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「では、まず僕達人格についての話を致しましょう」


蒼輔は、煙草に火をつけてくわえると、ふと思い出したように美和子へと話し掛けた。


「煙草の方は大丈夫ですか?」


「あ、はい。父が昔吸っておりましたので」


美和子は先程にも見せたあの優しい微笑みを作り応答する。



「どうも。では簡単に『七神』を説明致します」


煙草の煙を肺から思いきり吐き出した蒼輔は、目線を美和子から障子が閉まった窓の方へ移した。


「『七神』とは、一人の人間の中に七人の人格が生まれつき存在している人間のことを言います。肉体を持たない人格が一人の躯の中で七人共存しているのです。言ってしまえば多重人格者と言うことです。」


「多重人格者……?」


美和子は少し怪訝そうな顔をした。


それも当たり前だろう。この時代、多重人格者などという言葉は存在しない。


「多重人格者とは、幼少期に何らかの精神的ショックを受けて精神が幾つかの人格に分裂してしまう病気です。ただ、多重人格者と僕達とでは大きく異なるところがありますが」


「異なるところ……とは?」


美和子は少し先を急かすように、蒼輔に問いかけた。


一方蒼輔は、室内に蔓延した煙草の煙を外に逃がそうと窓際へと近寄った。


「一つは、生まれつき七人の人格が共存する僕達と、精神的ショックを受けてやむなく一人の人格から幾つかの人格に分裂してしまう多重人格者という違いです」


美和子は少し困ったように難しい顔を作った。


「あの、すみません。少し難しくて……」


「ああ、これは失礼致しました。では、こう説明すればわかって頂けるでしょうか。多重人格者は元々は一人の人格しかいない人間です。ですが僕達は生まれながらに七人の人間が一つの躯に居る。これが僕達『七神』です。これでご理解頂けましたか?」


「あ、はい。なんとなく……」


蒼輔は窓際に腰を下ろし、美和子の方を向いた。


「あとは、多重人格者とは違い僕達は人格通しの記憶を共通して持っていることです。ですから、七人の中の誰が表へ出て行動を起こしていても悪さをしようとしても、中の人格達も一緒に僕とその光景を見て理解しているということです」


「では……?」


蒼輔は煙草の火を消すと美和子の方へ微笑み掛けた。



「美和子さんの察する通り。今僕の中に居る他の六人の人格も貴女を見ていますし、話も聞こえています」


「そうだったのですか……」


美和子は驚きの表情を浮かべる。


蒼輔はそんな反応は慣れているといった感じに、構わず話しを続けた。


「もちろん僕の中に居る六人はそれぞれ性格も性別も名前も違います。好みもちがえば、僕のように煙草を吸うもの吸わないものと様々です」



「……それが、『七神』」


美和子が納得したように呟くと、蒼輔は説明を続けた。


「いいえ、これだけでは『七神』とは言えないのです。『七神』にはあと一つ、普通の人間とは違うところがあります」


そう言うと、蒼輔は固く締められていた眼帯の紐をほどき始めた。


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