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私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに  作者: Karamimi


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第54話:アラステ王国に帰ってきました

「サミュエル様、アラステ王国に入った様ですわ。懐かしいです」


 あの日、家族に見送られながら、訳が分からず馬車に乗せられ国を出た事を思い出す。辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうだった。


 そして今日、やっとアラステ王国に帰って来ることが出来たのだ。お父様やお母様、お兄様、お義姉様は元気にしていらっしゃるかしら?早く皆に会いたいわ。


 でもきっと、まずは王宮に向かうわよね。もしかしたら私の家族も、王宮に来てくれているかもしれない。


 ただ…王宮にはジェイデン殿下もいる…正直会いたくない…


 そう思っていたのだが…


「あら?王宮に向かう道から外れている様ですが…」


 なぜか王宮のある方とは別の方向へと向かっているのだ。


「まずはマディスン公爵家に向かって、キャリーヌを送り届ける予定だから、この道であっているよ。キャリーヌにとって王宮は、あまりよい思い出はないだろう?僕たちの婚約が正式に結ばれるまでは、王宮には足を運ばなくていいよ」


「ですが私とサミュエル様は、もう既に正式に婚約する事が決まっているのではないのですか?それならやはり、一度王宮に足を運んで、貴族や王族の方たちにご挨拶をした方がいいかと」


 私は次期王妃になる身だ。いくら疲れているとはいえ、帰国した足で王宮に向かい、陛下や王妃殿下、主要な貴族たちに挨拶をするべきだと考えたのだが…


「キャリーヌは疲れているから、そんなに気を遣わなくていいよ。それに王宮には…いいや、何でもない。ほら、公爵家が見えて来たよ」


 ふと窓の外を見ると、懐かしい我が家が。あの日登城して以降、一度も帰る事が出来なかった我が家。外には両親や兄夫婦の姿も。家族を見た瞬間、再び涙が込みあげてきた。そんな私を、サミュエル様が優しく抱き寄せる。


 公爵家の中に入ると、ゆっくりと馬車が停まった。


「さあ、キャリーヌ、家族の元に行こう」


 すっとサミュエル様が背中を押してくれたのだ。そして、サミュエル様と一緒にゆっくりと馬車を降りた。


「お父様、お母様、お兄様、お義姉様、ただいま戻りました」


 令嬢らしくカーテシーを決める。ただ、私の瞳からは涙が溢れ出ている。


「キャリーヌ、おかえりなさい。よかったわ、元気そうで」


「キャリーヌちゃん!!」


 お母様とお義姉様が抱きしめてくれる。その瞬間、さらに涙が溢れだす。2人も泣いていた。お父様とお兄様も、目に涙を浮かべて、後ろから抱きしめてくれた。


 私、本当に帰ってきたのね。家族の元へ…


 それが嬉しくてたまらない。きっと私の事を、ずっと心配してくれていたのだろう。


「キャリーヌ、長旅で疲れているだろう。サミュエル殿下、キャリーヌを連れて帰って来てくださり、ありがとうございます。さあ、中に入ってください」


 ひとしきり抱き合った後、お父様に促され、懐かしい我が家へと入っていく。ただ、なぜかお父様とお兄様、サミュエル様は別室に行ってしまった。


「サミュエル殿下は3ヶ月もの間、この国を離れていたから、色々と話があるのよ。キャリーヌは疲れているでしょう?部屋に戻って、ゆっくり休みなさい」


 サミュエル様を見つめていた私に気が付いたお母様が、そう声をかけてくれた。確かに疲れてはいるが、このまま部屋に戻って1人で過ごすのもなんだか寂しい。


 それに、お話しが終わった後、サミュエル様の見送りもしたいし…


「せっかく帰って来たので、お母様やお義姉様とお話しがしたいですわ。お茶でも飲みながら、少し話をしませんか?ただ、ミリアム様に通信だけ入れてもいいですか?」


 今はもう少し家族の元にいたい。そう思ったのだ。それでも私が無事アラステ王国に帰れたか心配しているであろうミリアム様に、通信だけは入れておきたい。


「それじゃあ、お茶にしましょう。久しぶりに女3人で話をするものいいものね」


「そうですわね。私もカリアン王国の事が聞きたいですわ」


「それではすぐに戻りますので、居間で待っていてください」


 そう伝え、一旦お母様たちと別れ、自室に戻ってきた。久しぶりに入った自分の部屋。あの日のままのお部屋に、なんだか懐かしさを覚えた。


 ただ…


 お母様とお義姉様が待っているのだ。早く戻らないと。急いで通信を入れ、ミリアム様に無事帰国した事を報告した。実は私達、毎日の様に通信をしている。


 さすがに自国に戻ったのだから、そろそろ通信の頻度を減らさないと…そう思ってはいるが、やはり毎日ミリアム様と話がしたいのだ。


 今後も無理のない範囲で、ミリアム様とお話しがしたいと考えている。


 通信が終わると、すぐにお母様たちの元へと向かったのだった。

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