この気持ち、わかりますか?
うさぎは寂しいと死んでしまうらしい。
嘘か本当か知らないが、昔、母が教えてくれた。
でも、私はうさぎが可愛そう、とは思わない。
だって、私はぜんぜん平気だから。
私は寂しくて死んだりなんか絶対にしない。
死ぬにしたって、誰にも知られずひっそりと逝きたい。
なのに、周りの人はわかってくれない。
私のことなんて放っておいて欲しいのに、無視してくれたらいいのに、
ちょっと外に出れば、一緒に遊ぼうって、直ぐに声をかけてくる。
そんな時、私は決まって無視をする。
声をかけてきた人はとても残念そうな顔をするけど、
私はプイっとすると、何も聞こえなかったふりをしてその場からそっと離れる。
でも、この前の、あの男の人だけは違った。
駅からほど近い、今流行のカフェのテラス。
その男の人は丸いテーブルに一人で座り、本を読んでいた。
何の本だろう・・・・・・私は首をかしげた。
私の視線に気づいたのか、その人はふと顔を上げると道の反対にいた私を見つけた。
そして、目が合った。一秒、二秒。
でも、なんの反応も示さなかった。
その人は三秒目を迎える前にコーヒーを一口飲むと、さり気なく足を組み替え、
何事も無かったように手にしていた本に顔を戻し、そっとページをめくった。
・・・・・・うん、いい感じ。この人となら、一緒に居ても良いかも。
私はなんだかとても嬉しくなって、車が来るのも気にせず急いで道を渡った。
そして、さりげなくその人に近づくと足元に身を寄せた。
よし、ここからが私の本領発揮。
私はこれまでで最高の上目遣いをすると、
その人に向かって、いつもより一オクターブ高い声で言った。
ニャア。