異世界転生
大阪大学工学部を出て三菱重工業に入社し、現在一人暮らしの24歳。
昔は少しはモテていた。けど、9回くらい付き合ったがいい人はいなかった。まあ、この年になると彼女はいらないな。仕事が忙しいしな。
そんな事を考えていると、
「よ!久しぶり!」
向かいから歩いてくる男性。そう、そいつは小学校が同じの親友だ。
よく見るとその親友の隣には美しい女性。昔はそいつはあまりモテなくて、彼女すらできたことがない男だ。しかし、前LINEで相談があると言っていたことを思い出した。
仕事帰りの待ち合わせ場所で、昔の事を思い浮かべていたって訳だ。
「よう!それで、相談って何だ?」
「どうも初めまして、彼の彼女の山本遥です。」
俺は人見知りだから緊張してるのは俺だよ!そもそも俺は人と話すのが苦手なのだ。まぁ、仲良くなれば話せるんだがな。
そもそも、なんで俺に恋愛相談なんて。
「どうも、島坂透です。
こいつとは同じ小学校でして。そこで仲良くなり連絡しあったりしてたんです。」
「そうなんですか!ずっと連絡してるから誰かと浮気してるのかとw」
やはり、今回もあんま上手く話せなかったか。やっぱ俺、人見知り治らないな。
川野が山本さんの肩を叩きながらとりなしてる。
くそ、川野め!いちゃついて!
「お前ももっとゆっくり話そうぜ!」
笑いながら話す川野。
嫌味がなく爽やかで、憎めないやつなのだ。
しょーがない、素直に祝福してやるか・・・。
「まあ、ここで話すのもなんだし、場所変えて飯でも食いながら話聞くわ。」
俺がそう言った時、
「キャーーーーーーーーーー」
悲鳴。何だ⁈
「どけ!殺すぞ!!!」
その声に振り向き、包丁を持った男が走ってくるのが見えた。
悲鳴が聞こえる。男が向かってくる。手には包丁。そいつが狙ってる先には・・・
「川野!」
ドン!っと、俺は田村を突き飛ばし、剣道の知識をいかして3回は避けて2回は殴ったが俺のお腹に痛みを感じる。
「おらぁー」
叫びながら川野を襲いに行く男を掴み殴りまくり逃げていき、川野と山本さんの無事を確認する。
川野が駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか!」
2人に怪我はなさそうだ。良かった。
それにしても、お腹が熱い。痛いとかそんな次元じゃない。
なんだこれ?勘弁してくれ!
《熱耐性獲得……成功》
あー、死ぬのかー
幻聴まで聞こえるし
《刺突耐性獲得……成功》
「透!血が止まらない」
なんだ、うるさいな。川野か。
そりゃ、血は出るよ。俺だって人間だ。刺されたら血くらい出る。
《痛覚無効獲得……成功》
やばい、俺も痛みと焦りで意識が混乱している。
なんでこんな転スラみたいな状況にならなきゃいけねーんだよ!
「川野うるさいぞ。た、大した事ないだろ?心配すんな、」
「でも、」
俺を抱えようとする川野。
山本さんの様子を見ようとしたが、よく見えない。
痛さももう何も感じない。
やばいかも…。俺のカバンに俺の開発した緊急の薬が入ってるんだが届かない…。川野にも聞こえてなさそうだ。
《血液が不要な身体を作成……成功しました》
(マジで何言ってんだ……)
声を出そうとして、出なかった。やばい。本当に俺、死ぬ……
その時、俺の死にかけの脳が、重要な事柄を思い出す。
そうだ!PCの川野と2人で開発してた秘密の装置!
「川野、ま、万が一、俺が死んだら…俺のPCを頼む。
風呂に沈めて、データを完全に消去してやってくれ・・・」
俺は、最後の気力を振り絞って、最重要事項を伝えた。
《関連する能力を全て獲得》
言われた意味を理解すると、
「ははっ、お前らしいぜ」
そう言って、苦笑を浮かべた。
「俺、本当は、山本の事、先輩に自慢したくて・・・」
そうだろうと思ったよ・・・。まったく、この野郎。
「ちっ・・・、たく。全部許してやるから、彼女の事、幸せにしてやれよ。PC頼んだぞ・・・」
最後の力で、それだけを伝えた。
そして、島坂透は死んだ。
しかし、島坂透は異なる世界の偶然発生した魔物とリンクしたのだ。
魔素の塊は、魔物を生み出す元となり、リンクした人の意思に基づき、その身体を作成される。
いわゆる異世界転生する事となる。
魔物に…
転生するならいい魔物がいいな…
そんな事を考えながら、俺は眠りについた。
(これが死ぬって事か…)
これが島坂透のこの世で思った最後の言葉だった。