ライブ…?
放課後の部室で一人、青海はギターの練習をしていた。
授業時間の関係で先輩たちはまだ来ていない。
横山君も風間君も今日は休みらしく、本当に一人だった。
グループチャットに配信されていた水瀬先輩の曲のスコアを見てギターパートを少し弾いてみるが、本当に難しい。今、口を開けばそれくらいの言葉しか出ないだろう。
しばらく練習していると部室のドアが開いた。
「あれ?今日一人?」
大山先輩が不思議そうに尋ねた。
「二人とも予定が合わないみたいで…」
「そっか、遅くなっちゃってごめんね」
「しょうがないですよ、2年は1時間多いんですから」
「青海君は優しいね」
優しいと言われたのは何年振りだろう
そもそもこうやって人と2人きりで対話するのも小学校の時以来だ。
嫌な過去を思い出し、忘れるためにギターを弾き始めるとまた部室のドアが開いた
「おつかれー」
「おつかれさま」
花咲先輩と水瀬先輩が入って来た。
「お二人はいつも一緒ですね」
「そうか?」
「まぁ二人とも同じクラスだしねー」
そんな会話を横で聞いていた水瀬先輩が口を開く
「青海君、あの曲出来そう?」
「頑張って出来るようにします」
不安だが、精一杯の想いでそう伝えた
「ありがとう、無理そうだったらいつでも言って」
この部活に入部して1週間、少しずつ分かって来た
水瀬先輩は冷たい人なのでは無く本当は優しい人で、表情や声のトーンが変わらないのと言葉が足りないせいでそう見えてしまうだけなんだと。
「そうだ青海君」
突然大山先輩が言う
「どうしました?」
「いつもこの軽音楽部がライブしてるスタジオがあるんだけど、来月のライブ呼ばれてるんだよね」
「そうなんですか、ライブ呼ばれるってすごいですね」
「それで、来月のライブ出て欲しいんだけど、行けそう?」
「え…?」
「大山、辞めてやれよ」
花咲先輩が止めに入る
「流石に厳しいよね、ごめんね」
「ちなみに、曲は何曲ですか?」
「持ち時間的に3曲くらいかな、こないだ水瀬君が作ってくれた曲と他2曲はこれまでので」
新曲はもう半分くらい覚えている、他の2曲も何とかなるかも知れない
そう思った瞬間に答えは口から飛び出した
「行きたいです、ライブ出させてください!」
「おまっ来月だぞ!?」
花咲先輩は驚いた表情をしている、当たり前だ。
「先輩達の足を引っ張ってしまわないように来月までに3曲完成させて来ます、絶対に」
胸がバクバクと音を立てて鳴っている、ここで出なければ置いて行かれるんじゃないかと思い焦っていた。
「龍太郎、出させてあげなよ」
水瀬先輩が言う
「本人が出来るって言ってる事を僕らが止めてどうするの、それはただのお節介だよ」
「…分かった」
「ありがとうございます」
「じゃぁ、一応紙のスコア渡しとくね」
大山先輩から受け取った3枚スコアにはそれぞれ
「My Heart Blue」「モンスターからの主張」「シャトルラン」
と言うタイトルがつけられていた。