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第四十九章 呪縛



 静かな、森の奥。そこで、アンバーは敵であり、愛しい弟であった存在と、向き合っていた。他の人間は、誰も居ない。


「ハク、僕嬉しいよ。こうやって、ハクと一対一で向かい合えて」


 アンバーは剣を抜いて、敵ににこりと微笑みかけた。純粋に、弟との再会を喜ぶ兄のように。そんな彼の発言に不機嫌そうな顔をして、ロシャは鎌を握り直した。


「ハクって呼ぶなって言ってるだろ。僕はロシャだ。ハクは死んだ。あの日に、死んだんだ」


 そう言った彼はそっと息を吐く。それから、緩く笑みを浮かべて見せた。


「まぁでも……そうだね。僕も嬉しいよ。アンタを本気で殺せるかと思うと」


 邪魔も入らないしね。そう言いながら、彼は大きな鎌をアンバーに向ける。ざわり、と風が吹いて、二人のよく似た、癖のある髪を揺らした。



***



―― 遡ること数分前。


 フィアたちがいる所から少し離れた場所で、クオンとアンバーは共に魔獣を倒していた。元々はあまり戦闘が得意ではない彼らだが、現状ではそうも言っていられない。

 ある程度魔獣が片付いた時、すぐ近くで足音が聞こえて彼らは顔を上げた。その視線の先に立っていたのは影猫のメンバーの内二人……ロシャとブランシュだった。


「直々に相手してくれるみたいだな」


 そう言って、クオンは短剣を持ち直した。警戒の色を濃く銀の瞳に灯して彼らを睨みつける。彼らの強さが見た目にそぐわないことは、一時とはいえ影猫の中に潜入していたクオンには良くわかっている。


「ブラン、この裏切り者は殺さないでね。僕が殺すから」


 ロシャは鎌をアンバーに向けながら言う。ブランはくすりと笑うと小さく頷いて了承の意を示した。


「了解。僕は別にどっちでも構わないし。じゃあ、僕のお相手はそっちの銀髪の……あぁ、シルヴァだった人だね。僕らを欺いた報い、受けてもらうよ」


 ブランシュもそう言いながら、彼の武器である短剣をクオンに向ける。一見無邪気そうに見える二人。しかし、それは大きな間違いだ。幼き少年たちの漆黒の瞳には、殺意の光がともっている。”裏切り者”を殺すことに、快楽さえ覚えているかのように、残酷な光が。

 そんな彼らの姿を見つめていたクオンはそっと息を吐いた。そしてアンバーの方を見て、言う。


「……アンバー。このチビは俺がやるからさ、お前は自分の弟ときちんと、ケリを付けろよ」


 そう言った彼は、ブランシュの腕を強く掴んだ。予想外の行動にブランシュは身動きを取れないまま、大きく目を見開く。そしてキッとクオンを睨みつけ、叫んだ。


「離せよ! 人間風情が、僕に触れるなッ!」


 吠えるようにそう言いながらクオンの腕を振り払おうと躍起になるブランシュだが、華奢であってもクオンは騎士団の一員。簡単に手を振りほどくことなど出来るはずもない。


「ちょっと黙ってろ。すぐに離してやるから」


 ブランシュを窘めるようにそう言ってから、クオンはアンバーに視線を向けた。驚いたように瞬く琥珀の瞳を見つめ、クオンは微笑んだ。


「一回本気で戦って、眼を覚まさせてやれ。それでこそ兄貴ってもんだろ?」


 クオンはそう言って笑うと、ブランシュの腕を掴んだまま、瞬間移動した。クオンに抵抗するブランシュの声が、微かに残る。

 しんと静まり返った空間に残されたのは、アンバーとロシャ。すれ違いの連鎖で絆を失った、哀れな兄弟。


「はぁ……随分お節介なんだね。アンタの仲間は」


 ロシャは呆れたようにそう呟くと、迷わず武器をを構えた。その漆黒の瞳に、もう躊躇いはない。純粋に兄を、アンバーを殺そうとする残忍な悪魔の瞳で、ロシャはアンバーを見据えていた。



***



「ハク……ううん、ロシャは、僕の事が嫌い?」


 アンバーは斬りかかってきたロシャの鎌を剣で受け止めながら、訊ねた。静かな、優しい声で。それを聞き、ロシャはすっと目を細め、笑う。


「嫌いだね。大嫌い」


 反吐が出るほどだ、と彼は言う。声にも表情にも、確かな嫌悪が灯っている。そんな彼の返答に、アンバーはふっと、微笑んだ。


「そっか……良かった」

「は?」


 アンバーの反応に、ロシャは怪訝そうに眉を寄せる。


「何言ってんの? アンタ頭可笑しいの?」


 今自分は嫌いだと言ったのだけれど、とロシャは呟く。今のアンバーの反応は、まるで……好きだと言われたかのように見えたから。怪訝そうな表情の彼を見つめ、アンバーは微笑んだ。


「僕の事、憎んでくれて構わないと思っていたからさ。もし君に僕の事が好きだと言われてしまったら、僕はどうしたらいいのか、わからないよ」


 それは、アンバーの本心だった。嘘でも、況してや相手を欺くための策略でもない。ただただ、心の底から安堵しているのだ。

 弟がこうも歪んでしまった原因は自分にあると、アンバーはずっと思っていた。だからこそ、彼に嫌われているという事実に安堵したのだ。もしこれで、彼が自分を好いているのなら、どうしたら良いのかわからない。いっそ、嫌ってくれ、憎んでくれと思っていたのだ。

 思えば、生前は一度も、喧嘩らしい喧嘩をしたことがなかった。だから、初めての喧嘩がこうも拗れてしまったのだろうか。それに他の仲間たちを巻き込んでしまったことには申し訳なさしかないけれど……


「ほんの少しだけ、嬉しいんだ。君と、こうして喧嘩出来るのが」


 そう言って、アンバーは微笑む。ロシャは顔を顰め、吐き捨てるように言った。


「アンタのその思考回路、さっぱりわからないよ」


 そして彼はひょいと鎌を引いた。勢いを削がれ、アンバーは転びかける。そこに鎌を振り下ろしながら、ロシャは笑った。その攻撃を辛うじて避けるが、アンバーの腕には深い傷が出来た。じわり、と血が滲む腕をアンバーはそっと押さえて、唇を引き結ぶ。


「戦い方は駄目駄目だね。弱くなったんじゃない? 僕が生きてた頃より」


 くすくすと笑い声を上げながら、ロシャはアンバーを嘲る。それを聞いて、アンバーは首を竦めた。


「そうかもしれないね。僕、すっかり裏方になっちゃったから」


 そう言って、アンバーは苦笑する。しかし、その表情は酷く穏やかなままだ。まるで、普通の兄弟の会話を楽しんでいるかのように。

 鎌を振り回しながら、ロシャが訊ねる。


「水兎、だっけ。アンタが統率してる部隊」

「そう。ハクも行きたがってた部隊、父さんがかつて統率官を務めていた部隊だよ」


 アンバーは過去の弟の姿を思い出しながら頷いた。


―― 僕もいつか騎士になって、父さんと同じ部隊に入りたいな……


 ハクは、いつもそう言っていた。体が良くなって、騎士になることができたら、父親と同じ部隊に入りたいと。そのために、今色々な勉強をするのだと言って、本をよく読んでいた。

 しかし、その弟はもういない。その面影を微かに残した敵は、迷うことなく自分を殺そうと、武器を振るっているのだ。

 ロシャは溜息を吐いた。不機嫌そうにアンバーを睨み付けて、言う。


「僕には関係ないよね、その話」

「……うん。関係ない。”僕の(ハク)”の話だから」


 アンバーはそう言うと、一度強く、目を閉じた。瞼を開けた彼の琥珀の瞳からは、迷いも戸惑いも消えていて。

 これまでにないほどの強さで、ロシャの鎌を押し返す。ぎりっと、鋼が擦れる音が響いた。


「く……ッ」


 ロシャは顔を歪め、呻く。見た目よりずっと強い、アンバーの力に思わず一度鎌を引いて、飛び退いた。そんな彼を見据え、アンバーは静かな声で言う。


「僕は、負けないよ。仮初の姿のハクには、負けない」


 迷いは、捨てた。眼前に居るは、弟ではない。弟によく似た姿をした、悪魔だ。そんな相手に負けはしないと、アンバーは静かな声で言う。

 ロシャはそれを聞いてすっと目を細めた。


「そ。僕も負ける気ないよ。弟との約束を二度も破った馬鹿兄貴にはね!」


 そう叫ぶのと同時に、ロシャは強く、地面を蹴った。アンバーは自分に向かって振るわれた鎌を自身の剣で受け止め、打ち返す。何度も何度も、金属がぶつかり合う音が響く。閃光が弾ける。斬って、斬られて、魔術を掛け合い、躱す。


「……強いんだね」


 浅く息を吐いて、アンバーは言う。互角かと思われた戦いなのに、アンバーはいつの間にか、傷だらけになっていた。ロシャは、小柄な割に力も強く、その小さな身体を生かした素早さもあった。そんな相手に斬りつけるのは、正直至難の業で。嗚呼、これが操り人形の能力なのだろう。そう思いながら、必死に食らいつくことしか出来なかった。

 暫くは必死に立ちあがっていたアンバーも、やがて膝をついた。力尽きて、地面に倒れた彼を見下し、ロシャは嗤う。


「僕が強いって? 当然でしょ、あの頃より体も丈夫だし」

「そう。それは良かった」


 穏やかな笑みを浮かべながら、アンバーは言う。その言葉に、偽りは感じられない。それが気に食わなかったのか、ロシャは一瞬表情を歪める。しかし、すぐにその表情も崩し、冷たい声で言った。


「良くないよ。アンタは、その所為で死ぬんだから。僕の体が昔のように弱ければ、まだ勝ち目があったかもしれないのにね」


 冷たい声でそう言い放つと、ロシャはスッと鎌を持ち上げる。アンバーは静かに、目を閉じた。覚悟は、出来ている。……自分が裏切ってしまった弟から作られた操り人形に殺されるのなら、それもアリかな、などと考え、自嘲の笑みが浮かぶ。

 漆黒の瞳を細め、彼はアンバーに別れの言葉を告げた。


「じゃあね……ッ?!」


 と、その時。ぴたり、とロシャの腕が止まった。まるで、後ろから腕を誰かに掴まれているかのように。


―― 兄さん。


 アンバーには聞こえた。微かな、しかし、はっきりとした声。間違いようのない、聞き慣れた優しい声。


『兄さん、諦めないで。死なないで』


 アンバーは、大きく目を見開く。そして小さな声でその名を紡いだ。


「……ハク?」


 信じられない、というようにアンバーは瞬く。信じられない、けれど、確かにそれは、かけがえのない、忘れることが出来るはずのない、弟の声だ。


「何だよ、この……ッ!」


 憎々しげに、ロシャが毒づく。必死にもがく彼の体は、まるで拘束の魔術をかけられているかのように、硬直している。


『兄さんを、僕が守ってあげるから』


 アンバーには見えた。ロシャの体を拘束しながら微笑む自分の弟の姿が。優しい声で彼は言う。


「ハク……」


 茫然としながら、アンバーはもう一度、弟の名を紡いだ。

 きっと、操り人形として作られた彼の身体と精神(ココロ)が、分離しているのだろう。身体の暴走を止めようとするかのように振る舞う精神(ハク)は言う。


『もう一度だけ、剣を取って』


 アンバーはふらふらと立ちあがり、剣を取る。もう動かないと、動けないと思っていたのに、身体は予想に反して動いた。


『そのまま、(ロシャ)を、刺して』


 迷いなく、弟の声はそう言った。自分の身体を、刺してくれと。


「え……」


 目を見開く、アンバー。自分の身体を拘束しているハクは穏やかに、微笑んで見せた。


『大丈夫。それは、僕だけど、僕じゃない』


 言い聞かせるように言う、弟の声を聞き、アンバーは顔を歪める。嗚呼、それはわかっている。わかったからこそ、戦えた。それでも……――


「無理、だよ、だって」


 やっぱり無理だと、アンバーは首を振る。琥珀の瞳が、微かに潤んでいた。

 偽物だとわかっている。作り物だと知っている。それでも、やっぱり”弟の姿”をしているロシャを刺し殺すことなど、出来ない。アンバーはそう言って、首を振る。


『僕の、最期のお願いを聞いて、兄さん』


 ロシャを拘束したまま揺れる幻影のハクは、悲しげに琥珀色の瞳を伏せた。そして、言う。


『僕、もう嫌だよ。この肉体(からだ)に繋がれて、大事な人たちを傷つけたくない。兄さんが哀しそうな顔をするのも見たくない。だから……』


―― 僕をこの呪縛から、解き放って……?


 そう言って、彼は微笑んだ。

 弟の……愛おしい弟の、最期の頼み。何度も何度も裏切ってしまった、彼の……最期の、我儘。


「わかった」


 アンバーはそう言うと、ロシャの目の前に立った。ロシャは、酷く怯えた顔をする。これまでに見ることがなかった、子供らしい表情だ。

 アンバーは、彼に笑いかけた。彼の瞳に、掲げられた剣に、迷いはない。


「僕の、勝ち。ううん……”僕ら”の、勝ちだね」


 アンバーは剣をロシャの胸に突き刺した。ぱっと、鮮やかな紅の血が飛び散る。ロシャは悲鳴を上げるでもなく、それこそ、糸の切れた操り人形のようにその場に倒れ込んだ。その時、ロシャの腕を押さえていた精神(ハク)が、肉体(ロシャ)の中に、戻っていった。彼はゆっくりと目を開け、アンバーに向かって、微笑む。


「お願い聞いてくれて、ありがとう、兄さん」


 掠れた声で紡ぐ言葉は、優しかった。ロシャの冷たい声ではなく、ハクの優しく、暖かな声。本来の気質を、精神を取り戻した彼は、眼前に居る兄を見つめ、幸せそうに微笑んだ。

 アンバーはそんな弟を抱き上げながら、微笑み返した。


「うん」


 久しぶりに聞いた、愛しい弟の声。揺らぐカラーコンタクトを嵌めた瞳の向こうに、自分にそっくりな琥珀の瞳があることを感じながら、アンバーは優しく、彼の額を撫でた。


「あと、ね。ごめんなさい」


 ロシャ……否、ハクは、震える声でそう詫びた。それを聞いて、アンバーは不思議そうに首を傾げる。


「なんで、ハクが謝るの? 僕が、悪いのに……」


 謝らなければならないのは、自分の方だ。そう言いながら、アンバーは眉を下げる。彼がこうなってしまったのは、自分が彼を裏切ってしまった所為だ、と。そんなアンバーの言葉に、ハクは緩く、首を振った。


「違う。僕は知ってたんだ、仕方ないことだって、わかってたのに……一瞬でも、兄さんが憎いと思ってしまった、僕が悪いんだ。だから、奴らに、付け込まれた」


 自分が操り人形にされてしまったのは、アンバーを憎む気持ちがあったからだ、と彼は語る。アンバーが自分を忘れた訳でも、蔑ろにした訳でもないことは、わかっていたはずなのに。ハクはそう言うと、涙に潤んだ瞳でアンバーを見上げた。


「……ねぇ、兄さん。僕、兄さんのこと、大嫌いなんかじゃない。憎んでなんか、いない。大好きだよ、兄さん……ずっとずっと、大好きだった」


 そう言いながら、ハクは力を、熱を失いつつある腕で、アンバーに抱きついた。

 嫌いだと思ったことなど、ない。憎いはずがなかった。況してや、このように殺し合いたいと思うことなど、あるはずは、なかった。全て全て、自分の弱さが招いた結果だと、ハクは言う。

 浅く息を吐きながら、彼は震える声で、言う。


「兄さんは、僕の事、嫌いになった、かな、兄さんにも、兄さんの仲間にも、酷いこと、たくさんしちゃったから……」


 ハクは苦笑混じりにそう言う。その頬を一筋、温かな涙が伝い落ちていった。アンバーはそんな弟の言葉に静かに首を振って見せる。そして強く弟を抱きしめてやりながら、震えそうになる声を必死に抑えて、言った。


「嫌いになる訳、ないじゃん。僕が嫌われるならわかるけど、ね」

「嫌いじゃ、ないよ。大好きだよ。僕は……兄さんの、弟で、良かった」


 幾筋も、涙が零れて落ちていく。胸は彼自身の血で赤く染まっている。ハクの命の炎が次第に消え行くのを、アンバーもハクも感じていた。


「兄さんの事、守れた……良かった……僕、嬉しいや」

「僕も、ハクと、ちゃんと話せてよかった」


 アンバーは弟の涙を拭いながら、微笑んだ。彼の目からも涙が溢れている。


「僕、天国に……行けるかなァ……駄目、かもなぁ、この体で、悪いことたくさんしちゃったから……たくさんの人を傷つけて、たくさんの人の命を奪ったから……地獄に堕ちたら、もう二度と、兄さんにも逢えない、ね?」


 そう言って哀しそうな顔をするハクを震える腕で抱きしめながら、アンバーは言った。


「大丈夫。もし、僕が死んだ時、僕がいくところにハクが居なかったら、僕が探しに行くから。天国にいても、地獄にいても、何処かもっと違うところにいても、絶対に見つける。絶対に、もう一度会おう。約束、するから。もう二度と、破らないから……約束、しよう」


―― もう二度と、すれ違わないように。


 アンバーは涙を拭って、笑った。彼が好きだと言ってくれた明るい笑顔を、彼に見せたかったから。もう助けることが出来ない彼の記憶の最期に焼きつくものが、泣き顔なのは、悲しすぎるから。

 そして弟の小さな手を取り、そっと、小指を絡ませる。掠れた息を漏らしながら、ハクは彼の言葉を繰り返す。


「約……束?」

「うん。約束」

「絶対、また逢える……?」

「逢える。逢いに、行くよ」


 アンバーの言葉にハクは嬉しそうに笑った。


「ありがと、兄さん……最期まで、手を離さないで、ね?」


 ハクも、アンバーが他の仲間を助けに行かなければならないことは知っていた。それでも、一緒に居てほしいと、そう強請った。それは、彼の最期の我儘、だった。


「うん……離さない」


 アンバーはそう言って、一際強く、ハクの手を握る。自分の体温を分け与えるかのように。あの日握れなかった弟の手を、強く、強く握る。


「最期の最期は、兄さんと一緒……だね?」


 ハクは半ば夢を見ているような声で、言う。


「うん……良かった」


 アンバーはそう言いながら、そっとハクの髪を撫でた。いつの間にか、ハクの髪は見慣れた蜂蜜色に戻っていた。

 ハクの瞼が閉じる。その目尻から、もう一粒、涙が伝った。


「……おやすみ、ハク」


 アンバーはハクの白い頬に一つ、キスを落として、微笑んだ。


―― また逢う日まで、ゆっくり休んで。


 大切な弟の身体を障壁で保護すると、アンバーは仲間の元へと走り出した。



 

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