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3.プチデビルを受け入れることにしました

「ななななんでお前が中にいるんだよ!?」

「えっ? だから帰るっていったじゃないですか?」

「帰るっていったら、普通お前の家に帰っていく事を想像するだろ!? 何で俺の近くに来るんだよ!?」

「えっ? それはもちろんボクの家は邪龍様のお近くと決まっていますから、これで合っているんですよ?」



 まさかの家が邪龍設定かよ……

 そんなの聞いてないぞ。

 というか、本当にこの世界では俺が邪龍という設定になっているんだな。

 何かへこむわ。



「そうだとしても、どうしてお前はこの中に入ってこれたんだ? 穴を開けてきたわけでもなさそうだしさ」

「ああ、あなた様はこの世界の邪龍様ではないから分からないですよね。えっと、その言葉自体がボクの帰還術式になっているんですよ」

「帰還術式?」

「はい、そうです。かつて邪龍様はボク達部下に対して魔法をかけました。その一つが帰還術式なんです。特定の言葉を合図に術式が発動するようになっているんですよ」

「つまり、さっきの場合は俺に言わせた言葉によってお前を帰還させる魔法が発動したと?」

「はい、そういう事なのです」



 言葉自体が魔法発動のカギになっている、か。

 なかなか面白い事をするんだな、邪龍って。

 もうこの世界にはいないらしいけどさ。

 俺の使える”言葉魔法”と少し似ているかもしれない。


 って、ダメだダメだ!

 なんで邪龍に親近感抱いているんだよ、俺!?

 俺は邪龍じゃないんだって、決してな!



「で、どうしてお前はここに来たんだ?」

「それはもちろん邪龍様をお守りする為に決まっています!」

「まも、る……?」

「はい。神力という忌まわしき力によってこの世界の邪龍様は滅ぼされてしまいました。神力というものに対して為す術がなかったのです」

「うん、そうらしいよな」

「そしてボクには居場所がなくなってしまいました。邪龍様が唯一のボクの家だったというのに。そして一生後悔していたんです。どうして死ぬ気で邪龍様を守らなかったんだって」



 確かに、部下を残して邪龍が死ぬって何か不思議だよな。

 普通ラスボスって最後に戦うものだと思うしさ。



「お前は逃げ出したのか?」

「……とてもお恥ずかしいお話ですが、その通りです。ですから、今度は逃げません! そして必ず邪龍様のお役にたってみせるのです!」



 とても決意を持った感じでそう言うプチデビル。

 プチデビル君には悪いんだけど、俺、全くその邪龍と関係ないから、俺を助けても亡き邪龍の弔いにはならないと思うんだがな……



「お前の事情は分かった。でもそういう事なら、お前の行動は全く意味ないぞ」

「ええっ!? どうしてですか!?」

「俺はこの世界の邪龍とは全く関係がない。百歩譲って同じ見た目をしていたとしても、だから何だ? ただそれだけの話だろう?」



 プチデビルは困惑している。

 多分事実を突きつけられて動揺しているんだろうな。

 実際、知らない奴の弔いに勝手にされるのはあまり良い気はしないんだよな。

 俺は俺な訳だし、そもそも邪龍じゃないし。



「だから迷惑だから帰っ―――」

「申し訳ありません! 色々カッコつけましたが、簡単に言えば、ボクには居場所がないんです! ですからあなた様のお近くにいさせて下さい!?」



 プチデビルは頭を地面にめり込ませる勢いで土下座をしている。

 というか土下座習慣なんてこの世界でもあるんだな。

 それにしても必死すぎるだろ、こいつ。

 何か哀れになってくるな……



「俺の言う事を聞いてくれるのなら近くにいてもいいぞ」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ、言う事を聞いてくれるのならな」

「はい、なんでも聞きます! あなた様のお近くにいられるのなら、なんでもしますとも!」



 フフ、なんでも言う事を聞くといったな?

 プチデビルめ、貴様は俺の仕掛けたワナにかかったのだ!



「そうか。なら命令しよう。俺を邪龍と呼ぶな!」

「ええっ!? そんなの無理ですよぉ!?」

「言う事を聞けないみたいだな。じゃあ帰れ」

「ひ、ひどいですよぉ……そんなことって……」



 プチデビルは絶望にうちひしがれているような表情でがっくりと肩を落とした。

 どうやらよほどショックが大きかったらしい。



「ではなんとお呼びしたら……」

「ライクだ」

「はい?」

「俺は人間のライクという。決して邪龍なんかではないのさ。分かったか、プチデビル?」



 キョトンとした顔をするプチデビル。

 何だ?

 何か変な事言ったか、俺?



「……つまり、あなた様の事はライク様とお呼びすればいいと?」

「そういう事だな。俺は邪龍じゃねえんだから、邪龍とはもう呼ぶなよ」

「……つまり、ライク様とお呼びさえすれば、お近くにいてもいいと?」

「居場所がないっていうんだから仕方ないだろ」



 するとプチデビルは体をブルブル震わせる。

 そして次の瞬間……



「ライクさまぁ~ほんとうに、本当にありがとうございますぅ~!?」



 プチデビルは号泣し、涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。

 いちいち表現がオーバーだな、こいつ。

 ただ近くにいてもいいって言っただけなのにこれって、どんだけだよ!?

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