表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/25

心配性

玄関のドアを開けると、大山先輩が立っていた。

「夜遅くにごめん、これ忘れてたから届けたくて先生に家聞いたんだ」

そう言うと先輩は部室に忘れていた予備のシールドとスコアを1枚渡してくれた。

「すいません、本当にありがとうございます」

「明日にするか迷ったんだけど、青海君すごく熱心に練習してくれてたからなるべく早い方が良いかと思って」

「助かりました」

「それじゃぁ僕はこれで」

そう言うと大山先輩は階段の方へと向かってく。

3歩ほど歩いたところで、思い出したように振り向いた

「無理だけはしないでね」

先輩は少し心配そうな顔をして、そう言った

「はい」


出たことも無いライブに、しかも練習時間も短いのに心配されないわけがないなと思い部屋に戻る。

お風呂だけ済ませて、また練習を再開する。

とにかくライブまでに迷惑をかけないくらい完璧な演奏ができるようにならなければいけない。

それが今の一番大きな課題だ。


次の日、教室で寝ていた僕は誰かに肩を叩かれて目を覚ました。

「青海君…放課後第4教室まで来てくれる?」

視界にぼんやりと金色の髪の毛が映り込む

「…って水瀬先輩!?すいません!」

慌てて飛び起きたが、水瀬先輩は構わずに話を続ける

「寝てた所申し訳ないけど、今しか言えるタイミング無かったから」

「そうだったんですね!第4教室、分かりました!」

「この校舎の3階にあるから、迷ったらその辺の先生捕まえて聞いといて。」

「はい!」

水瀬先輩は楽譜と音楽の教科書を持って廊下へ歩いていく。


「水瀬先輩ってクールでカッコいいよね!」

「分かる!キーボード弾いてるところもすごくカッコよかった!」

女子達が教室を後にする水瀬先輩の後ろ姿を見て話している

水瀬先輩は綺麗に染まった金髪に整った顔、華奢な体格で歌も上手いしキーボードもプロレベルだ。

女子にとっては憧れの的なのだろう。


「青海君と何話してたんだろう」

「それ気になる!」

少し小声にしたつもりなのだろうが、全て聞こえている。

あまり目立ちたくも無いので教室を足早に立ち去った


トイレでイヤホンをつけて曲を流すと、プレイリストに入れていたソフィアの曲が流れ出す。

さっきまで聞いていた『負けたくないなら』が流れている。

ソフィアが櫻崎高校在校中に制作した最後のシングル『melody』のカップリング曲で、あまり知られていない曲だが、歌詞の内容からいわゆる「隠れた名曲」として親しまれている。

「負けたくないなら前を向いて、ただ突き進むだけで良い…

何も知らない世界に投げ出されても、走り抜ければ道になるから…」

この曲を初めて聴いた時、溢れ出る想いで久々に泣いた事を覚えている。

悲しさ、悔しさ、苦しさ。嫌な感情が全て吹っ飛ぶような気がした。

しばらく何も考えずに曲を聴いていると、四限目の始まるチャイムが鳴った。

「急がないと…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ