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6.二人に食事を振る舞ってあげました

「イシュナはここで暮らしているのか?」

「そうね……ここに来てから十日目位にはなるかしら。だいぶ長く住めてるわね」

「十日で長いって……もしかして定住していないのか?」

「そりゃできる訳ないでしょ? 奴らが私達を目の敵にして襲いかかってくるんだから。本当、いい迷惑よね」



 奴ら?

 姿は見ていないが、俺達を追いかけてくる奴らの事だろうか?



「誰が追いかけてくるんだ?」

「浄化神レーネの配下の奴らよ。奴らは神力がマイナスの生物を根絶やしにしようとしているの」



 根絶やしって……そりゃヒドイな。

 そこまでそいつらを駆り立てる何かがあるんだろうか?



「そんなに神力が少ないのって悪い事なのか?」

「確かに人を助けたり良い事をすると神力は上がると言われているわ。だからといって神力が少ないのが悪いという事にはならないわよね?」



 まあ、そうだよな。

 でないと神力マイナスカンストの俺は世界最凶の極悪人になってしまう。

 それはさすがにあんまりだ。



「そういえば二人ともだいぶお疲れのようね? 良かったらここで休んでいったら?」

「いいのか? お邪魔してしまって?」

「いいのよ。この世界じゃ休めるときに休んでおかないと大変なんだから。おかまいなく、どうぞ」



 どうやら本当に泊まっていってもいいらしい。

 ここは比較的安全そうだし、お言葉に甘えて休ませてもらうとするか。

 休む暇なくてさすがに疲れたわ。



 ぐ~~~



「なんだ、ネルム、腹が減ったのか?」

「うっ……そういえば断食九日目だったんでした。さすがにそろそろ限界かもしれません……」

「あら、大変!? でもあいにく私もあまり食料の蓄えがないのよね。どうしようかしら……」



 まあこんな逃げ回っている環境でまともに食料にありつけるわけないよな……

 逆にどうやって食べてきたのか気になるわ。

 ちょっと聞いてみるか。



「今まで何を食べてきたんだ、ネルムは?」

「えっと……九日前は確かオオカミの死骸の残骸を食べました。その時は三割ほどの肉が残っていてラッキーでしたよ!」



 あっ……

 悲惨な食生活を送ってきたんだな……うん。


 ちなみにイシュナは化学の力で急成長させた植物を育てて食べているらしい。

 何かそれも身体に悪そうだよな……



「二人とも、大変な生活送ってきたんだな……」

「そういうライク様はどんな物を食べてきたんですか?」

「えっと、そうだな……よく食べるのはエクレアだな。」

「えく、れあ……?」



 二人ともきょとんとしている。

 まあこの世界にないものなんだろうからそういう反応になるわな。



「ちょっと食べてみるか?」

「えっ、いいの? 貴重な食料なんでしょ?」

「いや、大丈夫だ。ちょっと待ってろ……。エア+(くれ)で”エクレア”!」



 するとエクレアが三つ出現したので、俺はそれらをすかさず取る! 

 そしてそれを二人に手渡した。



「これがエクレアだ。食べてみてくれ」

「何か何もない所から急に物が出てきたような気がするんだけど?」

「イシュナ、ライク様なら食べ物を生み出す位朝飯前なんですよ」

「そ、そうなの? 何だか信じられないわね……」



 不思議そうにエクレアを見つめるネルムとイシュナ。

 でもしばらくすると二人とも一口かじっていた。

 すると……



「えっ……!? 何この味!? こんなにちゃんとした味をした物を食べたのなんていつ以来なのかしら!?」

「ほ、本当ですよ! それにこんなに甘くておいしいもの食べたことないです!」



 そう言うと残ったエクレアをあっという間に二人は平らげた。



「エクレア美味かったか?」

「ええ、本当に! こんな美味しいものを食べてきたなんてライク様ずるいです!」

「こんなに美味しいものは人間の町でもそうそうないわよ……?」

「二人とも満足してくれたようで何よりだ」



 二人ともいつの間にか笑顔になっていた。

 うん、やっぱり美味しい食事っていいものだよな。



「何かほしいものとかあったら言ってくれ。戦闘はできないが、それ位の役には立てるだろう」

「本当ですか……!? だったら肉が食べたいです! にく!」

「私は……パンが食べたいわ!」

「二人とも食べ物かよ……こうなったらちゃんとした食事を出すからちょっと待ってろ!」



 俺は豚肉とニラを炒めたもの、パンとごはん、サラダ、スープなど色々と出現させた。

 もちろん食器もね。


 三人分の食事を出したのだが、みんなあっという間に平らげてしまった。



「これってライク様の世界で食べられている食事なのですか? 美味しすぎますよ!?」

「そうだな。俺も久しぶりに食べられて満足した」

「食べたことない味。でも今まで食べた中で一番美味しかったわ! ありがとう、ライク様!」



 うん、二人の役に立てたようで何よりだな。



「あれっ? そういえばライク様、ほんのちょっとだけ雰囲気が柔らかくなったような……?」

「多分神力が少しプラス方向に変化したのよ。良い事をすると神力が上がるから」



 へえ、そうなのか。

 実際に上がったのか説明書さんに教えてもらうか。



Q 神力は上がったのか?

A 神力は2上がりました。



 確かに神力が上がったようだな。

 といってもたったの2か。

 俺にとってはほんの誤差みたいなもんだな……

 神力が上がる効果はあまり俺には意味をなさないようだ。



 さて、食事をとった後は睡眠をとろう。



「ベッド+(ふかふか)で”ふかふかベッド”!」



 俺はバハムートサイズでも入れる巨大なベッドを出現させた。




「ライク様、ボクも一緒に寝ていいですか!?」

「別に構わないが、多分俺、寝相が悪いからつぶしちまっても知らないぞ?」

「えっ……いや、大丈夫です。ボクの方が神力が高いので、つぶされて死ぬことはないはずですから!」



 そういえばそうだったな。

 神力がこの世界で最も低い俺は誰に対しても攻撃をすることができない。

 逆にいえば危害を加えてしまう事がないとも言えるよな。



「ふふ、なら私も混ぜてもらおうかしら? なんだかふかふかで気持ちよさそうだもの」

「別に構わないが……何ならお前達用のベッドも出してやろうか?」

「い、いや、これでいいんですよ! 家族団らんって感じで何かいいじゃないですか!」



 家族って……

 全く種族も違うんだけどな。

 まあ、それだけ今の俺達はこの世界で生きる上で大事な関係性になっているという事か。


 こうして俺達はベッドで深い眠りにつくことにした。

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