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この気持ち、わかりますか?

作者: 新井瑠七

うさぎは寂しいと死んでしまうらしい。


嘘か本当か知らないが、昔、母が教えてくれた。

でも、私はうさぎが可愛そう、とは思わない。


だって、私はぜんぜん平気だから。


私は寂しくて死んだりなんか絶対にしない。

死ぬにしたって、誰にも知られずひっそりと逝きたい。


なのに、周りの人はわかってくれない。


私のことなんて放っておいて欲しいのに、無視してくれたらいいのに、

ちょっと外に出れば、一緒に遊ぼうって、直ぐに声をかけてくる。


そんな時、私は決まって無視をする。


声をかけてきた人はとても残念そうな顔をするけど、

私はプイっとすると、何も聞こえなかったふりをしてその場からそっと離れる。


でも、この前の、あの男の人だけは違った。


駅からほど近い、今流行のカフェのテラス。

その男の人は丸いテーブルに一人で座り、本を読んでいた。


何の本だろう・・・・・・私は首をかしげた。


私の視線に気づいたのか、その人はふと顔を上げると道の反対にいた私を見つけた。

そして、目が合った。一秒、二秒。


でも、なんの反応も示さなかった。


その人は三秒目を迎える前にコーヒーを一口飲むと、さり気なく足を組み替え、

何事も無かったように手にしていた本に顔を戻し、そっとページをめくった。


・・・・・・うん、いい感じ。この人となら、一緒に居ても良いかも。


私はなんだかとても嬉しくなって、車が来るのも気にせず急いで道を渡った。

そして、さりげなくその人に近づくと足元に身を寄せた。


よし、ここからが私の本領発揮。


私はこれまでで最高の上目遣いをすると、

その人に向かって、いつもより一オクターブ高い声で言った。



ニャア。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1つ 読者を騙すところが良い  ほっといて欲しい、という気持ちは人間にあるものだと思い込み、最初は主人公は人間だと思いました。しかし、最後の「ニャア。」で、猫だと分かりました。もう完全に騙…
2017/05/07 15:09 退会済み
管理
[一言] 落ちが読めなくて、すっかり一本取られてしまいました。 とても可愛らしい雰囲気が素敵です!
[良い点] 素晴らしいです。完全に騙されました。伏線も序盤からしっかりありますし、自然でした。猫は死ぬとき一人になるってやつですね。また無駄な文がないのもよかったです。
2014/12/03 09:11 退会済み
管理
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