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サスカッチ  作者: シンノスケ123
第二章「トレーニングジム」
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第二章「トレーニングジム」2

チャールズジムは地下一階がフロントと道場のようになっており、地下二階にウエイトトレーニング用のマシンが設置されていた。


「マナブ君、君は足腰が元々強いようだから、短い時間で強くなるためには、上半身を重点的に鍛えるべきだろう」

スーツ姿の男であるチャールズは初めにそう言った。


ジムでのトレーニングは過酷を極めたが、マナブとブルータルは猿人に対する執念で、乗り越えていく。


一日のスケジュールは午前六時から午後四時までの時間、みっちり基礎筋力の強化と、格闘における基本動作の練習に費やされる。


そして、わずかに存在する自由時間でマナブは、ブルータルの指示の下、自身の切札と呼べる技を磨いていった。


そして、ジムでの生活も残り一週間を切ろうとする頃には、マナブの身体は見違えるように筋肥大していた。


「やはり俺の見込み違いではなかったようだな」

その日、自主トレを終えるとブルータルは、マナブにそう言った。


「なるほど、格闘技も奥が深いな。アンタたちが熱中するのも理解できるよ」

気がつけばマナブもトレーニングにのめり込んでいたのだ。


いよいよ明日は最終日だった。

明後日には地上に戻り、再び猿人の情報を探す旅が始まる。

マナブにとって、ようやくスタートラインに立ったと言えるだろう。


そして最終日。


フロントに集められた全員の前にチャールズが現れた。


「皆さんにはこれから、()()()()をしてもらいます」


「・・・えッ!?」

門下生たちはつい驚きの声を漏らした。


チャールズは出口である門を指差す。

「この門から出られるのは一人だけです。その他の方々は一人の強者のための生贄&家畜の餌として、このジムの運営費になっていただきましょう」


そう、最初にチャールズが話した卒業者全員の強さが同等になると言うのは、一人しか残らないため本当だったのだ。


「ふざけんな!」

一人の男がそう言って、チャールズに飛びかかった。


しかし、チャールズは弩を懐から素早く取り出し、その男の眉間を射抜いた。


「ヒィッ・・・!」


「私と戦って死ぬことも選択肢の一つです。それでは頑張ってください」

チャールズはスタッフルームに去っていった。


「やはり、おかしなことになったな・・・」

ブルータルはつぶやいた。


マナブは周りを警戒した。

この状況下一人でも動く者が現れれば、一気に場が戦場と化すだろう。


マナブとブルータルは自然な動作で背中合わせになり、辺りを注意深く観察する。


「いいか?自分から動く意味はない。まずは生き残ることを考えろ・・・」

ブルータルはマナブにそう耳打ちした。


しばらくして一人の男が突然隣の男に襲いかかり、それを見ていた者も危険を感じて近くに居る者を攻撃し始めた。


やられる前にやる。

生き残るための鉄則だ。


そしてブルータルにも一人の男が襲いかかってきたが、ブルータルの素速い前蹴りがみぞおちに突き刺さり一瞬で昏倒した。


マナブの前にも一人の男が現れ殴りかかってきたが、マナブは冷静にその拳を前腕で逸らし、反撃の拳を顔面にお見舞いする。


男は倒れたがすぐに起き上がってくる。

マナブは殺す気で人を殴ったことがないため、少しだけ加減が生じてしまったのだと気づいた。


「生き残るためだ。勘弁してくれ」

マナブはそう言うと、立ち上がろうとする男の顔面を蹴り上げ、気絶させた。


そうこうしている間に、気がつくとフロントには四人しか居なくなっていた。


マナブ、ブルータル、そして髭面の巨人に、狂い牙と呼ばれるアサシン・・・


「やはり、こいつらが残ったか・・・」

ブルータルはつぶやいた。


相変わらず二人は背中合わせで構えていたが、ブルータルの前にには髭巨人が、マナブの前には狂い牙がにじり寄ってくる。


狂い牙の姿はオーバーサイズのローブを羽織っているため細身に見えるが、それがすぐに脂肪が削ぎ落とされた筋肉質な身体だとわかった。


「そいつに気をつけろ!まともにやれば俺でさえ勝てるかわからねえ!」

ブルータルは言った。


「クククッ・・・ブルータル。貴様は初めからマークしていた。どうやらその男と組んだようだな。だから俺はその髭男を仲間に引き入れたと言うわけだ」

狂い牙は奇妙な笑みを浮かべそう言った。


ブルータルは先手を打ち、髭巨人に襲い掛かって、殴る蹴るの応襲が始まった。


そしてマナブは狂い牙と睨み合い、攻撃の機会を伺っている。


狂い牙の戦闘スタイルについては、すでにブルータルから聞いており、マナブはそれを肝に銘じていた。


狂い牙とは、ブルータル軍の切札的な存在であり、敵の虚を突くことの天才で、意識の隙間を攻撃してくるらしい。


だからこそ、マナブは下手に攻撃を仕掛けず意識を集中して、狂い牙に相対しているのだ。


しかし、狂い牙は実は動揺していた。


素人かと思っていた若造が、これほどのチカラを携えて、ここに立っていることに驚いていた。


本来の敵なら既に20〜30ほど垣間見える、虚の部分がマナブからは未だ見えないでいるのだ。


それはマナブが極限まで肉体を追い込むことで、手に入れた精神力と集中力によるものだった。


そして、狂い牙は気がついていなかった。

狂い牙自身の動揺が、敵に虚を悟らせることになってしまったことに。


マナブは狂い牙の虚を垣間見て素早く動いた。


そう、それはマナブが切札として、99日間磨き続けた技だ。


マナブは狂い牙の左手を掴み、飛びついた。


<腕ひしぎ十字固め>だあッ!

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