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私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに  作者: Karamimi


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第65話:持つべきものは友人です

「サミュエル様、しっかりしてください。どうか私を置いて、逝かないで下さい」


 意識がもうろうとしているサミュエル様に、必死に声を掛けた。


「キャ…リ…ヌ」


 必死に私に手を伸ばしてきたサミュエル様の手を、ギュッと握る。どうしてこんな事になってしまったのだろう。私がもっと気にかけていたら、こんな事にはならなかったのだろうか…


 もしこのまま、サミュエル様が私を残して逝ってしまわれたら…


 考えただけで、涙が溢れだす。


「キャリーヌちゃん、ここ数日、ろくに寝ていないのでしょう?少し休んで。あなたが倒れたら、きっとサミュエルが心配するわ」


 王妃様が私に声をかけてくれる。でも、こんな状況でサミュエル様から離れる事なんて出来ない。


「王妃殿下、お気遣いありがとうございます。ですが今は、サミュエル様と離れたくはないのです。どうか傍にいさせてください」


 ここ数日、ろくに寝ていないし食事もほとんど摂れていない。というよりも、もし私が寝ている間にサミュエル様の容態が急変したら…そう考えると、寝てなんていられないのだ。


 もちろん、サミュエル様の事が心配すぎて、食事も喉を通らない。とにかく今は、サミュエル様の傍にいたいのだ。


「お嬢様、ミリアム殿下から、何度も通信が入っているのですが…」


 クラミーが申し訳なさそうに、私に話しかけてきたのだ。


「キャリーヌちゃん、ミリアム殿下とお話をして来たら?今サミュエルは薬が効いて眠っているし、私もいるから」


 ミリアム様…


 そういえばサミュエル様が倒れてから、ミリアム様と話をしていなかった。この不安な気持ちを、誰かに聞いて欲しい…


「分かりましたわ。王妃殿下、どうかサミュエル様の事を、よろしくお願いします。もしサミュエル様に何かあれば、すぐに教えてください。それでは、一旦失礼いたします」


 そう伝え、サミュエル様の部屋を出た。そして、私の為に準備してくれている部屋へと向かい、通信機を手に取り、ミリアム様と通信を繋ぐ。


 “キャリーヌ、久しぶり…て、あなた、なんて顔をしているの?そんなにやつれてしまって。一体何があったの?”


 モニター越しに見るミリアム様の姿。数日話をしていないだけなのに、なんだか妙に懐かしい。ミリアム様の顔を見たら、今まで溜め込んでいた気持ちが、一気に爆発した。


「ミリアム様、サミュエル様が…サミュエル様が…もしサミュエル様がこのまま命を落としたら、私は一体どうすれば…」


 籍を切ったように、一気に声を上げて泣いた。


 “キャリーヌ、落ち着いて頂戴。一体何があったの?もしかして、ジェイデン殿下に何かされたの?こうしちゃいられないわ、今すぐ私もアラステ王国に向かわないと”



 “ミリアム、君が一旦落ち着いた方がいい。それでキャリーヌ嬢、サミュエル殿下の身に何があったのだい?私達にもわかる様に説明してくれ”


 どうやらミリアム様の傍にいたカイロ様が、混乱しているミリアム様をなだめている様だ。カイロ様、相変わらずミリアム様にベッタリね。私も2人みたいに、幸せになりたかった…


 2人の仲睦まじい姿を見たら、増々涙が溢れだす。


 “キャリーヌ嬢、落ち着いて。ゆっくりでいいから、話してごらん”


 珍しく私に優しく語り掛けるカイロ様。彼の隣には、真剣な表情で頷くミリアム様の姿も。私はサミュエル様の身に起こった事を、事細かく説明した。


 “キャリーヌの言う通り、何か変よね。病気でもないのに、そう何日も体調を崩すだなんて。疲れが出たとしても、2~3日もすれば元気になりそうなのに。それに日に日に容態が悪化していくだなんて…毒でも盛られているのではなくって?”


 “こら、ミリアム、言葉を慎みなさい!王太子になる事が決まっているサミュエル殿下に、誰が毒を盛るというのだ…”


 あっ!と言わんばかりに、カイロ様が口を押えた。


 “ジェイデン殿下に決まっているわよ。あの人、まだキャリーヌを諦めていないのでしょう?サミュエル殿下さえ消えれば、キャリーヌも王太子の座も手に入ると思っているのではなくって?”


「ミリアム様、いくら何でもジェイデン殿下がサミュエル様に毒を盛るだなんて…それに毒物の検査も行いましたが、反応はありませんでしたわ。だから原因が分からなくて…」


 私達も毒の線を疑ったが、毒物は検出されなかったのだ。


 “毒物が検出されない毒も、この世には存在するからね。かと言って、サミュエル殿下が毒を盛られているという確証もない。もしかしたら、何か病気が隠れているのかもしれないな。キャリーヌ嬢、サミュエル殿下について、気になる点は何かないかい?”


「気になる点ですか?特に何も…そういえば、サミュエル様の首に、花の形をしたピンクのアザが出来ていましたわ。まるで肌に刻まれたような感じの珍しいアザで…」


 “首に花のアザか…ありがとう、一度こちらでも調べてみるよ”


 “キャリーヌ、きっとサミュエル殿下は大丈夫よ。だってやっと2人は結ばれたのですもの。そう簡単に、引き裂かれてたまるものですか!そうでしょう?キャリーヌ。ごめんね、こんな時に傍にいてあげられなくて…”


「カイロ様もミリアム様も、ありがとうございます。2人に話しを聞いてもらって、少し気持ちが落ち着きましたわ。それから、ミリアム様はずっと私の傍にいて下さっていますわ。ほら、ここに」


 ミリアム様に貰ったお揃いのブローチを指さした。ミリアム様は、ずっと私の傍にいてくれている。そして、こうやって助けてくれるのだ。


 “とにかく、一度我が国の医者や魔術師たちに話しを聞いてみるよ。キャリーヌ嬢が言っていた首のアザが、私も気になるし。分かり次第、すぐに連絡を入れるよ”


「ありがとうございます、カイロ様。どうかよろしくお願いします」

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