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私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに  作者: Karamimi


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第53話:旅立ちの時です

「キャリーヌ、気を付けて帰るのよ。サミュエル殿下と仲良くね。サミュエル殿下、どうかキャリーヌをお願いしいたします」


「キャリーヌがいなくなると思うと、なんだか寂しいな。またいつでも遊びにおいで」


「お兄様、お姉様、グラン、長い間お世話になりました。またいつか必ず遊びに来ます。本当にありがとうございました」


 お姉様夫婦と甥のグランに頭を下げる。


 今日はいよいよ、アラステ王国に帰る日だ。あの日逃げる様に国を出たことが、随分昔の様に感じられる。あの時の私は、全てに絶望し、悲しみのどん底にいた。そんな私を支えてくれたお姉様家族には、感謝しかない。


 今日だって、わざわざ私の為に王宮まで足を運んでくださったのだ。そう、私は今回、アラステ王国が手配した馬車で、サミュエル様と一緒に帰国をするのだ。行きはクラミーがいてくれたとはいえ、1人でここまで来た。


 でも帰りは、サミュエル様と一緒だ。


「キャリーヌ嬢、君のお陰で、ミリアムと心が通じ合う事が出来た。これからは私がミリアムを支えて行くから、どうか安心して国に帰ってくれ」


 胸を叩きながらアピールしているのは、カイロ様だ。


「ありがとうございます、どうかミリアム様の事を、よろしくお願いいたします」


 きっとカイロ様なら、ミリアム様を幸せにしてくれるだろう。そう思っている。


「キャリーヌ嬢、色々と妹がお世話になったね。君のお陰で、妹の世界が変わったよ。ありがとう」


 何と王太子殿下にまで、お礼を言われたのだ。お世話になったのは、私の方なのだが…


 必死にその事を訴えたが、笑って聞き流されてしまった。ちなみにサミュエル様と王太子殿下は、随分と仲が良くなった様で、今後も積極的に交流を深めていこうと話していた。


 そして最後は…


「キャリーヌ、あなたに会えて私、本当に幸せよ。離れていても、ずっとあなたの事を思っているわ」


「ミリアム様…私もです!それにこのブローチもありますし」


 今日も私とミリアム様の胸には、あのブローチが光っている。


「それからこれ、映像型通信機よ。この通信機があれば、いつでも顔を見ながら話しが出来るのですって。グランズ王国にいる次兄が贈ってくれたの」


「まあ、ミリアム様のお兄様がですか?このような高価なものを、よろしいのですか?」


「ええ、もちろんよ。兄が私たちの為に贈ってくれたのだから。キャリーヌ、もしあなたに何かあったら飛んでいくから。サミュエル殿下、どうかキャリーヌをよろしくお願いします」


「もちろん、僕が責任を持ってキャリーヌを幸せにします。ミリアム殿下、本当にお世話になりました。なんとお礼を言っていいか…」


「お礼を言うのは私の方ですわ。キャリーヌ、自国に戻った後、しばらくは大変かもしれないけれど、きっとあなたなら大丈夫よ。もし何か困ったことや悩みがあったら、すぐに連絡をしてきて」


「ありがとうございます、ミリアム様。この映像型通信機があれば、いつでもお話しできますものね。帰国したら、すぐに通信を入れますわ。ミリアム様、本当にありがとうございました」


 改めてミリアム様に頭を下げ、ギュッと抱きしめた。次はいつ会えるか分からない。でも…きっと私たちの友情が、色あせる事はない。そう確信している。


「キャリーヌ、そろそろ行こう」


「はい。それでは皆様、本当にお世話になりました」


 サミュエル様と馬車に乗り込む。そして、ゆっくり馬車が動き出した。手を振り見送ってくれる人たちに、私も必死に手を振り返す。


「本当にありがとうございました。いつかまた、この地に必ず来ますから」


 馬車の中から必死に叫ぶ。きっともう、聞こえていないだろう。それでも私は、叫ばずにはいられなかった。傷つき全てを奪われた私が、身一つで避難したカリアン王国。


 そんなカリアン王国で、沢山の経験をし、沢山の事を学んだ。そしてこの国で出来た、かけがえのない人達。私にとって、全てが宝物だ。


「キャリーヌ、寂しいのかい?さあ、涙を拭いて」


 次から次へと溢れる涙を、サミュエル様がハンカチで拭いてくれた。


「サミュエル様、私、この国でたくさんの事を学びました。この国には、沢山の思い出があって…もちろん、アラステ王国に帰りたくないという訳ではないのです。ただ…思い出が多すぎて…」


 どうしても自分の中で、消化でききれないのだ。


「分かっているよ、キャリーヌにとってカリアン王国は、第二の故郷なんだよね。キャリーヌ、改めて僕と一緒に帰国する事を選んでくれて、ありがとう。ミリアム殿下に負けないくらい、僕がキャリーヌを支えるから」


 ギュッとサミュエル様が私を強く抱きしめた。大きくて温かい、サミュエル様。この温もりが、私に安心感を与えてくれる。


「私も、サミュエル様を支えられる様に頑張りますわ。私達、絶対に幸せになりましょうね」


 長い年月を経て、やっと私たちは結ばれたのだ。その上私の行いのせいで、2度もサミュエル様を傷つけてしまった。


 だから今度は、私がサミュエル様を支えたい。


 そうよ、泣いている場合ではないわ。サミュエル様を支えられる様に、これから頑張らないと!

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