【105】上には上がいる
「天音よ! 今回の茨の盗賊団の撃退、大義であった。
ガイアは討伐できなかったものの事実上の盗賊団の解体! これで、世界中で起きていた被害も無くなる事じゃ!
よって、その功績を称え!!!
お主には、【勇者の称号】を与える事とする。
じゃから今後も世界の人々を守る為に尽力してくれ!」
「……あ! 王様。
僕、勇者の称号は要りません」
「……………。」
「…………………。」
「………………………。」
「………………ど……どう言う事じゃ!
理由を聞かせてくれるか!?」
「とくに大した理由は、ございませんが……
僕の目的は、大事な仲間を助けたいだけなのです。
その為に、3英雄のダンジョンにすぐにでも向かいたいのに勇者になってしまったら自由に行動出来なくなってしまうかも知れませんし。妹も助けたいですし……。
ガイアの事も僕が何とかしないといけないとも考えています。
それに、僕は操られたとは言え……一度は盗賊の仲間なりましたし。
元盗賊が勇者を名乗るのは……あまり良く無い事かと!
それを考慮した上で、有難い申し出ではありますが【勇者の称号】は断らせて頂きます。」
「……いやッ…………待ってくれ!
それは、困る!!!」
「困ると言われましても……そこまで、困る事は無いと思いますが?」
「……いや! お前さんに勇者になってもらわなくては困るのじゃ!!!」
「……あんたは、何訳の分からない事を言ってるの!? 別に、天音が勇者にならなくても困ってる人が居れば助けるし!
この国が危なくなったら。また、助けてあげるわよ! そんなに心配しなくてもいいわ。
王様! 天音は、困った人を見捨てないわ!」
「それは……分かっておるのじゃが…………」
「だったら、何よ。
ハッキリ言いなさいよ!!!」
「……ゔぅー〜ーン…………実は……………」
王様が言うには、実は……
ガイアが率いる茨の盗賊団がお城に攻めてくる少し前……
国王は、ある報告を受けて客人に招いていた。
それは、海岸沿いの国境付近で! とある冒険者一行がドラゴン討伐したとの報告だ。
ドラゴンとは、モンスターの中でも最強の部類に属する生物で……
そのドラゴンを倒せる者は、A級以上と見なされ!【ドラゴンスレイヤー】の称号が与えられる。
そして、国王はドラゴンを倒した冒険者達を城へ招くと……
【勇者の称号】と天音に寄贈しようと作らせておいた品々と報酬を全て! その冒険者達に与えてしまったとの事だった。
そして、今! 王国には天音に寄贈できるものは【勇者の称号】くらいしかなく……
その称号を天音が受け取ってくれないと困ってしまうのだ!
と、言われた。
「そう言われても……」と、僕が困っていると! 紅姫が……
「あんたね……何考えているの!? 別に、良いじゃない。
天音は、何も要らないと言ってるんだから。
あんたらの勝手な都合で、押し付けないでよ!」
「……確かに、僕は何も入りませんから。
3英雄のダンジョンだけ! お願いします。」
「……良いのか? 本当にそれだけで…………」
「良いですよ! それだけで、十分です。」
すると! 黙っていた他の貴族達も……
「……国王様! 本人が言ってるのですから、良いではありませんか!!!」
「そうですね……。ドラゴンを倒した者は、やはり凄いですから! 国王様の判断は、間違っていません!!!」
「そうです! 実力だけで言えば、そちらの冒険者の方が上だと思います!!!
その方達が居ればガイアも倒してくれたかも知れませんから!!!」
「……確かに、そうかもしれんが…………
この者達が、国を救ってくれたのも
また、事実!!!」
「しかし、国王様! ガイアは、この者の実の父親と言うではありませんか!?
ならば、家族間の事! 当たり前の事をしたまでです! 国が、この者に感謝する必要すらありません。」
「……それは、いささか冷たくはないかのぉ?」
「いえッ! 私は、そうは思いません!!!」
「私もです!!!」
「……………………。」
「…………………………。」
『まぁ……別に、良いけど。
僕の居ない所で決めて置いて欲しかったよ!」
すると、紅姫が……
「……本当に、貴方達は!!!」
「紅姫! ちょっと待って!!!」
僕は、怒る紅姫を急いで止めると……
「本当に、良いから。
それよりも、僕は早くアクアを助けたいんだ!!!
だから、これ以上はやめてくれ。」
「……《《わかった》》ゎ! 天音が、それで良いなら。これ以上は、何も言わないわ!」
「ありがとう。」
僕の言葉で、紅姫も渋々納得してくれ!
何とか、その場を収めようとした。
「では、それで良いので僕は先を急ぎます!」
「……そ、それならば……では……………」
「ちょっと、待ってください。
御父様!!!」
そう王女様の声が響いた!!!




