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第24話:お義姉様の過去~ミリアム視点~

「ミリアムの気持ちはよくわかった。キャリーヌ嬢がミリアムにとって、どういう存在なのかも。でも、他国の事に俺たち他国の王族が口をはさむべきではない。それくらい、ミリアムだってわかっているだろう?とにかく、涙をぬぐって」


 いつの間に私の瞳からは、涙が溢れ出ていた。


 確かにお兄様の言う通り、他国の事に他国の王族が首を突っ込むべきではない。そんな事は、私もわかっている。


 ただ…


 やっぱり私は王女失格なのだろう。またお義姉様に呆れられるかしら?それでも私は、キャリーヌの為に何かしたい。王女としてではなく、1人の人間として。


「ミリアム、頭を上げて」


「はい」


 ゆっくり頭を上げると、真顔のお義姉様と目が合った。


「要するに、ディステル王国の陛下に嫁いだ私の友人、アリエルにラミア王女が行っている事を知らせ、彼女の行いを止めて欲しいという事ですね。でももし、ラミア王女の問題が解消し、アラステ王国に平和が戻ったら、キャリーヌ嬢は自国に戻ってしまうのではなくって?そうなると、大切なキャリーヌ嬢と離れ離れになってしまうわよ」


「それでも構いません。キャリーヌは自国に残してきた家族の事をとても心配していましたし。それに母国には、キャリーヌにとって大切な人たちが沢山いるのです。確かに私は、キャリーヌに傍にいて欲しい。でも…それ以上に私は、キャリーヌには幸せになって欲しいのです。それに、離れ離れになっても、私たちの絆は消えない。私はそう信じています」


 自分でもびっくりする程、すらすらと言葉が出てくる。私はキャリーヌの役に立ちたい、たとえ王女失格だとしても!


 真っすぐお義姉様を見つめると、小さなため息をついたかと思ったら、一瞬ほほ笑んだのだ。


 今、ほほ笑んだ?


「ミリアムの気持ちはよく分かりました。すぐにアリエルに連絡を入れて頂戴」


 近くにいた使用人に指示を出しているお義姉様。


「お義姉様?」


「ミリアムにもやっと、心から信頼できる大切な友人が出来たのですね。ミリアム、あの日あなたに“王女失格”だなんて言って、ごめんなさい。あの時のあなたは、まさに昔の私そのものだったから…ミリアムを見ていたら、なんだか昔の自分を見ている様で…それであんな酷い事を。私の方こそ、王女失格だったの。そんな私を助けてくれたのが、親友でディステル王国の現王妃、アリエルよ」


 お義姉様は何を言っているの?かつてお義姉様も、私の様だったというの?


「私もね、ずっと孤独だったの。国王の子供は私1人だったでしょう。両親は忙しくほとんど傍にいてくれない。その上、唯一の子供として、両親はもちろん、周りからの期待も大きかった。だから、立派な女王にならなきゃっていう思いが強すぎて…自分を立派に見せる事ばかりにこだわって、いつしか周りとも溝が出来てしまっていたの。そんな自分が大嫌いで、どうして私はこんな人間なのだろう。こんなんじゃあ、女王なんてとてもなれない。私は王族失格だって、いつも思っていたわ」


 いつも凛として、立派に女王陛下を務めあげているお義姉様が。まさか私と同じ気持ちを抱えていただなんて…


「そんな中、アリエルに出会ったの。彼女は公爵令嬢でありながら、とても相手の気持ちを思いやれる優しい子でね。正直最初はアリエルを見ていると、自分が惨めで仕方がなかった。だから彼女に、酷い言葉を浴びせたこともあった。でもアリエルは、そんな私を見捨てずに、傍にいてくれた。いつしかアリエルの事が大好きになった。彼女のお陰で、少しずつ周りとの溝も埋まったの。でも、彼女はディステル王国の王太子に見初められ、隣国に嫁ぐことになった。寂しくて、行かないで!て言ってしまったの…本当にダメよね」


 涙をハンカチでぬぐっているお義姉様の肩を、そっと抱き寄せるお兄様。


「結局私は、私を助けてくれた友人の門出を、快く見送る事が出来なかった。今でもその事を物凄く後悔しているわ。それなのにアリエルは、今でも私の事をとても大切にしてくれているの。私はね、女王陛下だなんて言われているけれど、1人では何も出来ないの。あなたのお兄様を始め、沢山の人に支えられて何とか女王が出来ているのよ」


 そう言うと、お義姉様がほほ笑んだのだ。


「ミリアムは私よりもずっと、立派な王族だわ。自分の気持ちを犠牲にしてまで、親友の幸せを願ったのだから」


「私は…立派な人間ではありません。正直私は、キャリーヌにずっと傍にいて欲しい、キャリーヌを他の誰かに取られたくない。ずっとそう思っていました。それに今回だって、カイロ様を始め、お義姉様やお兄様、沢山の人に迷惑を掛けました。だから私は…」


「私は迷惑だなんて思っていないよ。ミリアムはキャリーヌ嬢の為に、勇気を出して義姉上に会いに来たのだろう?いくら兄上の奥さんだとしても、他国の女王陛下にお願いに来るだなんて、相当勇気がいったと思う。私は友人の為にそこまで出来るミリアムを、尊敬しているよ」


「カイロ様の言う通りですわ。ミリアム、大切な人を幸せに出来ない人間が、民を幸せに出来ると思いますか?あなたは誰よりも優しく強い人間だと私も思っております。だからこそ、私もあなたに協力したいと思いました。それに…」


「女王陛下、ディステル王国の王妃殿下と通信が繋がりました」



 お義姉様が何かを言いかけたタイミングで、何やら大きなモニターが運ばれてきたのだ。一体何が始まるのだろう。

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