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最高の青春を求めて  作者: アニ野祭 ナリハル
第1章 【儚き思い出とともに】
7/25

(7)最後のホームルーム

 【前回までのお話し】


 卒業式でドジを踏み恥をかいてしまった主人公。

 

 大沢文人(おおさわふみと)

 

 そんな文人の姿を見て大笑いをする文人の元カノ。

 

 高山茜(たかやまあかね)


 さらに、文人が入学以来憧れ続けている美少女。


 小花夏蓮(おばなかれん)


 あまり人と絡むのが好きではないが、文人とは友人関係である。


 土村裕二(つちむらゆうじ)


 そんな4人の前に高校生活最後のホームルームが始まろうとしていた。

 教室に着き、足早に自分の席に座る文人。

 窓側の一番後ろの席だ。

 

 いつものように、校庭を眺める文人。

 窓が少し開いており、3階の文人の教室には春になりかけている、心地よい風が教室に吹き抜けていた。


 そんな、文人の後を追うように、裕二が文人のすぐ前の席に座る。

 その直後に、裕二が文人のほうへ振り返り話し掛けてきた。


 「お前が校庭を眺めるのも今日で最後だな」


 「そうだな。

 やっと校庭を眺めなくて済むようになるよ」


 そう話している二人の声をかき消すように、隣の列から茜の声が聞こえてきた。


 「ねぇ、卒業式が終わったら私に第2ボタンくれない?」


 「はぁっ?卒業式に第2ボタンって古いだろ。今はネクタイとかじゃない?」


 そう言って茜の発言を返す男の名は…



 相馬陸(そうまりく)


 

 文人の元親友であり、茜の現在付き合っている人物である。


 「確かに学ランならともかく、ブレザーで、ボタンをもらうのはおかしいか。

 じゃあネクタイでいいよ!」


 「じゃあって…まぁこんなものでいいならいくらでもやるよ」


 (本当だったら俺が茜にネクタイを渡してたのかなぁ…)


 横から聞こえてくる茜と陸のやり取りに対して、文人はこう思った。

 続けて茜と陸のやり取りが続く。


 「今日も親は仕事だし終わったら私の家に来てよ!」


 「またか。てか親は卒業式に来てただろ!」


 「卒業式が終わってから仕事に行くんだって~だからさぁ~」


 「俺だって卒業した日ぐらいは、家で家族とゆっくり過ごしたいって」


 「えー、自分だけ家族と過ごして、私は1人で家にいろって言うの?」


 (茜は寂しがりやだからなぁ…)


 文人は二人の会話を意識しないように校庭を眺めていたのだが、あまり効果もなく茜たちの会話を気にしていた。


 「分かったよ。じゃあいつもの時間に行くよ」


 (結局行くのかよ?てかいつも行ってるんだ…

 茜の家で二人っきりでいつも何してるんかな…??

 あ~早く松ちゃん来ないかなぁ~)


 と、文人がいつものようにヤキモキしながら考えていた時だった。


 〈ガラガラー〉


 扉が開く音がした。



 「はい、みんな座って!最後ぐらいキッチリするわよ!」


 と、言いながら教室に入ってきたのが…


 松木佳菜子(まつきかなこ)


 文人が2年生の時に赴任してきて、3年生になり担任になった国語の教師。

 性格は大雑把だが、生徒への想いが強い為、生徒からの信頼が厚く、文人もお気に入りの先生であった。


 「松木!彼氏出来た?卒業式までに作るって言ってたよな?

 早く作らないと、おばちゃんになっちゃうぞ!」


 と言うのはクラスのお調子者…


 金田健(かねだたける)


 「うるさい!お前に言われなくても分かってるし~

 てか、おばちゃんって誰のことだ?

 私はまだピッチピチの29歳だからな!」


 「いやいや!29ってピッチピチじゃないから!

 私らは10歳も下の18だし!」


 と、反論する松木先生に対して茜がするどく突っ込みを入れる。


 「高山~最後ぐらいピッチピチで通さしてくれよ~」


 「いや、最後とか関係なくピッチピチではないから」


 「冷たいなぁ~そんな事言ってたら男が逃げていくぞ!」


 「佳菜ちゃんには言われたくないって!

 私の事より自分の心配をしなよ!」


 「はい、はーい。来年こそはイケメンをゲッチュしてみせるからね!」


 「はいはい、頑張って下さいね」


 と、こんな感じに茜と松木先生のいつものやり取りが続いた。


 (もう、この松ちゃんと茜とのやり取りも聞き納めか…)


 と、二人の話を聞きながらも校庭を眺め続ける文人。


 「相変わらずだなぁー

 この騒がしいのも今日で最後だと思うと、清々(せいせい)するなぁ」


 裕二がボソッと文人に対して言った。


 「そうだなぁ。今日で最後なんだよなぁ…」


 このとき、高校を卒業したら茜と全く会わなくなる事に対し、嬉しいような、切ないような、複雑な気持ちが入り交じっている状態の文人だった。

 その後、松木先生の進行によりホームルームが始まり、瞬く間に終わりへと差し掛かっていた。


 「と、言うわけでホームルームは、ほぼ終了なんだけど…

 

 最後に先生から一言いわせて!

 今日で、ここにいるみんなは離ればなれになる。

 けど、みんなが過ごした3年間の思い出は、私も含めてみんなの心の中に残るから!

 同じ思い出が残ってるってことは、みんなが離ればなれになっても、みんなが繋がってる証しだと私は思う。

 この先、苦しい事や、どうしようもない壁にぶち当たることは、もちろんあると思う。

 もしその時が来たら、ここにいるみんなや、このみんなとの大切な思い出を思い出してみて。

 きっと、どんなことでも乗り越えられる勇気が湧いてくるはずだから!」



 「良いこと言ってるけど、一言にまとめれてないぞー」


 気持ちの入った松木先生の言葉に対し、金田がさりげなく突っ込みをいれる。

 そんな突っ込みをした金田に対して。


 「だって…最後にみんなへ伝えるのに…


 一言ではまとめれなかったの!

 私は…みんなと過ごしたのは2年間だけだったけど…

 

 みんなのおかげでいい時間を過ごせました…


 本当にありがとうね~!」


 と、今にも泣き出しそうなのをこらえ、必死に笑顔を作り、言葉を絞り出す松木先生。

 そんな松木先生の、みんなへ向けた最後の言葉に、泣き出す生徒も見られるなか最後のホームルームが終わりを告げた。

 【予告】

 ホームルームが終わり、文人の高校生活が終わろうとしていた。

 文人は、松木先生がみんなへ送った言葉が心に引っ掛り、教室から動けないでいた。

 そんな文人に、声を掛けてくる一人の人物がいるのであった。

 

 次回【(8)終わり行く高校生活の中で】

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