表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説

缶コーヒーくんさん

作者: シサマ


 むか~しむかし、とある独身サラリーマンのお部屋に飾られていた、ブラック缶コーヒーの空き缶があったそうな。

 

 そのサラリーマンは、毎日一生懸命働いて、休みの日には好きな事をして、給料が入ったらお洒落して、その努力が報われて、可愛い彼女が出来たそうな。


 彼女への告白が成功した時、ご褒美に大好きな缶コーヒーを飲もうと車の中に入れていたサラリーマン。

 その日の夕方、人生の絶頂にいた彼は缶コーヒーを心ゆくまで味わい、感謝の証に空き缶を綺麗に洗い、幸運のお守りとして部屋に飾ったそうな。


 

 ある冬の日、御主人様の部屋に飾られて快適に暖を取っていた『缶コーヒーくん』は、遠くの路地に捨てられた缶コーヒーの空き缶が、寂しそうに泣いているのを聞いたそうな。


 その缶コーヒーは、砂糖とミルクたっぷりの甘いコーヒーにもかかわらず、人間の拳で滅茶苦茶に握り潰されていて、その悲しさと、御主人様を満足させてあげられなかった悔しさで泣いていたそうな。


 その泣き声から女の子だと思われる『缶コーヒーさん』。

 彼女の御主人様は職場でいじめられ、女友達にも振られ、そのストレスは甘い缶コーヒーを飲んでも収まらず、遂には空き缶を傷つけて路上に捨ててしまったそうな。


 テレパシーで『缶コーヒーさん』の悲しみを知った『缶コーヒーくん』は、どうしても彼女を助けてあげたくなったそうな。


 でも、自分には彼女の缶を元通りにする力もないし、彼女の御主人様に注意する力もない。


 そんな彼が思いついたのは、一緒にリサイクルの溶鉱炉に入って、どろどろに溶けて幸せと不幸せをふたりで分かち合う事。

 幸せな『缶コーヒーくん』と、不幸せな『缶コーヒーさん』を合わせて2で割った『缶コーヒーくんさん』として、新たな缶コーヒーに生まれ変わる事。


 『缶コーヒーくん』は御主人様の部屋から飛び出し、ぼろぼろの『缶コーヒーさん』にピッタリと寄り添って同じごみ箱、同じ運送車、同じ溶鉱炉まで運命を共にし、やがてひとつの缶に生まれ変わったそうな。



 あれから月日が流れ、『缶コーヒーくん』の御主人様は幸運のお守りを失くして悲しんだものの、無事彼女と結婚。

 『缶コーヒーさん』の御主人様も、自分に合う職場を見つけ、優しくなって新しい彼女が出来たそうな。


 そして『缶コーヒーくんさん』は、今日も不幸せな缶コーヒーの空き缶を見つけて、その辛さを分け合って新しい缶に生まれ変わるそうな……。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 優しいお話でほっこりしました。 発想が素敵です(^^)
[良い点] 缶コーヒーが飲みたくなりました( ノД`) じわじわくる語り口が良いですね(´艸`*)
[一言] ええ話やぁ(´;ω;`) 缶コーヒーにも魂がある。 そんなことを思わせるような作品でした。 溶鉱炉の中でドロドロに溶け合う表現が好き。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ