く文人の目に映っていたのは夏蓮と隣り合って歩く裕二の姿だった。


 そんな二人を眺め呆然(ぼうぜん)と立ち尽くす文人には、春になりかけの冷たい風が容赦なく襲うのであった。

 【予告】

 大きな決心をして、夏蓮の元に向かった文人の目に映ったのは、現在、唯一の親友である裕二と夏蓮が寄り添いながら歩いてたという衝撃の光景だった。

全く予想もしていなかった光景を見てしまい、大混乱をする文人。

そんな文人を校門前で待ち構えていたのは…


 次回【(10)現実逃避と後悔する事実】

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