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私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに  作者: Karamimi


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第68話:犯人をあぶり出すために

 “シュテルベンの花のエキスは、1週間毎日飲ませる事で、死に至らしめる毒です。その為、毒を摂取させなければ、これ以上悪化する事も、殿下が命を落とす事もありません。ちなみにこの花の毒は、恨みや憎しみを込める事で、より強力な毒になるのです”


 恨みや憎しみを込める?魔術師様は、一体何を言っているのだろう。訳が分からず、王妃様と顔を見合わせた。


 “実はシュテルベンの花の毒単体では、人間を死に至らしめる事は出来ないのです。魔力が含まれたエキスと一緒に、殺したいほど憎い相手を思い浮かべながら自分の血を混ぜる事で、シュテルベンの毒に強い呪いがかかり、より強力な毒になるのです。ただ、普通の人間がいくら恨みを込めながら血を混ぜても、魔力が含まれていなければ強力な毒にはなりません。きっと犯人の傍には、魔法が使える人物がいるはずです”


「魔術師様のお話が本当なら、一体誰がサミュエルを?サミュエルを殺したいほど憎んでいる人間なんて…もしかして…いいえ、さすがにそんな事は…」


 王妃様が、完全に混乱している。きっとジェイデン殿下の顔が浮かんだのだろう。私も彼の顔が、一番に浮かんだのだ。


 でも、いくらジェイデン殿下が王族とは言え、そう簡単に魔法を使える人物と繋がる事が出来るのかしら?それに、実の弟を呪い殺そうとするだなんて、いくら何でも…


 “王妃殿下、キャリーヌ嬢、信じがたい話で混乱されているのは分かります。そもそも、どうやってサミュエル殿下に、毒を飲ませたのか…私の見解では使用人の中に、犯人の協力者がいると思われます。きっと食事か何かに、毒が入れられていたのでしょう”


「食事に毒ですって?でも、ここ数日、サミュエル様はろくに食事を摂っていらっしゃらなかったわ。それに今も、眠っていらっしゃいますし。起きた時に、水と薬を飲むくらいで…」


 そう、今も意識がないまま、ずっと眠っているのだ。このまま目覚めないのではないかと、気が気ではない。


 “それなら、もしかしたら薬か水に毒が仕込まれていたのかもしれない。とにかく、サミュエル殿下に関わった使用人たちを、徹底的に監視してください。確かサミュエル殿下が倒れてから、4日が経過したとおっしゃっていましたね。きっと今も犯人が、シュテルベンの花のエキスに自分の血液を入れ、呪いをかけているはずです。これ以上サミュエル殿下に、毒を飲ませない様にしましょう。私に良い考えがあります。犯人を捕まえるために、協力してくださいますか?”


 モニター越しに、真っすぐ私たちを見つめるカイロ様。隣には、ミリアム様も強く頷いている。顔は見えないが、魔術師様も協力してくれる様だ。


「皆様、サミュエル様の為に、本当にありがとうございます。サミュエル様をこんな目に合わせた犯人が、私は憎いです。私に出来る事なら、何でもします。どうか、よろしくお願いします」


「キャリーヌちゃんの言う通りですわ。サミュエルの為に、本当にありがとうございます。私も全力で協力いたします。私共に出来る事があれば、何なりと申してください」


 王妃様と一緒に、頭を下げた。


 “分かりました。ではまずは、サミュエル殿下が口にするものを一度回収し、魔術師に見せて下さい。それから、さっきも申し上げた通り、サミュエル殿下に関わった使用人や護衛たちを、徹底的に監視してください。出来れば彼らの行動を、映像に残してくれると助かります。それから…大変言いにくいのですが、犯人はきっと権力を持った人物だと考えております。ですから、その…”


 カイロ様が、言いにくそうにしている。そんなカイロ様の気持ちに気が付いた王妃様が、重い口を開いた。


「確かに魔力を持った者を雇えるほどの人物と言えば、王族や高貴な貴族しか考えられません。ジェイデンが一番怪しいでしょう。もしかしたら王宮に出入りしている貴族の中に、犯人がいるかもしれませんし。特にサミュエルが王太子になる事を反対していた貴族を中心に、徹底的に監視いたします」


 王妃様が真っすぐモニターを見つめながら、そう言ったのだ。王妃様にとっては、ジェイデン殿下もお腹を痛めて生んだ可愛い子だ。そんなジェイデン殿下を疑わなければいけない王妃様の気持ちを考えると、胸が張り裂けそうになる。


「キャリーヌちゃん、私の事を心配してくれているのね。ありがとう。でも、もしジェイデンが犯人だったら、私は母親として、あの子の悪事を暴かなければいけないの。それが母親でもある、私の責任だから。だからどうか、私の事は気にしないで」


 私の視線に気が付いた王妃様が、悲しそうに微笑んだのだ。ただ、その瞳からは強い意志を感じる。きっと王妃様はもう、腹をくくっているのだろう。


 “それでは、今話した内容で動きましょう。王妃殿下、キャリーヌ嬢、何かあれば、すぐにまた連絡を入れて下さい”


「カイロ様、ミリアム様、魔術師様、本当にありがとうございます。このご恩は、一生忘れませんわ」


 “もう、キャリーヌは大げさね。まだ、犯人を捕まえた訳ではないのよ。それに私たちに感謝してくれるのなら、あなた達の婚約披露でアラステ王国を訪問した時に、サミュエル殿下と一緒にしっかりとアラステ王国を案内して。私、アラステ王国に行くのを楽しみにしているのだから”


「もちろんですわ。アラステ王国の魅力を、目いっぱい伝えさせていただきます。その為にも、早くこの問題を解決しないといけませんね」


 “そうよ、その意気よ。それにしても、どうしてすぐに、私に相談してくれなかったのかしら?すぐに相談してくれたら、キャリーヌがこんなにやつれてしまう事もなかったのに…本当にキャリーヌは!”


 ぷんぷん怒っているミリアム様。そんな彼女を見ていたら、なんだか心が少し軽くなった。


 1ヶ月後、ミリアム様とカイロ様がアラステ王国に来た時、サミュエル様と笑顔でアラステ王国を案内できるように、この事件をしっかり解決しないと。


 その為にも、やらなければいけない事はただ1つ。

次回、ジェイデン視点です。

よろしくお願いします。

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