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一匹の猫(第六話)

 人間は、強くなるべきと幸司は思っていた。強くなるとは、見せかけの強さではない。悪の誘惑に負けぬ、心の精神力といえるのではないだろうか。

 人間には、苦労や苦しみがある。それを生きていくには、純粋なる精神力と幸司は考えている。

 女性の気持ちの中には、深い心の傷跡が見え隠れするようであった。しかし、幸司の優しさに触れて、心を覆う氷の塊が解けてくる暖かさを感じている。

「男性が、幸司さんみたいな人ばかりなら、いいんですけど」

 人間は、十人十色である。経験によっても、考え方が違うのが現実である。幸司は、その例えを、料理に演出しようと考えていた。

「人は、まちまちですよ。皆が賢人のように、優れた考えを持つとは考えられない」

 幸司は、次の料理を仕込んでいる。その様子が、女性からは筒抜けに見えている。

「料理って、面白いですね。作る人によって、別の物に生まれるような気がするんです」

 ひとこと、女性が幸司の仕事ぶりを見て呟いた。彼女の視線に、三品目が提供されようとしていた。

「お待ちどう様、翡翠豆腐としら魚の、澄し汁になります」

「翡翠豆腐のみどりは、えんどう豆です。種類にもいろいろあり、多種多様ですよ」

 えんどう豆をすりつぶし、葛粉で練ったその豆腐は、お椀の中にドラマを感じさせる。

「美味しそうですね。綺麗なみどりが、食欲をそそります」

 女性は、お椀の中の料理を堪能していた。もう一品の、しらうおは、透明感のある扁平な魚体である。

「透き通る、その魚体を茹でることで、このように真っ白になる。今は、お辛いでしょうが、心の整理をして、真っ白にした方が今後のためです」

「男性のことに関しても、まっ白いハートを持つ人間は、暴力には頼らない。それを心得ている人が多いですよ」

 女性は、幸司の話に耳を傾け、澄し汁を味わっている。

「しら魚の淡白な食感に、吸い物の出し加減が、すごく合っています! 翡翠豆腐のほのかな香りが、吸い口から漂ってくるんですね」

「とても、美味しい。なんか、暖まります」

 女性は、勇気を絞って、男性ときちんと別れようとしていた。幸司の話を聞いて、ひとつの想いに、区切りをつける決心を抱いている。幸司は、その女性の表情を確認して、次の料理に取り掛かろうとしている。


つづく。


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