表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/73

第71話:そんな…~ジェイデン視点~

 ゆっくりキャリーヌの元に近づこうとした時だった。サミュエルがキャリーヌを庇う様に、立ちはだかったのだ。そして僕の事をギロリと睨んだ。


「何がそれほどキャリーヌを愛しているだ!兄上はキャリーヌを、大切にしていないじゃないか。現に僕が死んだあと、ティーヌン侯爵家の令嬢を正室に、キャリーヌを側妃に向かえるつもりだったのだろう?兄上はいつも、キャリーヌの気持ちなんてこれっぽっちも考えていないじゃないか!そんなの、本当にキャリーヌを愛していると言えるのかい?」


「うるさい!僕から全てを奪ったサミュエルに、何が分かるんだ!サミュエルさえいなければ…」


 そうだ、サミュエルさえいなければ、キャリーヌは今頃僕のものだったのだ。それなのに!


「たとえサミュエル様がいらっしゃらなくても、私はジェイデン殿下と婚約する事はありませんわ。ジェイデン殿下、あなた様が私に婚約解消を申し出たあの日に、私の愛情は綺麗さっぱり無くなりました。たとえこの命を奪われようと、私があなた様を再び愛し結婚する事はありません!私は、ジェイデン殿下を愛していません!いい加減現実を見て下さい」


 キャリーヌが真っすぐ僕を見つめている。その瞳からは、明らかに怒りを感じる。どうしてだい?どうしてそんな目で僕を見るのだい?僕たちは愛し合っていたはずなのに…


 “ジェイデン殿下、キャリーヌはもう、あなた様の事は好きではないのです。キャリーヌは今、サミュエル殿下と未来に向かって進もうとしているのです。キャリーヌにとって、ジェイデン殿下はもう、過去の人物なのですよ。過去の人物がどうあがこうが、ともに未来に進むことは出来ないのです。いい加減、お気づきになってはいかがですか?”


 モニター越しにため息をつきながら、訳の分からない事を言っている王女。


「僕は…」


「いい加減にしなさい。ジェイデンがティーヌン侯爵と共謀し、サミュエルに毒を飲ませ、亡き者にしようとした証拠は既にそろっているのだ。今すぐジェイデンとティーヌン侯爵を、地下牢へ。さらにジェイデンに協力した医師と使用人たちも、地下牢に連れて行け!」


「父上、待って下さい。地下牢だなんて僕は…」


 必死に父上に訴えるが、僕の方すら向いてくれない。


「母上…」


「ジェイデン、私はあなたの育て方を間違えた様です。王族として、しっかり罪を償いなさい」


 目に涙を浮かべた母上がそう叫ぶと、クルリと反対側を向いてしまったのだ。嫌だ、僕は悪くない。


「キャリーヌ、助けて…」


「ジェイデン殿下、どうかご自分の罪と、しっかり向き合ってください。あなた様は実の弟を亡き者にしようとしたのです。決して許される事ではありません。もちろん、私も許すつもりはありませんから」


「そんな…」


 どうしてみんな、僕にそんな酷い言葉を投げかけるのだい?どうしてみんな、僕の気持ちを分かってくれないのだい?僕はただ、キャリーヌを愛していただけなのに…


 それなのに、どうして…


 気が付くと両脇を抱えた騎士たちに、あっと言う間に部屋から連れ出されると、そのまま薄暗い地下牢へと入れられた。


「おい、僕は王族だぞ。こんな薄暗い地下牢から早く出せ」


 必死に訴える。すると、1人の使用人がクルリとこちらを向いた。あの使用人は、確かキャリーヌの専属メイドだ。どうしてあの女が、ここにいるのだ?


「ジェイデン殿下、お嬢様は何の罪もないのに、あなた様にこの地下牢に入れられたのです。薄暗くて気持ち悪いでしょう?あなた様もこの地下牢で、お嬢様がどんな思いで過ごされたのか、少しは考えてみてください!それでは、失礼いたします」


「メイドの分際で、僕に意見するとはどういう了見だ。ふざけるな!」


 クルリと反対方向を向いたメイドが、そのまま去っていく。あのメイド、絶対に許さない。


 何が“お嬢様がどんな思いで過ごされたか、考えてみてください!”だ。キャリーヌが僕の側妃になると言ったら、すぐに出してあげるつもりだったんだ。それを拒んだのは、キャリーヌ自身。


 ただ…


 ここは本当に薄暗くて気味が悪い。キャリーヌは暗いところが苦手だったな…きっと怖い思いをしていたのだろう。


 キャリーヌ…


 僕は一体、どこで何を間違えたのだろう。つい1年前は、間違いなく幸せだったのに…いつの間にか王太子の座から引きずりおろされ、その上最愛の人、キャリーヌをも失ってしまった。


 僕がラミア王女なんかにうつつを抜かさなければ、こんな事にはならなかったのかな…


 薄暗い地下牢にいると、ついそんな事を考えてしまう。


 僕はただ、キャリーヌさえいてくれたら幸せだったはずなのに…


 愛するキャリーヌを失い、こんな地下牢に入れられるだなんて…


 悲しくて辛くて、どうしてこんな事になってしまったのかわらなくて、ただただ僕は、絶望の涙を流し続けたのだった。

次回、キャリーヌ視点に戻ります。

よろしくお願いしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ