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サスカッチ  作者: シンノスケ一二三
終章「Wild for you」
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終章「Wild for you」ラスト

猿人が噛みつかれないために、竜の顔面を両手で鷲掴みにし、仰け反らせる様に押さえつける。


しかし、突然のことで驚いた竜も力を持ち直し、猿人の頭を食うため大口を開けて、首のチカラで猿人の剛力に反発した。


猿人が竜の口の裂け目に親指を引っ掛け、もう片方の手で拳を作り、無茶苦茶に顔面を殴りつける。


竜もその猛攻に、たまらず顔を引っ込め、次はどこに食らいつこうか考えているようだった。


サトルがこの闘いに呆気に取られていると、いつの間にかブルータルが隣に居た。


そして二人は地響きの様な足音が聞こえて来るのに気づいた。


その足音がどんどん近づいて来る。


やがて、ぞろぞろと無数の影がこちらに向かって来ているのがわかった。


それは体長2メートルから4メートルで、主に黒色が多いが、白に青、緑に赤と様々な色をした無数の猿人だった。


その中には、雪巨人、海巨人、ジムに居た比較的小さな髭巨人も居た。

そして、ブルータルを負かした金色の巨人もこの中に居ただろう。


それらは、竜と漆黒の猿人を取り囲み、何をするわけでもなくジッと様子を見ていた。


「これは・・・夢でも見ているのか・・・?」

理解の追いつかない状況でサトルは呟いた。


「奴らも興味があるんだな。自ら猿人になろうとした男を」

そう言ったブルータルの瞳は輝いて見えた。


竜の尻尾による力強い一撃が猿人の横っ腹に炸裂し、猿人もそれを腕で抱え込んだが、圧倒的な尻尾の力に引き摺り回される。


しかし、猿人はどうにか両脚で地面を捕らえて踏ん張り、今度は竜を引き摺り回して数メートル投げ飛ばした。


竜はすぐ起き上がり、猿人を目掛けて突進する。


竜の迫力ある頭突きに、拳を脳天に叩き込んで止める猿人。


しかし、これはやっとのことで、猿人はその衝撃で大きく仰け反ってしまった。


その機に乗じて、竜は素早い噛みつきと鋭い爪のコンビネーションを繰り出していき、それに圧倒されて猿人が防戦一方になっていた。


猿人の毛むくじゃらの体表が切り裂かれ、赤ピンク色皮膚が露出する。


「まずい!」


「いや、機を伺っているんだ。出るぞ・・・!」

ブルータルはサトルの言葉を否定すると、ゴクリと唾を飲み込んだ。


竜の左腕から放たれる爪攻撃を紙一重で躱した猿人は、竜の左腕を掴み飛びついた。


<腕ひしぎ十字固め>だあッ!


掴んだ竜の左腕を両脚で挟み込み、自身の骨盤を支点として一気に掴んでいる左手を引き付け、左腕を完全に破壊した。


竜は驚いて後退ったが、なんと竜の体から十二本の腕が生えてきて計十三本の腕とその爪で、猿人に再び襲いかかる。


しかし、猿人は怯まなかった。


腕が増えたのなら、増えた腕も破壊すれば良い。


<連続腕ひしぎ十字固め>だあッ!


流れるような速さで十三本の腕の関節を破壊していく猿人。


「人間はコミュニティで有利な<理性>を進化の過程で獲得してきた。しかし、やつはあえてそれを捨てることで、相反する<野生>を獲得した。進化を逆行するような行為だが、これが今の混沌の時代で必要なものなのだ」

ブルータルは夢遊病のように呟いている。


全ての腕を破壊した竜を、猿人は肩に仰向けの状態での抱えた。


アルゼンチン・バックブリーカーだあああッ!


猿人は竜の首と足に手をかけ力を込める。

要は背骨折りだ。


ミシミシという音を立てて背骨が悲鳴をあげる。


バタバタ暴れ叫ぶ竜だったが、猿人の万力のような握力を前には意味をなさない。


背骨が折れたのか一瞬痙攣すると、ついに竜は動かなくなってしまった。


抱えていた竜を放り投げた猿人は、

「グオオオオオオオオオオオッ」

という雄叫びをあげた。


野生の勝利宣言だ。


それに呼応するように見守っていた猿人達も雄叫びをあげ、四方八方に去っていった。


海、雪山、ジムなど、それぞれの棲家に帰るのだ。


その様子に目もくれず、サトルとブルータルは漆黒の猿人を見つめている。


漆黒の猿人は見られていたことに気がつき、サトルの方を向いた。


猿人は左腕を振るわせながら、ゆっくりとサトルの方に向けた。


その姿は自ら溢れ出る野生を、わずかな理性によって抑え込んでいるように見えた。


(何か伝えようとしている・・・)


猿人の左腕はまっすぐサトルの方に向けられ、その親指は天に向かってピシッと立てられていた。


〜サムズアップ〜


サトルも親指を立てて、猿人に答えた。


猿人はフッと笑うと、彼もまた自身の棲家に戻って行くようだった。


彼の棲家は戦場。

彼もまた、金色の猿人と同じく、正義のために野生を振るうのだ。


「俺はついに追い求めた猿人の正体を掴んだ。ならば、全ての弱き者のために野生を贈ろう!」

それは彼が十数年前、メモに書き残した最後の言葉だった。

長い時間、お付き合い頂きありがとうございます。

サスカッチはこれにて完結とさせていただきます。


僭越ながら、正直な評価ポイント、そして思うところがあれば感想を書いてくださると、私も嬉しいです。


現在、次作の「シラフに耐えられない・・・(異世界転生)」を公開中ですので、そちらもぜひ読んでいただきたく思います。


また、過去作「虹の瞳」も是非読んでいただきたいです。

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