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第26話:アラステ王国も落ち着き始めた様です

 カリアン王国に来て、半年以上が過ぎた。すっかりカリアン王国にも慣れ、毎日楽しい日々を送っている。


 それもこれも、ミリアム様のお陰だ。なぜか令嬢たちに嫌われていた私、そんな私とお友達になってくれたミリアム様。彼女がいてくれたから、今の私の生活がある。


 そんなミリアム様だが、最近は随分口下手も解消し、婚約者のカイロ様との仲も随分と改善された。少し前には、2人でミリアム様のお兄様のところに出掛けていたし。


 カイロ様は本当にミリアム様がお好きな様で、夜会に参加しても、令嬢たちには見向きもせずに、ずっとミリアム様の傍にいる。


 ミリアム様は


 “あんなにベッタリくっ付かれたら、さすがに鬱陶しいわ”


 なんて言っているが、それでも嬉しそうだ。大切な人の幸せそうな顔を見られるのは、私にとっても嬉しい。


 ただ…


 仲睦まじい2人を見ていると、なぜか無性に悲しくもなる。あんなにも婚約者から大切にしてもらっているミリアム様が、羨ましくも感じる。


 私は元婚約者を他の女性に取られたうえ、側妃になれとまで言われたのだ。私もミリアム様の様に、誰かに愛されたい…


 母国が大変な時に1人逃げて来た私が、何を図々しい事を思っているのだろう。分かってはいるが、2人を見ていると、ついそんな事を考えてしまうのだ。


 私もいつか、素敵な殿方と…


 そんな妄想をしてしまう事もある。妄想するだけなら誰にも迷惑をかける訳でもないから、いいだろう。そう勝手な解釈をしているのだ。


 今も1人、恋愛小説を読みながら、私にも素敵な殿方が現れないかしら?なんて妄想をしているところだ。最近の私は、もっぱら恋愛小説を読んでいる。恋愛小説を読むと、なんだか幸せな気持ちになれるからだ。


「お嬢様、居間で奥様がお待ちです」


 1人妄想にふけっていると、クラミーが話しかけてきたのだ。もう、いいところだったのに!何てことは、言えない。


「お姉様が?わかったわ、すぐに行くわね」


 急いでお姉様が待つ居間へと向かう。


「お姉様、お呼びですか?あら?お義兄様も一緒なのですね。何かありましたか?」


 お姉様とお義兄様が、わざわざ私を呼び出すだなんて。もしかして、アラステ王国に何かあったのかしら?


「キャリーヌ、そんなに不安そうな顔をしないで。実はね、アラステ王国に進展があったの。結論から言うと、王太子殿下でもあるジェイデン殿下は、王太子の座を引きずりおろされたわ。そして新たに、第二王子でもあるサミュエル殿下が、次の王太子殿下になる事が内定したの」


「えっ?一体どういうことですか?ラミア殿下はどうされたのですか?」


「ラミア殿下は、ディステル王国の国王陛下と王妃殿下が引き取って行かれたそうよ。“ラミアが本当にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。知らなかったとはいえ、私共の責任です”そう言って何度も頭を下げられたそうよ。お父様の元にも足を運ばれ、謝罪と慰謝料まで置いて行かれたとの事よ」


「ディステル王国の陛下と王妃殿下が、まともな方でよかったな。まあ、当然と言えば当然の行いではあるが」


「身内可愛さに、その当然の行いが出来ない人も多いのだから、やはりディステル王国の陛下たちはまともだったという事よ。それからこれ、ディステル王国の王妃殿下から、あなたへの謝罪のお手紙と、色とりどりの宝石を使ったアクセサリーが届いているわ。さすが宝石鉱山を沢山持っているディステル王国だわ。こんなにも美しい宝石は、見たことがないもの」


 お姉様がこれでもかというくらい、大きな宝石が付いたアクセサリーを沢山持ってきたのだ。


「私にですか?こんな高価なもの、さすがに受け取れませんわ」


 確かに私は被害者ではあるが、元はと言えば愚かな元婚約者が全て悪いのであって、ディステル王国の王妃殿下には何の罪もない。さすがにもらえない。


「キャリーヌが受け取らなくてどうするの?王妃殿下の謝罪の気持ち、素直に受け取ってあげたら?その方が王妃殿下も、お喜びになるのではなくって?それに送り返すなんて失礼な事は出来ないから、あなたがいらないなら捨てるしかないし…」


「捨てるだなんて!分かりましたわ。頂きます」


「よかったわ。とにかく、これでアラステ王国は随分と落ち着てきているから、キャリーヌは何も心配しなくていいからね」


 そう言ってお姉様がにっこりとほほ笑んだのだ。国が落ち着いたという事は、私もアラステ王国に帰らないといけないのね…


 分かっている、私はアラステ王国の公爵令嬢で、今は安全のためお姉様の家に身を寄せさせてもらっている事を。


 でも…


「キャリーヌ、そんな顔をしないで。国が落ち着いてきたとはいえ、あなたが国に帰れる日は少し先になりそうなの…まあ、色々と問題があってね。だから、もう少しこの国にいなさい。問題が全て解決するまでは。大丈夫よ、あなたが国に帰るときは、何もかも解決した時だから」


 お姉様が私の肩に手をあて、そう呟いたのだ。


「とにかくしばらくは、あなたの生活が変わる事はないから…いいえ、ある意味変わるのかしら?ん?」


「お姉様?」


 お姉様が1人混乱している。一体どうしたのかしら?


「何でもないのよ、しばらくは今まで通り、貴族学院に通えばいいからね」


 よくわからないが、しばらくはまだ、この国にお世話になれる様だ。よかったわ、せっかく仲良くなったミリアム様や友人たちと急にお別れだなんて、寂しいもの。


 それにカリアン王国には…

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