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レコーディング後半戦

水瀬先輩がシンセを入れ終わり、風間くんのコード収録が終われば僕の番なので、少し練習して最終確認をする

先輩たちに基礎部分を作ってもらって、僕はギターを入れるだけ。

そういう風に考えれば少し気が楽になるような気がした。

水瀬先輩は目を瞑りながら鍵盤を指で抑え音を入れていた。

収録曲のうち、既存曲の2曲は少し前のライブで先生が録音してくれていた音源を使う事になっていたので、残り4曲を一気に録音する。と言ってもそれぞれ3分か4分ほどの曲なので案外すぐに終わるようで、水瀬先輩も後半の曲に突入しているようだった。

『水晶夜』と『サマーバケーション』はピアノがメインの曲なので、先輩は忙しそうに2台のシンセサイザーを弾いている。


「水瀬ってなんで目瞑ってんのにシンセ弾けるんだろうな」

「まぁ僕らも楽器本体見ずに弾いてるじゃん」

「でもアイツ片手でシンセ弾いてもう片方で2台目弾いて歌うんだろ?」

「中学生の頃にどれだけ練習してたのかが分かるよね」

先輩たちの話はさっきからずっと水瀬先輩の話だ、僕よりも長く共に活動している先輩達から見ても水瀬先輩は凄いんだろうなと思いながら苦手なパートを繰り返す。


「青海君はボーカルギターとか興味ないの?」

突然大山先輩に聞かれ、慌てて答える

「僕は…音痴なんで…」

「そんな事ないよ!絶対向いてる声だから僕たちが卒業した後もボーカルやってて欲しいなあ」

「1年半くらい先なんでまだ大丈夫じゃないですか?」

「意外と1年半ってあっという間かもよ」

「俺ら知らない間に卒業してたりして」

「もう半年後には受験生だしね」

「彼方、言って良い事と悪い事があるだろ?」

大山先輩はフフッと言って笑った

「結局龍太郎君は大学どうするの?」

「志望校はそんなに決まってないけどまあ国立大狙いかな」

「じゃあ離れちゃうねー」

「大学ってそんなもんだろ」

「そっか…」


「彼方は龍太郎と一緒が良いんだ」

少し物悲しそうに話す先輩を、レコーディング終わりの水瀬先輩は冷ややかな目で見ていた

「お、メンヘラ水瀬だ」

花咲先輩が言うと水瀬先輩はそれを横目に風間君を呼びに行った


小走りでやってきた風間君はスコアを片手にレコーディングルームへと入っていく。

僕の3年もあっという間なんだろうか、ふと思う。

先輩達がすぐに録音を終えて出てくるところを見ると、安心していたはずの心に少し焦りが生まれる。

何だかよく分からない不安に駆り立てられて、何だか置いていかれそうな気がして。

それに気付いたのか、水瀬先輩は隣の椅子に座ってそっと頭に手を置いてくれた。

見てみると僕のシャツは汗で濡れていた。

「体調悪い?大丈夫?」

心配そうに聞く水瀬先輩に、精一杯の気持ちで返事をした

「大丈夫です、ありがとうございます」

「しんどかったらいつでも言ってね」

「はい」

心の中がいろんな気持ちで一杯になっていた。

余裕が無いんだろうか、よく分からないがとにかくグルグルと頭が回るような感覚がした。

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