『My Heart Blue』
部活も終わり、ギターとスコアを持って家に帰った。
ただいまと言っても誰も返事しないのでさっさと自分の部屋へと向かった。
忘れもしない中2の冬、交通事故で両親が死んだ。
突然の出来事でショックだったが、本当の辛さはここからだった。
親戚たちは両親の死で病んだり蒸発したりして、僕を引き取ってくれる人はいなかった。
そこから1年ほど施設で生活する事になったが、元から人と喋るのが苦手な僕はずっとラジカセにヘッドホンを繋げてCDを聴いていた。
中学校の帰り道に立ち寄ったCDショップで、適当なものを何枚か買って何も考えずにただ流れる音を聴いていた。
知りたくない世界に目を逸らして、聞きたくない現実に耳を塞いでいた。
そんな自分がずっと嫌いだった。
ギターアンプにシールドを差し込み、ヘッドホンをつけてギターの音を鳴らす。
嫌いな過去を消すように、音に浸っていく。
スコアに目を通し、流れを掴む。
水瀬先輩たちの過去のライブ映像を流したりしてとにかく音を見ていく。
「My Heart Blue さぁ駆け出して…」
画面の中の先輩が歌っているのを真似て口ずさんでみる。
少しずつ曲の構成や流れが掴めて来たところで、曲に合うように弾いてみる。
まだ全然出来なくても、ただ弾いているだけで感覚は掴めてくる。
この曲を何度も聴いているうちに、少しの疑問が思い浮かぶ。
曲調や歌詞はとても明るい曲なのに、サビに出てくる「My Heart Blue」と言うワードが矛盾しているように感じる。
この曲に水瀬先輩はどんな想いを込めたのか、考えながらギターのパートを覚えていく
しばらく考えているうちに、一つの答えに辿り着いた。
この曲の冒頭は曲の主人公が夢や希望を無くし、挫けてしまっている所から始まる。
そこから「君」と言う存在が主人公へ当たって砕けた日々は無駄じゃないのだと教える。
それに心がブルーだった主人公は明るくなる事ができた、それをこの曲に落とし込んだのではないかと考察した
画面の中の水瀬先輩はいつも通り無表情で歌っていた。
『思い描いた日常が、いつか現実になるまで
それまで私は思い続けるよ、My Heart Blue…』
水瀬先輩が歌い切ると、会場から拍手が上がり次の曲へと変わっていく。
ふと時計を見ると9時前を指していた。
食欲が湧いていないのでとりあえずお風呂にでも入ろうかと思っていた時、玄関のチャイムが鳴った。
My Heart Blueの歌詞を読んだ事がない人には全く分からない描写があったと思いますので、一応貼っておきます。
思い描いた理想の日々は
ある日突然崩れ落ちて
思い描いた理想の夢も
誰かに奪われ消え去った
うまく行かない世界でも
天才に溺れる世界でも
生きようと思えたんだ君がいたから
My Heart Blue さぁ駆け出して
My Heart Blue 振り向かないで
My Heart Blue 青春よ輝け
明日へ向かって
涙を流した日常は
当たって砕けあの日々は
決して無駄じゃないんだって
君が教えてくれたよね
My Heart Blue さぁ思い出して
My Heart Blue もっと飛び出して
My Heart Blue ナミダ枯らして
次のステップへ…
My Heart Blue この日常は
My Heart Blue 昔の日々は
決して無駄じゃないんだって
君が教えてくれたよね
普段通りの日常でも
何も変わらない日々でも
未来に繋がる大事な日
さぁ笑って
My Heart Blue さぁ駆け出して
My Heart Blue 振り向かないで
My Heart Blue 青春よ輝け
本当にありがと
思い描いた日常が
いつか現実になるまで
それまで私は思い続けるよ
My Heart Blue