宿題
昼休みのグラウンド、月1回の軽音部によるコンサートが開かれていた。
櫻崎高校軽音部のOBで、現在はメジャーレーベルで大活躍中のソフィアが軽音部を引退してから開かれていなかったイベントが今年先生たちの尽力で復活した。
ただ人数が多いわけでは無く、機材とポールで作られた弱そうなフェンスが置かれているだけだ。
僕は学校でのライブ中もずっと水瀬先輩から出された「宿題」の事で頭が一杯だった。
いざ書こうとなると歌詞は中々書けない。良い言葉が出てこないから。
「後ろ!盛り上がってるか!!」
水瀬先輩がマイクを掴み叫ぶと後ろで喋りながら見ていた生徒たちが目を見開いて水瀬先輩に注目する。
一通り盛り上げた後、水瀬先輩が口を開く
「えー、新曲やります」
数十人の観客達の声が響いた後にドラムのカウントが鳴る。
「ザクロの実貪って、汚れた服を捨て
脳の奥潰れていく、甘い毒の果実...」
これまでの曲とは全く世界観の違う曲で、キーボードパートは無く水瀬先輩が観客に近付いて歌っている。
時々シャウトが入っていてとてもカッコいい。
「残骨を喰え!ザクロのように...」
サビでボルテージは最高潮に達し、既存曲を大きく上回る盛り上がりを見せた。
ヘドバンをしてる水瀬先輩が見れるのもこの曲くらいだろう
僕はサビ終わりのギターソロに向けて足元のエフェクターを確認する。
タイミングを見て足でボタンを押し、少し前を歩いて行ってスピーカーに足を掛けて演奏する。
一瞬水瀬先輩と目が合ったが、先輩は完全に世界観に入っているのでそのままフェンスを飛び越えて観客席の方へ行ってしまった。これもライブハウスでは中々出来ない事だろう。
大山先輩はそんな水瀬先輩を見て、楽しそうに微笑んでいた。
放課後、部室で先輩たちを待っている間。あの日作っていた宿題の歌詞を完成させようとしていた。
向かいの席に目をやると風間君は必死に辞書を引いて言葉を組み合わせていて、授業で配られたプリントの裏に細かい字で詩を完成させていた。
僕はその間、全体の曲のバランスを考えていた。今まで青春系の曲ばかりだったけれど、「ザクロのように」のような楽曲が出てくるとライブでも浮いてしまう。
なので出来ればそれに世界観が近いような詩を書きたかった。
「言葉に出来ない不安、感情の波の音
世界観や輪廻などに、支配された「予言」」
難しい言葉は出来るだけ使わずに、激しくも内容が入ってくるような詩にする為に頭の中にある言葉を探っていた。
その時、秋口の残暑に汗を垂らした先輩たちが部室へ入って来た。




