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第25話:良い方向に進んでいます~ミリアム視点~

「お義姉様、これは一体?」


「このモニターは、ディステル王国にいるアリエルと、顔を見ながらお話しできる最新の機材なのよ。凄いでしょう?たまたま他国に視察に行ったディステル王国の国王陛下が見つけ、買ってきてくださったのよ。これで直接話が出来るわ」


 他国の人間と、このモニターを通じて話が出来るですって?あり得ないわ、そんな事が出来る機械があるだなんて…


 信じられなくて、モニターを見つめた。すると、次の瞬間、モニターにお義姉様くらいの女性が映ったのだ。後ろにはお兄様くらいの男性もいる。これは魔法なの?ディステル王国にも、魔法使いが?


 “モリアナ、久しぶりね。急にどうしたの?大切な話があると聞いたのだけれど”


「アリエル、それに国王陛下も、お久しぶりです。実は私の義妹が、どうしてもアリエルと陛下にお願いがあるという事で。わざわざカリアン王国から来ているのよ。さあ、ミリアム、アリエルたちに、キャリーヌ嬢の母国で起きている事を話してあげて」


 急にお義姉様に、話しをふられた。どうしよう…


 まずは自己紹介からしないと。


「お初にお目にかかります。カリアン王国の第一王女、ミリアム・キャリア・カリアンと申します。本日はお忙しい中、私の為にお時間を取って頂き、ありがとうございます。どうか…どうか私の友人、キャリーヌをお助け下さい」


 “ミリアム殿下とおっしゃいましたね。あなた様のお話しは、モリアナから聞いていますわ。ただ…なんだかイメージが違う様な”


「ミリアムも私と同じように、自分をさらけ出せる大切な人が出来たのよ。ただ、その友人の事で、ちょっと困っていてね。とにかくミリアムの話を聞いてあげて」


 お義姉様がアシストしてくれた。他国の、それも全く関係のない人と話をするだなんて、正直無礼を働かないか不安で仕方がない。でも、せっかくお義姉様がお膳立てしてくれたのだ。


 やるしかない。


 ゆっくり深呼吸をすると、私はお義姉様やお兄様に話した時と同じように、今アラステ王国で起きている事を必死に話した。


 つたない私の説明を、真剣に聞いてくれるディステル王国の陛下と王妃殿下。気が付くと涙が溢れていた。


 “なんて事なの…確かにラミアからは、アラステ王国の王太子殿下との結婚話が上がっている為、しばらく国には帰らない。正式に決まったら、その時はまた改めて話をするとは聞いていたけれど、まさかそんな事になっていただなんて…”


 “だから私たちが何度も”王太子殿下と結婚話が出ているのなら、アラステ王国の国王陛下と一度きちんと話がしたい#と伝えても、はぐらかしていたのか。まさか婚約者がいる相手を無理やり奪い取り、アラステ王国に居座っているだなんて…何たる愚かで恥さらしな事を…”


 “既に王太子殿下は婚約者と婚約を解消しているから、問題ないと言っていたわよね。それなのに、全く話が違うじゃないの。我が国はアラステ王国に比べると大きな国だから、きっとあちらの国王陛下も、我が国に忖度してラミアの事を言い出せなかったのね。なんて事なの…他国に多大な迷惑をかけるだなんて…あなた!”


 “分かっている、すぐにアラステ王国に向かい、愚かなラミアを連れ戻そう。それから、しっかりあちらの陛下にはお詫びをしないと。それにキャリーヌ嬢にも。一番の被害者は、キャリーヌ嬢なのだろう?でも、どんな顔をして謝罪に行けばいいのだ?我が妹ながら、恥ずかしすぎてアラステ王国の王族や貴族に合わせる顔がない…”


 “あなた、しっかりしてください!とにかく、これ以上我が国の恥をさらす訳にはいきません。ミリアム殿下、それにモリアナ、よくぞ知らせて下さいました。知らなかったとはいえ、ラミアを野放しにした私たちの責任です。キャリーヌ嬢にもまた改めて謝罪させてください。それでは、私たちはカリアン王国に向かう準備があるので、これで”


「ちょっと待って、アリエル…」


 お義姉様の叫び声も空しく、通信が切れてしまった様だ。それにしても、陛下と王妃殿下のあの慌てよう。本当にラミア殿下の行いを、全く知らなかったのね。


「本当にせっかちなのだから。2人で盛り上がって、こちらの意見など全く聞かないのだから。でも…自分の国の王族が、他国で醜態をさらしていると知ったら、気が気ではないわよね。ミリアム、これできっと、もうアラステ王国は大丈夫よ。近々ラミア殿下も、回収される事でしょう」


 にっこり笑ったお義姉様。いつも無表情だった人だけれど、こんな風に笑うのね。私、やっぱり今まで何も見えていなかったわ。


「さあ、全て解決したし、食事にしましょう。今日はミリアムとカイロ様が来てくださると聞いて、料理長が腕によりをかけてお料理を作っているはずよ。それに…今ならミリアムとも仲良く出来る気がするし…ミリアム、王女失格と言って本当にごめんなさい。こんな私だけれど、仲良くしてくれるかしら?」


「もちろんですわ。あの時の私は、本当に王女失格と言うか…人間失格でしたので。どうかこれからは、仲良くしてください。お義姉様」


「よかったわ。そうそう、子供たちを紹介しないとね」


 お義姉様が使用人に合図を送る。しばらくすると、可愛らしい男の子と女の子が入って来た。


「お兄様とお義姉様のお子様ですね。私、子供と触れ合った事がないのですが、仲良くなれるかしら?」


「今のミリアムなら大丈夫だよ。ミリアム、君は本当に変わったのだね。俺も嬉しいよ」


 お兄様が今にも泣きそうな顔で、私を見つめている。お義姉様もカイロ様も、優しい眼差しで見つめてくれている。それがなんだか嬉しかった。


 その後、お兄様の子供たちも加わり、夜遅くまで宴が行われた。お義姉様との沢山お話しが出来た。いつの間にか、苦手だと思っていた人たちともこうやって普通に話しが出来る様になった。


 それが未だに信じられない。


 きっとキャリーヌのお陰ね。キャリーヌ、あなたの国の混乱も、もうすぐ落ち着くはずだわ。近い将来、キャリーヌは母国に帰る事が出来るだろう。


 キャリーヌの喜ぶ顔を想像したら、嬉しくてつい頬が緩んだ。


 でも…


 それと同時に、胸がチクリと痛む。


 それでもお義姉様とアリエル王妃殿下の関係を見ていたら、私たちもきっと大丈夫だ。遠く離れていても、私たちはずっと親友なのだから。


 そう何度も自分に言い聞かせたのだった。

長くなりましたが、次回からキャリーヌ視点に戻ります。

よろしくお願いします。

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