第六章「タイマン」3
「確かに、力王アギトは一番天下に近い男かもしれない。純粋な暴徒はアギトの下に集まっていくと聞くしな。お前は奴が竜人だとでも言うのか?」
「そうだ」
「アギトは兵を温存している。それは善良な民間人を統べるマデリンとの決戦を想定しているからだ。戦えば簡単に誘き出すことができるだろう。二人がかりなら勝てないことはないかもな」
「いや、無理だ。アギトは少なくとも3人の竜人のチカラを得ている。これはそのままの意味で4倍のチカラを持っているという意味なんだ。もしかしたら竜人同士で殺し合ってる可能性もありえから、現在の正確な人数も把握できないな」
「その話が本当なら、本物のバケモノだな。きっと目の当たりにするまで信じられないだろう」
「だが、打つ手がないわけじゃないんだ」
サトルは木箱を取り出した。
その木箱を開けると、中には金属製の籠手のような物が入っていた。
「これは?」
「破壊兵器さ」
火炎エリア(地名)。火炎城にて。
マデリンの下に一人の学者が大慌てでやって来た。
「大変です!マデリン様!<ガントレット>が盗まれました!」
マデリンは一瞬驚いたが、すぐに理解して呆れた顔をした。
「あの馬鹿・・・サトルの仕業ね」
「おそらく・・・」
「あの無鉄砲さ、誰に似たのかしら・・・」
マデリンがそう呟くと、学者は苦笑いした。
そして、サトルとピーカリは五千人の喧嘩師を引き連れ、すぐに生命エリア(地名)に進軍した。
サトルの右腕にはガントレットが装着されている。
彼らは閃光エリア(地名)の境界の壁を爆破して雪崩れ込み、サトルとピーカリを先頭に暴れ回った。
まさに奇襲である。
やがて、アギトの配下である暴徒達も集まり、団となってサトル達を迎え、本格的な戦いが始まった。
「クククク・・・」
争いの騒音の中でもよく通る、低い笑い声が聞こえてくる。
サトルとピーカリの目の前に、マントを羽織った長髪の大男が立っていた。
「お前は!ブルータル!?」
ピーカリは驚いた。
「久しぶりだな。ピーカリ」
ブルータルはマントを揺らしながら立っていた。
武器同士が衝突する音と雄叫びや悲鳴が鳴り止まない危険な戦乱の中、圧倒的な存在感を放つ二人の大男が静かに対峙していた。
「サトル手を出すな。こいつとは決着を付けたかったんだ」
「今のお前では相手にならない。撤退しろ」
「大した自信だな」
ピーカリはブルータルに向けて、不意打ちの突きを放った。
ブルータルはそれを掌で受け止め、反撃の拳によりピーカリの身体を吹き飛ばした。
どうにか着地したピーカリが膝をつく。
「くッ・・・なぜ、ここまでの差が・・・」
「お前のまだ知らない世界があるということさ」
ブルータルはそう言い終えると、サトルの方を向いた。
「お前は?」
「俺はサトル。今度は俺がアンタの相手をしよう」
サトルがそう言うと、ブルータルから見た金色のツンツン頭が揺らいでいるように見えた。
野生の気が風となり、サトルの全身を駆け巡っているからかもしれない。
しかし、ピーカリが立ち上がった。
「俺はまだやれる。サトル、お前は引っ込んでいろ」
「悔しいのは分かるが、ここは俺に任せてくれ。暴王ブルータル、どれほどの者か知りたくなった」
サトルは動き出したピーカリの顔面を殴りつけ、気絶させた。
「一つ聞きたい。アンタほどの男がなぜ、力王アギトの手下なんかしてるんだ?」
「俺の目的は一つ。金色の猿人と再び戦うためだ。そのために今の立場を利用させてもらっている」
「アンタそんな呑気なこと言ってるが、力王アギトって奴は相当ヤバいんだぜ?奴は今チカラを蓄えている途中。今しか奴を倒せるチャンスはないんだ」
「ふふ。竜人の伝説か?」
ブルータルはニヤリと笑った。
「やはり、アンタもそれを理解しているわけだな。アギトに完成されたらどうするつもりだ?」
「どうもならんさ」
ブルータルはやれやれといった表情で答えた。
「何?」
「俺たち人間も負けてないってことだよ」
サトルはブルータルの野生の気が周辺に漂っているのに気がついた。
そして、ブルータルが構えるのを見ると、サトルも同じように構えた。
サトルが仕掛ける!
拳と蹴りのコンビネーションを初っ端からトップスピードで浴びせかかった。
「これは、チャールズの・・・!」
ブルータルはサトルの技術を見て思わず呟く。
ブルータルはしばらく回避に徹していたが、サトルの攻撃を完全に見切ると、右ストレートを掴んで一本背負いを仕掛けた。
サトルもこれはまずいと思い、器用に上着を脱ぎ捨て一本背負いから脱出し、空中で一回転して着地した。
「ふふ、懐かしい。母親にそっくりじゃないか。やんちゃそうに振る舞っているが、どこか気品を感じさせる。だが、時々見せる田舎くさい表情はアイツに似たようだ」
「へっ、わかるものなんだな」
サトルはツンツン頭を掻きながら言う。
「お前には見所がありそうだ・・・おっと、これはアイツにも言ったセリフだったよ」
ブルータルは少し照れくさそうにそう言うと、構え直しサトルとの距離をジリジリ縮め始めた。




