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第11話:ミリアム様は素敵な令嬢です

「ミリアム様、早速お茶をしましょう」


 午後の授業が終わると、急いでミリアム様の元へと向かった。


「キャリーヌはせっかちね。それじゃあ、テラスでお茶にしましょうか。行くわよ」


「はい」


 ミリアム様の手をしっかり握り、テラスを目指す。なぜかミリアム様と一緒にいるときは、令息たちは話しかけてこないのだ。きっとミリアム様がこの国の第一王女だから、皆遠慮しているのだろう。


 そんな高貴な身分の方と私が、一緒にいてもいいのかしら?そう思ったが、私も一応公爵令嬢だし、お世話になっているクレスティル公爵家は、この国で3本の指に入る大貴族と聞いている。だから問題ないだろう。


 それに何よりも、せっかく出来た大切なお友達を失いたくない。もっとミリアム様の事が知りたいし、私の事も知ってもらいたい。そう思っている。


「あなた、本当に馴れ馴れしい子ね。すぐに手をつなぐし」


「馴れ馴れしいですか?でも、他の令嬢たちも、令嬢同士で手を繋いでいたので、手をつなぐのは普通なのかと…もしかして、嫌でしたか?ごめんなさい」


 自国ではほとんどお友達がいなかったので、お友達との接し方が正直分からないのだ。殿下と婚約を結ぶ前は、お友達もいたのだけれど、あの時はどうしていたかしら?う~ん、思い出せない。


「別に嫌ではないわ。そうよね、私達、お友達なのだから、これが普通なのよね。変な事を言ってしまって、その…悪かったわ」


 そう言うと、ミリアム様が私の手をギュッと握ってくれたのだ。なんだかんだ言って、私に合わせてくれるミリアム様。それがなんだか嬉しいのだ。


 テラスに座ると、見たこともないお菓子が並んだ。どれも宝石の様に綺麗なお菓子だ。


「まあ、なんて綺麗なお菓子なのでしょう。初めて見ましたわ」


 お菓子を手に取り、うっとりと見つめてしまう。


「これはお兄様が他国に視察に行った時に買ってきてくれたお菓子なの。たまたま今日、持ってきていたから出しただけよ。別にあなたの為に、急いで準備した訳ではないからね。本当にたまたま持ってきていただけなのよ」


 ミリアム様が、必死に訴えている。この人、本当に可愛らしい人ね。きっとこのお菓子、私の為に準備してくださったのだろう。


「そうだったのですね。他国のお菓子ですか?このような珍しいものを、私が頂いてもよろしいのですか?」


「ええ、あなたは私の友達なのですもの。好きなだけ食べたらいいわ」


「ありがとうございます。それでは早速頂きますわ」


 お菓子を手に取り、口に入れた。


「まあ、なんて美味しいお菓子なのでしょう。口に入れた瞬間、溶けてしまいましたわ。溶けた瞬間、口の中に甘みがジュワッと広がって。こんなにも美味しいお菓子、初めて食べましたわ」


「そんなに気に入ったのなら、全部持って行っていいわよ。私はもう、食べ飽きているから」


「でも、それはさすがに申し訳ないですわ」


 こんな珍しくて美味しいお菓子を、私が一人占めするだなんて。そう思ったのだが、なぜか近くに控えていたメイドに、お菓子を包ませるように指示を出しているミリアム様。


「もうこれはあなたの物よ。いらなかったら捨ててもらっても構わないから」


 そう言ってお菓子を私に渡してくれたのだ。


「捨てるだなんて、そんな事は絶対にしませんわ。大切に頂きますね」


 せっかくだから、お姉様たちにも食べさせてあげよう。


「あなた、とても分かりやすい性格をしているのね。顔に出ているわ」


 嬉しさが顔に出ているか…自国にいた時の私なら、絶対に感情を表に出さなかったのに。


「ミリアム様、私はこの様に感情がすぐに表に出てしまうのです。そのせいでいつも“感情を表に出してはいけません!”と、教育係に怒られていましたわ」


「感情を表現できる事は、素敵な事だと私は思うわ!私は逆に…思った事を上手く言葉に出せないので…いえ、何でもないわ!今の言葉は忘れて」


「ミリアム様も、色々と悩みを抱えているのですね。私、もっとミリアム様の事が知りたいですわ。普段は何をされているのですか?お好きな物や苦手な物は?」


「あなた…私に興味があるの?」


「ええ、ミリアム様はこの国で初めて出来た、大切なお友達ですもの。お友達の事を知りたいと思うのは、当然です。私の事も、ミリアム様に知ってもらいたいですし」


「あなた…変わっているわね…本当に…」


 なぜか今にも泣きそうな顔になったミリアム様。私、何か酷い事を言ってしまったかしら?急に不安になって来た。


「ごめんなさい、何か気に障る様なことを、言ってしまいましたか?」


「いいえ、そんな事はないわ。私ね、こう見えて可愛らしいものが好きなの。あと、お菓子も大好きよ」


「まあ、私もお菓子が大好きですの。お姉様が王都の街に、美味しいお菓子のお店があると言っていたわ。せっかくなので、今度一緒に行きませんか?」


「わざわざ行くの?取り寄せればいいのではなくって?」


「取り寄せてもいいのですが、現地で食べるのがまた美味しいそうなのです」


「そうなのね。ぜひ行きたいわ」


 そう言って笑ったミリアム様。この人、笑うととっても可愛らしい人なのね。


 その後もミリアム様と一緒に、時間が許す限り、話しをしたのだった。

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