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海の渾沌

作者: 増永朱夏

 夕べ、ふと海を眺めていると、薄絹のようなしわを生成する海に対し、まるで異界を目の当たりにしているかのような感覚を抱いた。どこまでも円滑で際限のない流れは、形を持たぬ渾沌そのものであった。時々一人の少年が道端の小石をもって、その形なき渾沌を穿たんと試みた。ほんの一瞬、限りなき渾沌に一つの穴が開いたかと思うと、たちまち渾沌はその石と穴を飲み込んだ。

・・・・・・・この甘美なる滑らかさを持った渾沌は、島という名の秩序の間に存在している。人は言葉によって自らが住む陸地のあらゆるものにラベルを張り、形を与え、コスモスを作り出しているが、海は人間の秩序をなさんとする欲望を打ち壊すための最後の番人と化している。島を越えてモノをや自らを対岸の島へと移動させるとき、その大いなる渾沌の表面を渡らねばならない。海は驚嘆するほどの柔らかさで船を包み、目的の島へ船を滑らせる時もあれば、鋭利な冷たさを持って船を揺さぶり、進行を阻むことがある。この海はコスモス以前から存在する原初の親であるが、また最後まで理解しえぬ自然である。そこから神を見出すのは不自然ではない。その渾沌は自らの祖であり、今でも自らの内にあるものであるから。

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