祈るもの
クリスマスお疲れ。
「ねえ、ミカ。明日はクリスマスだけど、サンタさんに何を欲しがるの?」
1人の少女が、赤いソファと緑のもみの木が置かれて、特徴的な壁紙が貼られた部屋の中で聞かれる。
「うーん…。そうねえ、ママ。
本当は視力が欲しいけど、それはできないんでしょう?」
少しして、申し訳なさそうに母親が答える。
「ええ、本当にごめんなさいね、ミカ。それはできないの。
でも、他のものは何かないの?
もうお金は一杯あるから、何でもねだっていいのよ?」
少女は少し考えた。
「…じゃあ、ママと遊びたい。パパとも。」
また少しして、母親が言う。
「ごめんね。それもできないの。ママもパパも忙しくて…また今度じゃダメ?」
「嘘つき!」
少女が叫ぶ。
「いつもまた今度、また今度って…!
一体いつならいいの!?いつならまた私を抱きしめてくれるの!?」
しばらくの間の沈黙。
「ああ、本当にごめんなさい…ミカ。でも、許して。これは、あなたのためでもあるから…
あなたの幸せを、わたしたちは祈っているから…」
「ママ!」
少女の悲痛そうな声が響く。
(自分は今、なんと罪深いことをしているのだろう。)
1人の男が、赤いソファと緑のもみの木が置かれ、特徴的な壁紙がはられた部屋で座っている。
目の前には、彼女の姪が、泣きながら母親と話している。
男は、黙って彼女に近づいた。
「ほら、もう行こう、ミカ。もうこれ以上いても意味がないよ。」
「いやだあ…何で、何で…。ママ、もう一回抱きしめてよ!」
(ああ…)
男は、ミカが今まで話していた、彼の姉が映っているモニターを見つめた。
(「映像創生再現機」…。生前の動きや声、姿を模倣し、生成AIによりどんな状況にも対応させられることができる最新技術だが…。こんな、こんなモニター…)
男は、乱暴に電源を落とした。
(ああ、神よ。もしサンタが本当にいて、何でもあげることができるのなら…
彼女に、母親を、もう一度…)
男は、ありえないことをただ神に祈りながら、姉が自殺した3年前を思い出しながら、眠れずにただ泣き叫ぶ少女の肩を持った。
2024。クリスマス記念。
読んでくださってありがとうございました。