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「それが、この各人格に与えられた瞳の色と、瞳に宿るそれぞれ七つの力です。」
眼帯をとった蒼輔の方目は、綺麗なコバルトブルーをしていた。美和子は、余りの美しさと物珍しさに少しの間そのコバルトブルーに見入ってしまう。
「僕達七人に託された七色の瞳、そして各人格に見合った特殊能力。これがそろって初めて『七神』と言えます」「七つの神で『七神』……そういう意味があったのですね」
美和子は、実際なら眩しいであろう光が隙間から射してくる窓際の方へと向けて微笑みを作った。
蒼輔はと言うと、そのコバルトブルーの瞳を細め、美和子の方を伺っている。
「そして、先程にもいいましたが、僕のこの青い瞳は、他人の記憶を通して断片的に過去を見ることが出来ます」「他人の過去を……」
当然意識して相手を見なければ蒼輔であっても過去は覗けない。
だが美和子は、何かに恐怖するような仕草を見せた。
「そして、その力の使い道は様々です。闇に手を染める者も居れば、僕達のように力を仕事にして生きている奴も居る。中には自分が『七神』だと気付いていない者もいます」
蒼輔は、美和子の表情など何一つ気にせずに淡々とことを説明していく。
「自分が『七神』であると気がついて居ない者は、中の人格と疎通が上手く取れずに居る、あるいはまだ自分の力を見付けていない……と言うのがほとんどです」
「では貴方達は……」
美和子が必死に自分の話を聞き入れようとしているのがわかり、この時ばかりは蒼輔もゆっくりと何時もの口調でやわらかく言った。
「そして僕達は幸運にもその特殊能力を見付け、中の者と疎通している。だからこの、『真実の売人』と言う仕事が出来る」
蒼輔含む七人の人格はそれぞれの特殊能力を生かし、時の闇に沈んだ謎の解明をしている。毎日のように訪れる依頼主に従い、隠された真実を見い出しそれを売るのだ。
それは決して樂な道のりではない。
他人の過去を覗き、或いは他人の感情、気持ちを覗く。
人間のドス黒い闇に、常時触れていることになる。
「僕達は生まれながらに呪いを背負わされた化物なのかもしれない。だからこそ、人の闇を忘れてはいけないのです……聞かせて頂けますか?貴女の闇を……」
蒼輔は、障子を静かに閉めると美和子の前へと再び腰を下ろした。