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1.魔王の罠にはめられてしまいました

「な、なんだと!? そんなはずは!? こうなったら―――」

「させるか! 認識+(そがい)で”認識阻害”!」

「真偽装魔法! ……あれっ?」

「お前がそうしてくる事はもう織り込み済みなんだよ! 覚悟しろ!」



 俺は全力をこめたブレスを放ち、そして魔王は息絶えた。



「良くやったわね、ライク!」

「さすがライクだ、頼りになるな!」

「あっしも感動したっす!」



 魔王が倒れ、仲間達も喜んでいるようだ。

 うん、色々大変な事はあったが、これで一件落着だな。

 魔王を倒したら安心したからか、どっと疲れが押し寄せてくる。

 身体が重たいというか何というか。

 でもそんな苦労も報われるってもんだな。

 みんなの笑顔が見れるならさ。


 泣いたり笑ったりして、でも嬉しそうな様子をしているみんなを眺めて俺はしばらく幸せな気分に浸るのだった。



『お前だけを幸せにはさせない……』



 なっ、なんだ!?

 急に頭に響いてくる不気味な声。

 すると同時に地面に赤く不気味な魔法陣が展開された!?



 これは……設置魔法!?

 しかもこれ召喚陣じゃねえかよ!?

 ご丁寧に身体を拘束して逃げられなくする仕掛けもついてやがる。


 もしかしてこれ、魔王の死が引き金になったのか……?

 魔王の置き土産があるなんて聞いてねえぞ、おい!



「ら、ライク様!? ライクさまー!?」



 仲間の悲鳴を聞きながら、俺は為す術なく、どこかへ召喚される事になった……



==========



 うーん、いててて……

 ここはどこだ?

 確かどこかに強制召喚されて飛ばされたんだったよな?


 となると異世界に来たってことだよな。

 さて、今度の異世界はどんな所なんだろうか?

 そう思った俺は辺りを見渡してみた。

 すると―――



 グルルルル……



 周囲をオオカミに囲まれている。

 いきなりこんな敵意むき出しの奴らに囲まれるなんてついてねえな、俺。

 まあオオカミ位何とかなるだろう。


 俺は襲いかかってくるオオカミを飛んでかわし、そして反撃のブレスを弱めに放った!

 ブレスは直撃!

 これ位で倒せるはず―――



 しかし、俺は目を疑った。

 何と、そこには無傷なオオカミ達が立っていたのだから。



 む、無傷だと!?

 まさか効いてないって事か!?

 こうなったらヤケだ。

 全力のブレスを当ててやる!



 俺は空に舞い上がり、オオカミがいる一帯に全力のブレスを吐き出した!



 ズコォォン!



 えぐれる地面。

 立ち上がる土煙。

 うん、さすがにここまでしたら無事では―――



 グルルォォ!



 えっ、なんで!?

 オオカミがいる場所を避けて地面がえぐれているんですけど!?


 一体何が起きているというんだ……

 とにかくここは逃げる一択だな。

 あのオオカミ達をさらに怒らせちまったみたいだし。


 こうして全く攻撃の当たらないオオカミから俺は全力で飛んで逃げることにした。






「ハァ、ハァ、どうなってんだよ、この世界? あのいかにも雑魚なオオカミが何であんなに強いんだよ?」



 俺は思わず独り言がでる。

 だっておかしいだろ?

 一応魔王倒したほどの力を持っているんだぞ、俺。

 自分で言うのもなんだけどさ。

 それなのに、あのオオカミに全く歯が立たないなんてやってられねえよ。

 一匹一匹が魔王より強いってか?



 ……いや、冷静に考えてそれはないだろ。

 何かカラクリがあるはず。

 そうだ!

 今こそ説明書さんの出番じゃないか!?



「説明+(しょ)で”説明書”!」



 俺がそう言うと、目の前に一枚の紙切れが現れる。

 俺は紙をつかみ、そして内容を読んでみた。



Q あのオオカミは特別強い魔物なのか?

A 強くありません。この世界では弱い種族にあたります。


Q なぜオオカミに攻撃が当たらなかったのか?

A 神力がオオカミより大幅に劣っている為、通じませんでした。



 神力ってなんだ?

 そんなの初めて聞いたんだが?

 この世界でいう強さの指標みたいだけど……



Q 神力とは何か?

A かつてこの世界を絶望に陥れた邪龍に対抗する為に生まれた力です。この数値が相手よりも一定以上下回ると、相手には一切攻撃を与えられなくなります。



 へえ、邪龍に対抗ねぇ。

 きっとすごい禍々しい奴だったんだろうな。

 それはともかく、俺がオオカミに攻撃できなかったのはその神力ってヤツで負けてたからなんだろうな。

 ちなみにオオカミの神力っていくつなんだ?



Q オオカミの神力は?

A 0です。



 へっ?

 ゼロだって?

 なら俺の神力はいくつなんだよ?



Q ライクの神力は?

A ー9999999999999999999999999999……



 なんだよ、これ!?

 説明書の紙切れに収まりきらないほどの9が並んでいるんですけど!?

 これバグってるんじゃないか?

 これが本当なら俺、この世界で最弱ということになるぞ!?

 逆カンストしてるしさ!


 どうしてこんなことになってるのか、説明書さん、説明してくれよ!



Q 何故ライクはこんなに神力が弱いのか?

A この世界でいう邪龍だからです。邪龍に対抗する力なのだから、邪龍本人は最も神力を持たない者になります。



 はっ?

 俺が邪龍だって?

 この世界に来たばかりなのに何でそうなるんだよ。


 まあとにかくだ。

 俺が邪龍扱いされているのなら、変身して元の人間の姿に戻ればいい話だよな。

 じゃあ早速戻るとするか!



「日+(と)で”ひと”!」



 ……何も起こらない。

 あれっ、おかしいな?

 とにかく、人でなくてもいいから何かに変身しよう。



「タン+(さ)で”サタン”! サン+(リヴァイア)で”リヴァイアサン”!」



 ……何も起こらない。

 何でだ!?

 何故変身できない!?

 説明書さん、どういう事か早く説明を!



Q 何故ライクは変身できないのか?

A 魔王が死と引き換えに放った設置魔法、変身防止魔法の影響です。この呪いを解かない限り、変身をすることは出来ません。



 はあ?

 魔王の奴、そんな厄介な仕掛けもしてやがったのか!?

 それはともかく、それを解く方法は!?



Q どうやったらこの呪いを解けるのか?

A 解けません。



 解けません……って諦めるんじゃねえよ!?


 ハァ、どうするんだよ、これ?

 何だか泣きたくなってきたんですけど。

 つまり邪龍として生きろってことだろ、これ。

 あり得ないわ……

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